アカデミー賞タイ代表映画に涙腺崩壊
大阪アジアン映画祭で上映されたアカデミー賞国際長編映画部門フィリピン代表映画『行方不明』に続いて、お次はタイ代表映画について。
アジアのA24と称される映画制作会社GDH559が手がけた『親友かよ』です。
日本でもスマッシュヒットを飛ばした『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017)のナタウット・プーンピリヤ監督がプロデューサーを務め、2013年の大阪アジアン映画祭でも上映された『ユー&ミー&ミー』(2023)のアンソニー・ブイサーレートとティティヤー・ジラポーンシンが再びコンビを組んだ青春物語です。
この作品が本当に素晴らしかった!
物語は学校の人気者ジョー(ピシットポン・エカポンピシット)が不慮の事故で亡くなるところから始まります。
彼と隣の席だった転校生のペー(ブレサーレート)は、短編映画コンテストに入賞すれば大学の映画学科に入学出来ると聞き、ジョーが遺したエッセイを基に、彼を偲ぶ映画の制作を思い立ちます。
ぺーにとって大学に進学できなければ、実家の製麺所を継がなければいけない人生の大勝負。
実に不埒な動機なんです。
だからジョーの友人を名乗るボーケー(ジラポーンシン)からも激しく非難もされます。
それがいつしか、仲間たちとの映画制作に夢中になり、ジョーのことを振り返れば振り返るほど、親友じゃないと思っていたはずの彼とかけがえのない時間を過ごしていたことに気づくという展開です。
個人的に今年2月に友人が急逝し、ずっと受け止めきれないでいたので、本作を見ながら泣けて、泣けて……。
そして、気付かされました。
私と彼女に思い出があったように、彼女と関わった人ぞれぞれに思い出があるはず。
最後は不運だったかもしれないけれど、彼女の人生はそのものは実に彩り豊かだったし、その時、その瞬間を懸命に生きていたのだと。
この映画に、心が救われた思い。
ペー(写真左)とジョー
(C)2023 GDH 559 AND HOUSETON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
さらに本作を輝かせているのが、映画制作のシーン。
『ミッション:インポッシブル』など名作映画のワンシーンを再現する場面では、
自主映画ならではの創意工夫に溢れていて松本壮史監督『サマーフィルムにのって』や、S・スピルバーグ監督『フェイブルズマン』のよう。
そこに♪ヒッチコックとコレエダに追いつけ〜など、世界の名匠の名前を盛り込んだラップミュージックがかかるのだから、映画ファンにはたまりません。
『ミッション:インポッシブル』撮影シーンは、下記のメイキングにもちょこっと。
↓
監督は、長編映画初のアッター・ヘムワディー。
CMやMV制作で活躍しており、プーンピリヤ監督が彼の作品のファンで「そろそろ映画を撮らないか?」と声をかけたそうです。
”あの”奇才プーンピリヤ監督のお眼鏡にかなった才能ってどんなん?と思い、ヘムワディー監督のこれまでの仕事を拝見してみました。
まずはタイのアイドルグループBNK48「Kimi no Koto ga Suki Dakara」のMV。
『親友かよ』にはBNK48のフォン(ナッティチャー・チャンタラワーリーレーカー)が出演してるのですが、このMV撮影がご縁ですかね?
またタイのポップデュオ・Whal & DolphのMVをほとんど手がけているようです。
タイの渋滞緩和プロジェクトの一環として行われている、学校への送迎用シャトル・バスの利用促進CMも。
さらに、タイのCoca-Colaが取り組んでいるプラスチック製品のゴミ分別を啓蒙するショートムービー。捨てられたゴミを、人間が演じているのがツボ。
どれもストーリー性とユーモアがあって、短いながらも印象に残る作品ばかり。
この才能は、放って置けないですよね。
ちなみに、第13回タイ・ディレクターズ・フィルム・アワードの授賞式が4月5日に行われ、
ヘムワディー監督は『親友かよ』で最優秀脚本賞を受賞。
ボーケー役のティティヤー・ジラポーンシンは、『ユー&ミー&ミー』で最優秀女優賞を受賞しました。
最優秀作品賞は、同じく大阪アジアン映画祭で上映された『葬儀屋』。
私的には断然、『親友かよ』の方を推しますけどねッ!
アッター・ヘムワディー。
この名前を覚えておこうっと!
ヘムワディー監督(写真左)と本作ではプロデューサーを務めたプーンピリヤ監督。