気軽に楽しめる俳句の魅力
https://www.homes.co.jp/life/cl-hobby/cm-literature/27207/ 【趣味として初心者でも気軽に楽しめる俳句の魅力】より
中村満葉
俳句を趣味にして楽しみませんか?
何か一生続けられるような趣味を持ちたいと思ったことはありませんか? 日本の文化でもある「俳句」は紙とペンがあれば手軽に始められます。俳句は知っているけれど、きまりが多く難しく感じている人も多いでしょう。
私が俳句に興味を持ち始めたのは、寺山修司の句集を読んだことがきっかけでした。五・七・五のわずか十七音に凝縮された表現の世界に、すっかり魅了されてしまったのです。
さらに、俳句は話を簡潔にまとめる訓練としても役に立つと思い、かれこれ10年近く趣味として続けています。テレビの講座や本、インターネットなどを参考にしたり、いろいろな句集を読んだりしながら楽しんでいます。
この記事では、これから俳句の趣味を始めたいという方に向けて、俳句の説明や俳句を楽しむ暮らしについて分かりやすくご紹介します。
俳句の魅力
俳句といえば、学校の国語の授業で習ったものの、なんだか難しいというイメージを持っていませんか?
まずは、俳句を知るところから始めましょう。
俳句とは?
俳句とは、季語と五・七・五の十七音で表される定型詩です。季語が入らない無季俳句、季語や定型にとらわれない自由律俳句もあります。
俳句はもともと、室町時代に五・七・五・七・七の和歌を上下二つ(五・七・五と七・七)にわけて、何人かで順番に詠む「連歌」の、一句目「発句」から派生しました。
当時、連歌は貴族や武士のたしなみとして人気のあった遊びです。発句はあいさつ句とも呼ばれ、季節感やその連歌が詠まれる場所の風景などが表現されています。
江戸時代には連歌の中でも、滑稽味のある「俳諧連歌」が庶民の中で大流行し、いろいろな俳諧連歌が生まれました。俳諧連歌の発句に磨きをかけ、より高度な技術や芸術性を求めた松尾芭蕉が、俳諧の発句(=俳句)という表現の世界を確立。後に与謝蕪村や小林一茶など、松尾芭蕉に影響を受けた人がそれぞれの俳句を詠むようになりました。
明治時代になると、正岡子規が廃れた俳諧連歌を批判。俳諧の発句を「俳句」と呼び、現代俳句につながる俳句の形態を確立しました。
明治・大正時代以降は数多くの俳句の同人誌などが作られて、俳句の世界は再び盛り上がり始めました。俳句は今や世界一短い形の詩「HAIKU」として、世界中で親しまれています。
俳句と川柳・短歌の違いとは?
俳句と同じように定型詩としての表現の一種である、川柳や短歌とはどんな違いがあるのでしょうか?
ここでは、定型詩として有名な俳句・川柳・短歌・狂歌の違いを分類しました。
・俳句…五・七・五の十七音で表される定型詩。季語を入れる、季重なりを避けるなど細かいルールがある。そもそもは俳諧連歌の発句だった。ただし、ルールにとらわれない無季俳句や自由律俳句もある。
・川柳…俳句の一種「雑俳」から派生したもので、季語の有無は問わず、言葉遣いも自由。風刺や世相などが詠まれる。俳句と同様に、五・七・五の十七音で表される。
・短歌…和歌の中の長歌と呼ばれる上下の句が一対の五・七・五・七・七の三十一音で構成されるものを指す。もともと和歌と呼ばれていたものが明治以降近代・現代短歌と呼ばれるようになった。俳句が一句と数えるのに対し、短歌は一首と数える。
・狂歌…和歌の中にユーモアや冗談などを盛り込み滑稽さを強調したもの。
このように、似ているようですがそれぞれの表現形式やルール、表現される世界観などに違いがあります。
有名な俳人
実際に俳句を作る前に、まずは有名な俳人(俳句を作る人)の名句を鑑賞することから始めてみませんか? 書店にも俳句や短歌のコーナーがありますし、インターネットでもたくさんの作品を閲覧できます。いろいろな俳句に触れると、俳句の世界がより身近になるでしょう。
ここでは、有名な俳人の一例と、代表作や創刊・主宰した句集・同人誌をご紹介します。
・松尾芭蕉(江戸前期。『おくの細道』)
・小林一茶(江戸中期。『おらが春』)
・与謝蕪村(江戸中期。『新花摘』)
・加賀千代女(江戸中期。『千代尼句集』)
・正岡子規(明治時代。『俳諧大要』『歌よみに与ふる書』)
・高浜虚子(明治〜昭和。『ホトトギス』主宰。『虚子句集』)
・山口青邨(明治〜昭和。『夏草』)
・飯田蛇笏(明治〜昭和。『雲母』)
・水原秋桜子(大正、昭和。『馬酔木』)
・中村草田男(大正、昭和。『萬緑』)
・中村汀女(大正、昭和。『風花』)
・河東碧梧桐(明治〜昭和。『海紅』)
・荻原井泉水(明治〜昭和。『層雲』)
・種田山頭火(明治〜昭和。『郷土』)
・尾崎放哉(明治、大正。『大空』)
ここでご紹介した以外にも、数えきれないほどの素晴らしい俳人がいますし、現代俳句の俳人も多く活躍しています。
私の俳句の楽しみ方
私が社会人になって、興味が湧いたのが短歌や俳句の世界でした。句集や歌集は通勤途中でもさっと読めるのに、じっくり考えながら味わえる面白さがあります。
私は特に、尾崎放哉や種田山頭火などの自由律俳句にハマりました。現代俳句や現代短歌を読みすすめるうちに、私もこんな風に日常を詠んでみたいと思うようになったのです。
私は普段料理人として働いているので、季節を料理に盛り込む、旬を大切にするということを意識することが多いです。仕事をする中で、日本のきれいな四季の移り変わりや料理に使う食材のイキイキとした鮮度など、心が動く瞬間がいくつもあります。
最近では、このような心の動きを俳句や短歌にしようと思い、携帯にメモしたり、SNSに発信したりしています。サイトによっては、”いいね”の代わりに”をかし”で評価されるものがあり、他人の作品も鑑賞できて楽しいです。
奥深い俳句の世界ではまだまだ未熟者ですが、いい句が詠めるように精進したいと思っています。
俳句を作ってみよう!
