春空 shun-kuu
家を出て、鍵を閉める
いつもの速度で見慣れた景色を歩き出してから
ふと見上げる
旅に出る
すこしの不安と高揚感のゆらぎの間で
住み慣れない遠い地の空気に触れるときも
そうしてしまう
君は、どこにいても君だった
藍より出でる新しい空、光り零れる夏の記憶
日々変わる彩に願った、やさしい明日は
微睡みから醒めていく、薄明の時にだけ叶う夢の時間になった
そういえば、あれはいつだっただろう
ここからずっと遠い地の朝
神有月の夜明け、触れる風の香りに懐かしさを覚えたような…
気のせいじゃない。これは君の香り
戻っていく時計の針、あるいはゼンマイ
誰も邪魔しないで、君と私、ふたりだけを取り残していく
穏やかな一日の終わりさえ巻き戻して
曖昧な境界線を越えて、あの淡い夏の夜の始まりへ
静寂-しじま- は、もう必要なかったの
交わした言葉を重ねた気持ちを、何度だってかみしめて
またやって来る春の、君との幸せな物語を。
ー春空 shun-kuu ーinspired by Asami Nenoki
本詩は、作家さんから許可を得て、作品タイトルを使用しています。
【油彩風景画家 根ノ木 あさみさんのご紹介】
根ノ木さんが油彩で描かれている題材、「空」は、誰もが身近に感じられる世界です。海や川などあらゆる自然は、基本的にそこに行かなければ見えないけれど、「空」は毎日違った顔を見せながら、いつも傍にあってくれます。
定まった形が1日としてないからこそ、惹かれずにはいられない。
今日、あなたがどんな気持ちで過ごしたか。いま大切なひと、遠い過去、自分が育った街のこと、どこかで聞いた音楽のように、優しく寄り添ってくれる風景画です。
作品と共にご注目頂きたいのが、タイトルとキャプションです。僕自身が詩人だからということも大いにありますが、丁寧に添えられた言葉の温もりに、心が洗われていくような気持ちになります。
現在、東京都世田谷区のALL DAY GALLERYにて、個展ー触れる風の香りーが開催中です。
最終日のお昼12時からは、ライブペイントが行われる予定です。お誘いあわせて、ご来場ください。どんな空が描かれていくのか、想像しながら。
根ノ木 あさみ 個展 ー触れる風の香りー
会期 現在開催中〜3.31 sun
平日 12:00 - 20:00 / 土日 10:00 - 19:00
東京都世田谷区若林4-8-3 B1
東急世田谷線「若林」「松陰神社前」から徒歩6分
ライブペイントは、最終日、3.31 sun.の12時からの予定です。