やまなしハイドロジェンカンパニー視察
昨日に引き続き、千葉県資源エネルギー問題懇話会の視察で、やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)へ行ってきました。
やまなしハイドロジェンカンパニーは、カーボンニュートラルの実現に向け、山梨県、東京電力ホールディングス㈱、東レ㈱が共同出資して設立された国内初のP2G(power to gas)専業の会社です。
太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電力を用いて水を電気分解し、水素を製造、貯蔵、輸送といった水素サプライチェーンの構築を目指し、2021年から実証実験を開始しました。
国内ではこれまでの間、太陽光発電や風力発電など、供給対策が中心に講じられてきました。
都市部以外の地域において、太陽光発電施設が建設されているのを見かけますが、その地域に電力の需要がなければ、送電線を経由して電力の需要がある地域へと送る必要があります。しかし、送電線の容量には限りがあるため、余った電力を有効活用できる需要側の取り組みが求められます。
電気は、高速で動き、一定の状態でじっとしていることができないため、そのままの状態では貯めておくことができません。社会全体を賄う電気を貯めるには、膨大なコストと広大な敷地が必要となり、現実的ではありません。
そのため、電気を貯めるには、一旦別のエネルギーにして貯める必要があり、YHCでは水の電気分解によって生じた水素として貯蔵し、必要に応じて水素を熱源としての利用へとつなげていきます。
YHCで導入している水電解装置は、固体高分子型水電解という純水と高分子膜を利用した水素製造方法を採用しているため、無人運転ができるといった特徴があります。
純水に浸かった高分子膜に、整流器で直流に変換した電気を流すことにより、水素と酸素が発生します。
水素は、すべてのガスの中で密度が最も小さく、外部へ漏洩しやすい特徴があります。また、最小着火エネルギーが小さいため、他のガスと比較して、漏洩後に火災が発生しやすいことが懸念されます。そのため、発生した水素は気体のままで貯蔵するのではなく、ニッケルやチタンなどからなる水素吸蔵合金に吸収させて貯蔵します。
水素吸蔵合金は、水素を自身の体積の1,000倍以上吸収する能力をもっており、水素を低温・高圧下で吸収し、高温・低圧下で放出することから、水素貯蔵タンクの温度調節をすることで、水素の出し入れを行います。
水素の運送は、大型のボンベを20本束ねた水素トレーラーに、約20MPaの圧力で充填して行われます。
1m3あたりの水素ガスの熱量は約10〜12MJであるのに対して、LPG(プロパンガス)の熱量は約25〜30MJであり、燃焼効率ではLPGに軍配が上がります。
また、LPGは液体で充填されるのに対して、水素ガスは沸点が−252.87℃と極めて低く、気体で充填されるため、大幅な運送コストがかかってしまいます。
そのため、エネルギーの移送は電気で行い、水素化は水素を利用する現地で行うP2Gの取り組みが求められます。