過敏性腸症候群の4つの型:事務局便り#5
- 便秘型/下痢型/混合型/分類不能型
- 便の形状(ブリストル・スケール)
- 誤解されやすい分類不能型
*動画とブログの中身は同じです。
過敏性腸症候群の4つの型の定義は、それぞれ表の通りです。
便秘型は硬い便、または兎の糞状のコロコロした便が4分の1以上あり、下痢や軟便が4分の1以下であること。
下痢型は、下痢や軟便が4分の1以上で、硬い便、または兎の糞状のコロコロした便が4分の1以下であること。
混合型は、下痢や軟便が4分の1以上で、硬い便、または兎の糞状のコロコロした便も4分の1以上であること。
そして、分類不能型は便の異常はあるが、下痢型、便秘型、混合型のいずれの基準も満たさないこと、となっています。
これらの便の形を視覚的に7つに分けたのが、次に説明するイギリス発症のブリストル・スケールです。
ブリストル・スケールでは、便の見た目と水分量がほぼ正比例していることが報告されています。
たとえば、便秘の場合に見られることが多い、タイプ1から3では水分量が少なく、下痢の場合に見られることが多い、タイプ6や7では水分量が多い、といった具合です。
2022年に報告された研究によると、タイプ1から3の便の水分量は約62%から69%で、タイプ6や7の便では約75%です(※1)。
つまり、便の見た目が大きく違うのに対して、水分量の差は10%程度です。カラカラに見えても、意外と便には水分が含まれていることが分かります。
過敏性腸症候群の場合、水分を取ると下痢になるからできるだけ控える、もしくは便秘が酷いので水分を意識的にとっていることもあるかもしれません。
しかし、口から摂取した水分の多くは腸管で吸収され、余分な水分は尿となって排泄されます。
このためか、幾つかの研究でも、水分の摂取量単独では、便の形状に明らかな差は見られなかった、と報告されています(※2)。
最初に説明した過敏性腸症候群の4つの型の定義にあるように、下痢や便秘といった便通異常を伴わないガス症状のみの過敏性腸症候群、いわゆるガス型過敏性腸症候群は、ガイドライン上存在していません。
ただし、お腹の張り感などは、過敏性腸症候群では無視できない症状で、世界的に使われる過敏性腸症候群の重症度の評価尺度である、IBS-SSS(Irritable Bowel Syndrome Symptom Severity Scale)の項目にも含まれています。
また、一口にガス症状といっても、お腹の張り感のほかにも、ガスが出過ぎることや匂い、音での苦痛や苦悩を訴えられる方もいます。
これらの症状のいくつかは、過敏性腸症候群以外の病気で起きていると考えられますが、過敏性腸症候群も存在することで、より悪化することもあります。
この辺りについては、次回、過敏性腸症候群のメカニズムである、脳腸相関について説明した後に、触れてみたいと思います。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成
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集英社プラス-知の水先案内人(https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/)で【脳腸相関】を連載中です。
※1 Nordin E, Hellström PM, Brunius C, Landberg R. Modest Conformity Between Self-Reporting of Bristol Stool Form and Fecal Consistency Measured by Stool Water Content in Irritable Bowel Syndrome and a FODMAP and Gluten Trial. Am J
※2 Murakami K, Sasakii S, Okubo H, Takahashi Y, Hoso Y, Itabashi M. Food intake and functional constipation: a cross-sectional study of 3,835 Japanese women aged 18-20 years. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2007;53(1):30-6.