俳句の成り立ちが分かったところで、俳句のルールを知り、実際に俳句作りを始めてみましょう。
俳句のルールを知る
まずは、俳句を作るときの基本的なルールを解説します。
・五・七・五の十七音で作る(字余り・字足らずという例外もある)
俳句の基本的な形です。五文字、七文字、五文字で表現したいことをまとめます。字余り、字足らずといって、例えば六・七・五とか、五・六・五になってしまうこともありますが、あまり推奨されていません。
・季語を一句につき一個入れる
俳句の構成を簡単に説明すると、季語と季語以外の言葉を組み合わせになっています。季語が2つ以上入ると「季重なり」といってできるだけ避ける必要があるとされています。表現したい情景に季語が何個も入ってしまうこともありますが、季重なりになるといい句とは評価されません。
・切れ字「や」「かな」「けり」を入れる
俳句の独特な表現に切れ字があり、感動や詠嘆、断定の表現です。切れ字を使うことにより、句にリズムが生まれます。いい”切れ”は読者に想像の余地を持たせて、表現されている情景の余韻を楽しませる役割があります。
・余韻を残す
切れ字と同様に、説明しすぎず、句の表現を適度に言い切ることで、余韻を持たせて読者の想像をふくらませます。
自由律俳句や無季俳句について
自由律俳句と無季俳句は、定型や季語にとらわれず、自由に詠んだ俳句のこと。ただの短い詩、言葉遊びのようにも感じられますが、感情の動きや詩のリズム(内在律)を大切にすることによって、俳句として成立させています。
俳句に必要なもの
俳句を始めるのに必要なものは、ペンと句帳(句を書き留めるノート)、歳時記(季語やその説明、代表的な句などをまとめた本)、辞書です。季語を調べるのに、歳時記は必須です。本の歳時記を買わなくても、最近はインターネットやアプリで調べることができますので、活用してみましょう。
季語を意識してみる
俳句を始めようと、歳時記を入手して読み始めると、季語には実にたくさんの種類があることが分かります。
例えば、月や雪、花なども季語になります。普段何気なく目にしている風景や四季の移り変わりも、季語を意識してみると感じ方が変わってきます。俳句は風景に心を乗せるものなので、揺れ動く自分の心や感動を季語に乗せて俳句にすることで、より共感される句が作れるでしょう。
名句を鑑賞する
俳句を詠むには、俳句を知っておく必要があります。俳句らしい独特の世界観や言い回し、季語の使い方を知るためには、名句の鑑賞がおすすめです。
名句とは、先ほど挙げた有名俳人の代表作のような、素晴らしい俳句です。名句を読んで、その意味や情景を考えることで、俳句の表現の具体例を知ることができます。ぜひ、いろいろな句集を読んでみましょう。
日常を俳句に詠んでみる
俳句の基本的なルールを知ったところで、実際に俳句を作ってみましょう。
ただし、初めからいい句が思いつくわけではありません。俳句を趣味で楽しみたいのに、いきなりレベルの高さを求めてしまい、苦しくならないように、俳句を詠む準備を積み重ねることが大切です。
私も、実際に俳句を作ってみようと思いついてから何年もたちますが、自分にノルマや課題を課しているわけではありません。「作らなきゃ!」と張り切ると、逆に何も浮かばないものです。私のおすすめの作り方は以下のとおりです。
・心が動いたときの風景、出来事などを句帳や携帯のメモなどを使って書き留める
・時間があるときにゆっくり熟考する
・思いついたものを書き出して、じっくり推敲していく
・平仮名で書き出し、合う言葉を取捨選択する
このような方法でより作りたい、表したい俳句に近づけていきます。自分だけのメモとして日常を俳句に置き換えていくうちに、徐々にコツが分かってきたり、書き留めるのが楽しくなったりします。
うまくできたときには、ぜひ誰かに披露してみましょう。「何気ない日常を俳句にしよう」と思うだけで、目に映る日々の暮らしが彩り豊かに見えてきます。
俳句を作るときに必要なのは、俳号(ペンネーム)です。自分の気に入った俳人らしい名前をつけるというのもなかなか難しいことですが、俳号をつける、持つことでより気分が盛り上がります。
後々、句会に参加したりコンクールに応募したりするときには、俳号が必要になります。ぜひ、俳句を始めたら、同時に自分の俳号も考えてみてくださいね。
句会に参加してみる
一人で俳句を詠んでいても構わないのですが、少し慣れてきたら、腕試しやさらなるレベルアップのために句会に参加するのもおすすめです。 カルチャーセンターの俳句講座や、インターネット上のWEB句会などもあります。
句会はどんなイベント?
