親の影響
私は最近、人が成長してから、その人が「どんな考え方をするか」は、親の影響がもの凄く大きいんじゃないかと思うようになりました。
以前から感じていたことですが、最近特にその想いが強まっています。
良い親か、悪い親かと言う問題ではなく、子供の価値観に与える影響が大きいと考えていただけば受け容れやすいと思いますが、親の子供に対する態度が、場合によっては、子供の感じ方、考え方を決めてしまいます。
人生とは不思議なものです。私が患者さんや知人の子供に対する態度を見て、ひどく考えさせられることが続きました。そのせいで、親が子供に与える影響に関する本を何冊か読んだんです。
*「毒になる親」スーザン・フォワードや、「魂の殺人」A・ミラー、「新凍りついた瞳」椎名篤子などですが、自分とは関係ないと思う人でも、ここに書かれているような事実を知ることは、全ての人にとって大切なことなので、多くの人に読んでいただきたい内容です。ちなみに、人間関係に悩んでいる人には、「モラル・ハラスメント」マリー=フランス・イルゴエンヌもお勧めです。
その時期に合わせるかのように、自分が今、パニックやうつで苦しんでいる原因の一端、あるいはほとんど全てが、親に起因していると考え始めた人や、自分の自己評価が低い原因と、ご姉妹の摂食障害の原因が親の育て方に起因していることに気付いた人などが続けて来院されました。
初診の方もいましたが、以前からの患者さんで、本人も、(世間話の中で家族のことなども聴いていた)私から見ても、親との関係は全く問題がないと思っていたような人が、自分でそこに気付いたと言うのです。
良いタイミングなので、「私はいまちょうどこんな本を読んでいるんですよ。読んでみるといいですよ」なんて話をして、なぜそこに気付いたのかを聴いてみると、
自分が妊娠して、育児書を読んでいて気付いたとか、当事者である親が、他人を見て、子供に精神的な問題がでるのは家庭環境が原因だと話していたのを思い出したとか、そんなことだったそうです。
親が子供に与える影響は様々ですが、わかりやすく典型的な例を、いくつか挙げて見たいと思います。親の態度→子供の考え方
親が完璧主義、あるいは子供に完璧であることを求める。→自分が完璧でないことが許せない。
親が子供を支配し、子供の考えや意思などは認めない。親の考えに、子供は従うものだと信じている。→いつも親や他人の顔色を見て、相手に合わせようとしてしまい、自分の考えや、自分がどんな人間なのかさえよくわからなくなる。
親が暴力や怒鳴ることで、子供をしつけようとする。→自分の意見が通らなかったり、上手くいかないことがあると、相手を攻撃することで解決しようとする。
親がいつも子供を罵倒したり、出来が悪いなどと責める。→立派な大人になり、世間から認められていても、自己評価が低く自信のない大人になる。
親が自分と他者を比較し、自分より劣ると思える人をばかにする。→人の悪口を言い、相手を下げることで、相対的に自分の価値を高く見せようとする。
親自身の気分が悪かったり、上手くいかないことの原因を子供のせいにする。なにかと子供に罪悪感を持たせるような態度をとる。→誰といても、相手が不機嫌になったり、辛そうに見えたりすると、自分に責任があると考え、本人が解決すべき問題を肩代わりしようとする。
現実はこんなに単純ではありませんが、わかりやすく表現するとこんなイメージです。
親が子供の人格を無視し、子供は自分の帰属物であるかのように振舞うことや、厳しくすることがしつけであると考え、理由も説明せずにしかりつけたり、必要以上に子供を厳しく評価する、あるいは、子供にはできるはずのないことや、出来なくても当たり前のことを、完璧にやり遂げることを要求し、出来なければ認めない。
そんな育て方をされると、子供が大人になった時に悩みを抱える可能性が高くなります。
人は、ありのままの自分を受け容れてもらい、人として尊重され大切にされた体験を通して、自分も人に対して、同じようにすることが出来ます。
悩みを抱える人は、その原因が親にあるのかもしれないということを一度考えてみてください。それは必ずしも、親を責めることではありません。