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どっちがいいの?温めるor冷やす

2024.03.25 02:20

みなさんは足を捻ったりぶつけたりなどのケガをした時に、温めた方がいいのか、それとも冷やした方がいいのか悩んだことはありませんか?


それに関して私も患者さんに聞かれることが度々ありますし、公式ラインでもお問い合わせいただくこともあります。


実はこれは医学界でも意見が分かれている問題で、医療として絶対的な正解はないのが現状です。

(そもそも医療に絶対的な正解があるとは思えないけれども)


今回は、「なぜ温めるのか」「なぜ冷やすのか」それぞれの意味とその効果についてお話ししていきましょう。


【なぜ温めるのか】


まず、みなさんが一般的に個人でできる温め方としては、「お湯を使う」「カイロを使う」が現実的な方法なのではないでしょうか?


当院のような治療院では、「超音波」「超短波」「赤外線」「ホットパック」などがありますが、これは一般的にはみなさんが個人で使えるものではないので、今回は無視します。


「温める」というのはつまり「熱エネルギーの移動」なのですが、熱エネルギーは温度が高い方から低い方へ移動します。


体温以上のお湯やカイロなどを使うと、お湯やカイロから体の方へ熱エネルギーが「伝導」により移動するため、体の温度が上がります。


そして、組織の温度を41〜45℃に上昇させることにより、「血管の拡張→血流促進」「鎮痛」「組織の伸長性の増大」などが期待できます。


ただし、お湯やカイロのような「伝導熱」はあまり体の深部までは熱が入らないため、大きな筋肉の血流促進や伸長性の増大はあまり期待できません


【なぜ冷やすのか】


おそらくみなさんが「冷やす」と聞いて思いつく方法は、「コールドスプレー」「氷のう(アイスバック)」「保冷剤」あたりではないでしょうか?


これらは実際に当院でも使用することのある道具です。


「冷やす」ということも「温める」と同様に「熱エネルギーの移動」で、「温める」時と逆に体から氷のうなどへ熱エネルギーが移動するため「熱を奪う」という現象が起こります。


「冷やす」ことで期待できることは、「血管の収縮→血流の抑制」「鎮痛」「腫れの軽減」などがあります。


また、「温める」時と違い、皮膚に対しての「冷やす」刺激であっても、筋肉や関節など深部の温度まで低下させることも報告されています。


さて、では「捻挫などケガをした時は温めるのか冷やすのかどっち」について私の考えを述べると、『ケガをした直後〜12時間以内であれば冷やす。72時間以降であれば温める』です。


これは私の経験則もかなり含まれますし、ケガの程度や状態によって変化はしますが、私は概ねこの考えで「温める」「冷やす」を判断しています。


まず、ケガをした直後〜12時間は「冷やす」ことで血管を収縮させて出血を抑えることで腫れや二次的な損傷を防ぐことを目的とします。


その後ケガから72時間程度経過した後は、損傷部位の血流を促進して酸素や栄養などが豊富に供給され、損傷した組織の修復に有利な環境を作るために温めます


捻挫などのケガをした時の初期対応として一般的に用いられる処置として「RICE(ライス)処置」があります。


これは「Rest(安静)」「Icing(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」の頭文字をとったもので、そこにさらに「Protect(保護)」「Stabilization(固定)」を加えた「PRICES(プライシス)処置」も推奨されています。


これらの処置は

R:患部を安静にすることで損傷組織へのストレスを軽減する。

I:損傷部位を冷却することで炎症を抑制する。

C:損傷組織を圧迫することで腫れや内出血を抑制する。

E:患部を心臓より高い位置に挙げることで出血や腫れを抑制する。


P:炎症を増悪させないように移動時も患部を保護する。

R:患部を安静にすることで損傷組織へのストレスを軽減する。

I:損傷部位を冷却することで炎症を抑制する。

C:損傷組織を圧迫することで腫れや内出血を抑制する。

E:患部を心臓より高い位置に挙げることで出血や腫れを抑制する。

S:骨や関節をテーピングや装具を用いて動かさないようにする。

という意味・目的で用いられます。


また、「冷やす」場合に気をつけなければいけないのは「冷やしすぎ」です。


組織の温度が下がりすぎると凍傷神経麻痺のリスクが高まるため、長時間・頻繁に冷やすのは避けるべきです。


さらにこうしたリスクを避けるために、冷却前もしくは反対側の同部位と同等の温度まで戻す「リウォーミング」という過程が必要ですが、30分の氷のう(アイスバック)での冷却をした場合、リウォーミング完了までに3時間程度必要であるとされています。


ただ、組織の温度が上昇してしまうと炎症が再燃してしまうため、「冷やす」場合のインターバルは1〜2時間程度は必要であるとされます。


このように「冷やす」のにはしっかりとした理由・目的があって、適切なタイミング・状態であれば推奨されます。


ケガをした直後は「温める」と腫れや炎症が強くなったり痛みが強くなることが多々あるため、少なくともケガをしてから12時間程度は「温める」ことは避けるべきだと思います。


ちなみに、慢性的な肩こりや腰痛など、具体的に負傷の理由のない不調の場合は「温める」一択でいいと思います。

(原因の疾患のないものに限る)


というのも、慢性的な不調は血行不良である場合が多く、「冷やす」とさらに血行不良になるため症状は悪化するケースが多々あります。


ケガの直後や原因となる疾患のある場合を除き、それ以外の場合は基本的に「温める」ことだけ考えればいいのではないでしょうか?