今月の輝く!リフォームセールス~年間売上1億3500万円カギは一期一会の接客意識 初回で顧客のこころを掴む「そうなんですよ」の会話術
昼夜問わず顧客と連絡を取り合うほど、自他共に認める仕事好きな河合輝さん。本音を包み隠さず、より良いものを求める姿勢に、顧客から信頼を寄せられている。
▲ゆめや(兵庫県神戸市)リフォームプランナ―/営業 河合輝さん(40)
困りごとを解決するのは美容師も営業も
同じ兵庫県神戸市のリフォーム専門店ゆめや。同社で昨年度No1の売り上げを誇るのが、営業歴10年の河合輝さんだ。
河合さんは元々美容師という経歴の持ち主。美容師の時の接客経験が、リフォーム営業にも生きていると話す。
「困りごとがあるお客様が、どうしたいかを探る。そして、一緒に要望を形にしていく。この過程はヘアスタイルでも住宅でも同じです。客目線で、『なぜそうしたいのか?』『なぜこれを選ぶのか?』といった物事の動機や理由を考えるのが、以前から好きでした。ヒアリングの時、提案する時、なぜ?を考えるくせが役立っています」
たとえばプラン提案時、いきなり「このプランです」と見せると、施主は表面上の設備や金額に目がいってしまう。河合さんは、「こういうお困りごとがあるので、それなら僕はこれがいいと思います。ここからここは、この金額内でお客様に選んでいただけます」と、理由を丁寧に伝えることを意識している。
プランの結論よりも、このプランになった理由に重点をおくことで、説得力をもたせているのだ。
「お客様へのヒアリングも同じですよね。リフォームしたい理由がわからないと、こちらも提案ができません。同じように、お客様に対しても、理由を伝えることが大事です」
「なんでもいい」は要注意
こだわりのない施主はいない
特に丁寧な説明を心がけているのが、「なんでもいい」という顧客相手の時だ。一見、なんでも良ければ進めやすそうに思えるが、実は真逆だという。実際に、河合さんが実感した事例がある。
「お風呂交換がしたい、安ければなんでもいいから早くしたい」という問い合わせだった。すでに2社から見積もりを取っていて、最後に河合さんが行くと「他社はこの金額だが、いくらでできるか?」と言われた。
河合さんは「金額を最優先にされるのだったら、他社の方が良いのでは」とはっきり伝えた。そして「工事は軽自動車くらいの金額ですよね?実物も見ないで決めてしまって良いのでしょうか?ユニットバス自体は、どの会社でも同じです。でも、どんなユニットバスにするかは、お客様が選べるんですよ」と続けた。こんなにできることがある、と丁寧に話した。
すると、ショールーム訪問を希望され、あれよあれよとオプションが付き、最終的に1カ月以上かけ、違う部屋の内装までも受注することになった。他社の見積もりは130万円程度だったが、最終的に170万円ほどの工事に膨らんだ。
「お客さまはどうすればいいかわからないだけで、こだわりがないのとは違います。言葉を真に受けて雑に扱ったら、必ず不満につながります」と河合さん。
当たり前の質問をあえてする
信頼を生む同調の返答
リフォーム営業は、はじめは警戒されやすい。顧客の信頼を得るには、初回訪問で「この人は私のことをわかってくれている」と思わせられるかが重要だという。
河合さんが初回訪問のルールだと話すのが、顧客に「そうなんですよ」と多く言わせることだ。そのために、わざと同調してもらいやすい質問を多めにする。
質問のヒントは、顧客のファッションや室内のインテリアから見つける。たとえば、ブランド物を身につけていたら「〇〇(ブランド名)っていいですよね」、部屋に植物が飾られているなら「植物がお好きですよね?」といった具合だ。
「自分に同調してくれる人には、親近感を抱いて心を開いてくれやすいです。リフォームに関わる話より、そうした会話を多くすることで、河合という人間を信頼してもらいたいんです」ここで信頼を得られれば、結果的に受注にもつながってくる。トイレ交換だけでも、30分〜1時間ヒアリングにかけることも少なくない。
売上よりも受注件数
常に一期一会を意識
分業制のゆめやでは、設計や現場管理は営業とは別の担当スタッフが担う。河合さんは営業として、前年度1億3500万円を売り上げた。今年度も堅調な売り上げで推移しているが、自身が意識しているのは受注件数だ。目標は月に10件。工事規模よりも、顧客開拓に比重を置いている。
「設備交換のような小さな工事でも、満足してくれれば数年後また依頼してもらえるかもしれません。逆に不満なら、別のところへ相談されてしまいます。毎回、次がないかもしれないと考えて、今を大切にしようと意識しています」
目先の売り上げよりも、いかに長い付き合いを続けられるかが、河合さんにとって重要なこと。だからこそ、初回訪問に時間をかけているのだ。
▲現場調査も1つ1つ、丁寧に取り掛かる
営業同士で切磋琢磨できる良好な職場環境
河合さんが成長できている理由のひとつに、社内の他の営業スタッフとの助け合いがある。
「営業は下手すれば、顧客の取り合いもあり得る、個人商店的な働き方になってしまうこともあります。ゆめやではそれがなく、むしろ積極的にアドバイスしあえる環境です」
上司やまわりの営業のことを、自分には持ってないものを持っていて刺激をもらえると話す河合さん。他者からの指摘で、改善点をみつけられたという。
「契約後、一瞬力が抜けてしまいがちだったのを、注意されて気付けました。自分でわからない部分を指摘してもらえるのはありがたいです」と河合さん。
営業会議が月に1度設けられてはいるが、それよりも毎日の交流で、アドバイスを出し合っている。夕方には帰社し、顔を合わせることが多い。電話している様子などを見て、「その話し方は誤解を与えるからこうした方がいい」など、それぞれの働き方に対して、自然と話すのが日課だ。
「みんな、お客様のことが好きなんだと思います。お客様に不信感や不快な思いを持たせないためにどうすれば良いか、互いに言い合える良い関係だと感じています」
▲河合さん愛用のアイテム。iPad、ボールペン、スケール、距離計、下地探し、ラチェットドライバー(小)、電動ドライバー(中)、インパクトドライバー、電卓、スケジュール帳、ペンケース、軽作業用のグローブ、白の靴下。白い靴下は、作業で汚れてしまった時の履き替え用。写真はデジカメではなく、スマホかiPadで撮る
大胆な提案で広々リビングに
▲施主は、河合さんの25年来の友人。中古マンションの全面改装で、キッチンの閉塞感とリビングの狭さを解消したいとの依頼だった。
▲キッチンは壁を取り払い対面式に。インターホンの後ろにあったトイレを思い切って撤去し、その分リビングを広くした。天井を剥がしたことで、天井高は250mm高くなり、開放感が増した。
リフォマガ2023年5月号掲載