血湧き肉躍った!『ジャカルタ13爆弾』
映画祭とは、思わぬ作品との出会いの場であります。
第19回大阪アジアン映画祭での、筆者的掘り出し物はコレ!
特別注視部門で上映されたインドネシア映画『ジャカルタ13 爆弾』。
ポスタービジュアルから見ても分かる通り、ハリウッドテイストの、よくあるアクション大作かと高を括っていたのです。
ジャカルタで勃発したテロ事件。大胆にも犯人は、国家のテロ対策局をハッキングしてビットコインで金銭を要求。応じなければ13箇所に仕掛けた爆弾を8時間毎に爆破するという展開。
PROPERTY OF VISINEMA PICTURES
ところが、インドネシアでテロ事件といえばイスラム過激派による犯行というイメージが強いが、本作はそれとは違う。
予期していない相手の犯行だけに、テロ対策局はもちろん、見ている私たちも全く展開が読めない。
そうこうしているうちにテロの標的の一つとなったのが、ジャカルタの都市高速鉄道MRT。
ジャカルタMRTといえば、日本のODA(政府開発援助)で建設され、2019年4月1日に開業したばかりじゃないですか。
⚫️鉄道:“オールジャパン”が都市交通を変える インドネシア
フィクションの世界とはいえ、テツにとっては唖然茫然。
そうして圧倒されまくること144分。
この映画はただモノじゃない!と、興奮しながら調べたら、
・インドネシアで正月映画として公開され、観客動員100万人突破の大ヒット。
・若手監督の登竜門でもあるロッテルダム国際映画祭(オランダ)で、各国の話題作を集めたLimelite部門で上映。
・ポン・ジュノ監督『パラサイト』を製作した BARNSON E&Aが出資
と、まさに今世界が、熱い視線を送っている話題作なのでした。
そんなホットな作品の日本初上映の場に立ち会えて、さらに感激ひとしお。
監督は、第19回大阪アジアン映画祭コンペティション部門の審査員の1人であるアンガ・ドウィマス・サソンコ監督。
日本でも『モルッカの光』(2014)と『プラハからの手紙』(2015)がアジアフォーカス・福岡国際映画祭、『珈琲哲學-恋と人生の味わい方-』(2018)が第29回東京国際映画祭で紹介されたインドネシアを代表する監督です。
⚫️インドネシアのFilosofi Kopi――映画を軸にした新たな展開
『ベンとジョディ ~珈琲哲學 第二章~』
『あの日のことをあなたに』
映画祭会期中には、大阪中之島美術館で関連イベント・シンポジウム「アンガ監督の映画哲學―十三の試練、千の希望」も開催されました。
モデレーターは、京都大学でインドネシア地域研究を行っている西 芳実さんです。
サソンコ監督はこれまでも、インドネシアで社会問題になっている事象を作品に取り込んできました。『ジャカルタ13爆弾』もまた、2015年にジャカルタ郊外で起こったテロ事件から着想を得たそうです。その犯人像と犯行がまさに、これまでのテロと一線を画すもので、
「テロというのは必ずしも私たちが思っている事が要因ではなく、社会構造がもたらした結果だということを本作に込めた」とか。
そして何より「インドネシアでアクションと言えば武術がほとんどだが、それ以外が可能なのか? 他国がやっていることを、インドネシアでも出来るのだということを見せたかった」。
頼もしい!
ただ個人的には、マイケル・マン監督が製作総指揮を務めたドラマシリーズ「TOKYO VICE」並とまでは言わないものの、ナイトシーンがもう少し見やすければと思いました。
しかし本作の登場は、アジア各国の映画関係者の刺激となるはず。
同時に、米大手映画会社や動画配信サービスがローカルプロダクションに力を入れたことで、各国の作品のクオリティーがレベルアップしていることを実感します。
おそらく本作は、世界共通の課題である”経済格差”がテーマなので、ワールドワイドに公開が拡大すること間違いなし。
さらに出資会社のBARNSON E&Aによって、韓国でリメイクされるのでは?
日本でのリメイクもアリですね。
その時は、テロ対策局のヒロイン役(プトゥリ・アユディア)に、映画評論家・宇多川幸洋さんが舞台挨拶の司会でしきりに「似ている」と言っていた前田敦子さんですかね?
テロリストのリーダー(リオ・デワント)は、これまた似ている青木崇高さんに期待。
宇多川幸洋さんとアンガ・ドウィマス・サソンコ監督