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<風疹流行>30~50代男性に予防接種を強く勧める理由《公式》

2018.11.17 06:53

大塚和成です!!

11/17(土) 9:30配信 毎日新聞

<風疹流行>30~50代男性に予防接種を強く勧める理由

多くの自治体が風疹ワクチン接種費用の一部を補助している

 風疹の流行拡大が続き、収束する気配が見られない。11月4日までに報告された今年の累計患者数は1884人と、昨年1年間の20倍に上っている。専門家は、過去風疹にかかったと検査で診断されておらず、1歳以降に予防接種を2回受けていない妊娠20週ごろまでの女性は、可能な限り外出を控え、それ以外の人は予防接種を受けるよう呼びかけている。特に、過去に国の予防接種の対象でなかったり、接種率が低かったりして抗体が足りず、現在の流行の中心になっている「30~50代の男性」の予防接種の必要性が指摘されている。どんな種類のワクチンをどこで接種したらよいか、どのぐらい費用がかかるのか、専門家に取材した。【毎日新聞医療プレミア・中村好見】

 ◇接種する必要があるのは誰?

 風疹予防が大切な理由は、妊娠20週ごろまでの女性が風疹ウイルスに感染すると、生まれてくる赤ちゃんが、心臓病や難聴、白内障などの「先天性風疹症候群」という病気を発症する恐れがあるからだ。

 風疹ワクチンは病原性を弱めたウイルスを使う生ワクチンなので、妊娠中の女性は接種を受けられない。妊娠の可能性がある女性はまず抗体検査を受け、抗体が足りない場合は感染しないよう、家族や職場の同僚に予防接種を受けてもらう必要がある。また、妊娠を希望する人は、妊娠前に2回の予防接種を受け、接種後2カ月間は避妊する必要がある。

 「自分には関係ない」と思った30~50代男性もいるかもしれない。それに対して専門家は「自分が感染源になる恐れを知ってほしい」と訴えている。

 国の感染症流行予測調査(2017年度)によると、30代後半~50代前半男性の5人に1人、20~30代前半男性の10人に1人に風疹抗体が足りないとされている。実際、今年風疹を発症しているのは成人男性、特に30~40代が多い。

 風疹は、発疹などの症状が出る1週間前から周囲への感染力を持つ。また症状が出ない不顕性感染も15~30%の割合である。一方、先天性風疹症候群の発生頻度は、妊娠に気づいていない人が多い妊娠初期ほど高く、複数の障害が重なることが多い。感染したことに気づかない男性が通勤中や外出中に、妊娠初期の女性にうつす恐れがあるのだ。

 大人が風疹にかかって重症化し、1週間以上仕事を休まなければならなくなる可能性があることも知っておきたい。合計1万6730人の患者が出た12~13年の流行時には、77人が血小板減少性紫斑病、18人が脳炎を併発した。職場に妊娠出産年齢の同僚がいる人はもちろん、自分自身の危機管理としても風疹ワクチン接種を検討してほしい。

 ◇麻疹風疹混合ワクチンが推奨される理由

 ではまず、どんな種類のワクチンを接種したらいいのか。国内で承認されているものは、麻疹風疹混合(MR)ワクチンと風疹単独ワクチンの二種類がある。国立感染症研究所の多屋馨子(たや・けいこ)・感染症疫学センター室長が勧めるのはMRワクチンだ。

 その理由は主に二つ。まず、麻疹も一緒に予防できること。次に、風疹単独ワクチンは流通量が少なく手に入りにくいからだ。今年春、沖縄県と愛知県、福岡県を中心に、麻疹が集団発生した。発病したのは20~40代が中心だった(記事「麻疹患者の7割が20~40代なのはなぜ?」)。

 麻疹も風疹と同様に、過去にかかったことがない場合、1歳以降に2回の予防接種が必要だ。しかし、1989年度以前に生まれた人は、麻疹の予防接種は1回か、あるいはまったく受けていない可能性がある。多屋さんは「実際には抗体があっても、ワクチン接種で特別な副反応が起こることはないし、さらに抗体が足りなければ免疫を強化する可能性もあるので、MRワクチンの接種をお勧めします」と話す。

 ◇どこで受けられるの? 接種費用はいくら?

 まず、近くのかかりつけ医に接種可能かどうかを聞いてみよう。かかりつけ医がいない場合は、住んでいる市区町村に、風疹予防接種を受けられる医療機関を教えてもらおう。多くの自治体は、抗体検査や予防接種費用を助成する指定医療機関リストを作ってホームページで公開している。

 トラベルクリニック(日本渡航医学会の国内トラベルクリニックリスト)で接種する手もある。海外赴任や留学、旅行で渡航する人の感染症対策として、成人の予防接種を日常的に実施している。

 接種費用は医療機関によって違うが、MRワクチン8000円~1万円、風疹単独ワクチン5000~6000円ほど。事前に問い合わせて選ぶとよいだろう。

 ◇抗体検査を受ける必要はあるの?

 妊娠を希望する女性やそのパートナーに対しては、風疹の抗体検査や接種費用を助成する市区町村も多い。風疹流行を受けて、助成対象を拡大する自治体も増えている。まずは自分の住んでいる市区町村に問い合わせてみよう。また、検索エンジンで「市区町村名 成人 風疹」とキーワードを入れて検索すると、詳しく書かれた市区町村のウェブサイトが出てくる。東京都は、風疹の抗体検査や接種の助成について各区の対策を取りまとめて公表している。

 「忙しくて抗体検査、接種と何度も病院に行く時間がない」という人が、抗体検査を受けずに接種しても医学的に問題はない。一方、多屋さんは「流行地域にいて、特に家族や職場に妊娠出産年齢の女性がいる人は、今すぐワクチンを接種することを勧めたいが、全員分のワクチンは確保されていない状況だ。ワクチンの流通量が増えるまでは、まず抗体検査を受けて、抗体が足りない場合は必ず接種するよう勧めざるを得ない」と話す。

 ◇接種してからどのくらいの期間で抗体ができる?

 ワクチン接種後、どのぐらいの期間で抗体ができるのだろうか。多屋さんによると、ワクチン接種後、2~3週間で抗体ができ始める。抗体価が上がるピークは接種の6週間後だ。

 また、過去風疹にかかったと検査診断されていない場合、2回のワクチン接種が必要だが、今回の流行をきっかけに「2回受けよう」と考えている人は、1回目の接種からどのぐらいの期間をあければいいのか。

 多屋さんは「最短は1回目の接種から1カ月以上あければ、いつでも2回目の接種は可能だ。しかし今は十分なワクチン量が確保されていない状況なので、30~50代の成人男性が受けられる量のワクチンを確保して、なるべく早く受けられるようにしなければならない」と話している。