あっという間に3月31日
今年の3月は気圧の上下が激しく、患者さんの多くが具合が悪くなっている。頭痛、うつ気分、不安など、激しい気圧の変化に患者さんの自律神経調整が追いつかない。気圧症とか気象病というのが精神科診断に加わるような話まである。
精神医療は診断名で治療が決定するほど簡単ではない。ところが捜査的診断ってやつが世の中に登場し、なんでもかんでもICDという国際疾患分類はDSMという米国の診断基準に基づいた診断をつけないといけない。
日本は保険診療で薬を出す時に保険病名が必要になる。そのため、患者さんには誤解が生ずる。例えばオランザピンの適応は統合失調症だが、これは不眠症にも使える依存のない薬だ。 レキサルティはうつ病への適応がついたが、去年までは統合失調症だけであった。そのためこうした薬を出すと、ネットで調べた患者さんはビックリしてしまう。もちろん丁寧に説明するし、調べると統合失調って出ますよと教えておく。バルプロ酸ナトリウム(デパケン)は、衝動性や感情の上下に使える薬だが、適応はてんかん、偏頭痛、躁病である。「私、てんかんなんですか?」と言われたこともある。ミニプレスは悪夢に効果があると米国の最新報告があるが、ある薬局から「高血圧でないのにミニプレスですか」と問い合わせがあり、逆に「もっと勉強してくださいね」を教育指導したこともある。
世の中、紅麹が話題になっているが、多くの人が「紅麹=腎障害=死亡」と認知してしまうのを心配する。紅麹が問題ではなく、混入した異物かカビだと調査中だが、紅麹はすでに多くの食品に使用されている。昨日たべたゆかりのおにぎりだって紅麹が使われていた。
情報が簡単に得られるが、どうせ得るなら正確な情報にしてほしい。精神科の薬など、素人がありとあらゆることを書いている。不安が強い不安障害はセロトニン減少が原因でSSRIの適応が依存性・耐性もなく適応だが、いろんな情報に不安になり飲まない人もいる。
副作用には0.1%のものまで記載されているので、もう皆、怖くなってしまうのだ。うどん粉でもプラセボー効果で効いた時代は、薬=見方であったが、今や悪者みたいだ。