香りに何を語らせたかったのだろう。
五感のなかで、もっとも記憶と結びついているのは
自分の場合は香りだ。
物事を斜めから見て、その辺鄙な輪郭をさもふつうではないように
語ることを好んだ高校生の頃、
満を持して「自分の香りを探そう」と決めたのだ。
最初にしないとならないのは、名香と呼ばれるものを知ることからだったな。
photo by payalnic
そして、香水にはノートいうものがあって大まかにまず分類されつつ、
つけてから体温と時間経過によって、
香立ちが変化していくことを知る。そして、その変化の過程を楽しむものであることを。
イブ・サンローランの「PARIS」を買ってみた。
甘くて華やかで、それがカミュの「異邦人」などに小さな狂気をもって
酔いしれていた自分には日の当たる道すぎる香りで、笑
まして高校生がまとうには本当にまったくもって、フィットしていなかったっけ。
次に、買ったのはもっとうんと価格も身近に落として
資生堂の「沙棗(さそう)」という、これもまた非常にクラシックな香りにトライ。
どう考えても背伸びしまくりのティーンエイジャーが不相応な香りつけて
粋がってるに過ぎない遍歴なんだけど、この辺から香水探訪が始まるあたり、
大学生になってもまだまだ迷走していたな。
参考までに、あの頃流行していた香りは
カルバン・クラインの「エタニティ」とかジバンシイの「ウルトラマリン」。
サンローランの「JAZZ」、確かメンズだったと思う。
横浜髙島屋の香水売り場のお姉さんが、いかにも私が当時思い描くイイ女で、
好みや理想をいろいろ話していたら、彼女が私に見繕ってくれたものだ。
正直、背伸びしすぎ!まったくつけこなせなかった。
ジョルジオ・アルマーニのとてもライトなみずみずしい「アクア・ディ・ジオ」は
見事等身大の自分にとても合った気がして、何年も愛用していた。
たしかこの香りが、当時はアルマーニのお店でしか買えなかったものだから
それだけのためにアルマーニにびくびくしながら行ってたんだ笑。
あれから20年ですか?
経ってみて、まったく系統の異なる2種を気分によって使う、という
使い方と香立ちの好みに落ち着いた。
たとえば、ステラ・マッカートニーの「ステラ」は
いったん日本撤退したものの、カムバックしてくれたおかげで
ずっとラインナップに残っている。
そして昨年、虜になってしまったのが
キャロンの「サクレ」。名香中の名香で、入手するのもけっこう大変なものなのだが
私が好む一番の理由はたぶん、ミルラの香立ち。
特に季節が重さに傾き始めるこれからの時期、パルファム・サクレの持つ
重厚でスパイシーなオリエンタル調は
ものすごくものすごく、気分に合うのだ。
とはいえ、
時代は「スメハラ(スメルハラスメント)」など、周囲に配慮のない
強い香りの付き合い方は自粛した方がよい傾向なので、
仕事ではほとんどつけていない。
夜の用事とか休日、寝る前とかにもっぱら楽しんでいるのだけど。