(1)何人かで集まり、一人何句を作るのか、きまりを作る(例えば、10人で一人3句ずつなど)
名前を記さずに書いたものを提出する。(投句)
(2)集めた俳句をシャッフルして、全員で手分けして清書する。(清記)
(3)句を清書した紙を全員で順番に回してメモを残しておき、その中から自分がいいと思った句を選び、選句用紙に書く。(選句)(互選)
(4)選句結果を集めて、披講者が発表する。読まれた人は名乗りを上げる。
(5)選句された句に得点をつけ、多い順に順位(特選、秀逸、並選など)をつけられることもある。
(6)皆でよかった句を味わったり、指導者があれば講評したりして、句会の反省会や交流会をする。
句会はさまざまな人たちの俳句に触れられる場です。人がどんな風に日常を見て、どう俳句に詠むのかを知ることは、いい勉強になります。自分の作った句を披露して評価されるので、思わぬ喜びや反省があり、次の作品の参考になります。
コンクールに応募してみる
俳句を作ることや句会に参加することに慣れてきたり、自信のある素晴らしい句ができたりしたときには、自分の腕試しとして、コンクールやコンテストに応募してみましょう。
日本全国に俳句のコンクールやコンテストがあり、各協会・結社でも開催しています。その団体ごとのお題や特色があるので、これはと思うものにぜひ応募してみるといい経験ができますよ。
俳句に親しむ暮らしができる住まい
俳句に興味を持つと、俳句を詠むのにふさわしい環境を求めてしまうことがあります。実際に松尾芭蕉や種田山頭火のように旅をしながら俳句を作る人もいました。心が動き、俳句を詠みたくなるような自然の風景や趣のある景色が見える暮らし、俳句とじっくり向き合う暮らしが実現できたら素敵ですよね。
自然を近くに感じられる住まい
俳句のよさは何といっても、日本の四季の移り変わりや日常のささいな景色の中にある美しさを感じて、スケッチのように表現し、味わうことです。俳句の季語が豊富なのは、日本の四季の情景が豊かだからです。
俳句を作ることを通して、四季の変化の喜びを深く感じられるようになり、観察眼も鋭くなります。緑や景色が見えるような大きな窓が付いた住まいや、少し歩くと大きな自然公園があるような場所に住むことで、俳句を作る楽しみをさらに味わえるでしょう。
ゆっくり思索できる住まい
住まいの中でゆっくりと物思いにふけることのできる空間は、大切です。集中できる書斎のような空間やスペースを作れれば、集中して本を読んだり、俳句を考えたりすることができるでしょう。
静かで集中できる空間は、テレワークなどの仕事をするのにもぴったりですよ。
https://gospel-haiku.com/dig/d010604.html 【俳句は生涯学習】より
やまだみのる
俳句を始められた方がしばらく添削や句会に参加されたあと揃ったように仰るのは、
"俳句がこんなに奥が深いものとは思わなかった。"
ということです。 始めのうちは無心に作句されるので添削して選れるのですが、 少し慣れてくるとあれこれ考えて作り出すので誰でも最初の壁にぶつかります。 残念なのは、
"やっぱり自分には俳句の素質がないのだ・・”
という段階で挫折されるかたが多いことです。ぼくは、
”俳句に素質なんて関係ない”
と、正直いまも信じています。 なぜなら、技術畑一途、文学無関係、歴史地理は大の苦手で俳句などとはまず縁がないと自他ともに 認めていたぼくが、ほんとうに不思議な縁で俳句をするようになって今日があるからです。 ぼくの場合自分で努力したというより、師事した先生がとにかく一生懸命だったので、 それに応えようとしかたなく?必死に頑張ったという方が正しいでしょうか・・
一つの壁を乗り越えてもまた次の壁がやってきます。 昔、開けてもあけても次々と新しい箱が出てくる手折り紙で作った仕掛けがありましたね。 あれと同じで、一体何時になったら終わるのかと思うくらい次々に壁がやってきます。 でも、あきらめたら負けです。
たとい素質があったとしても努力しなければそれは磨かない玉と同じだと思います。 俳誌「ひいらぎ」主宰の小路紫峡先生は『俳句は生涯学習』と言われました。 牛歩であっても休まずに努力することが大切で立ち止まってはいけません。