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中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”

結婚=幸せ!?に対するジョージア映画のお答え

2024.04.07 04:14

ジェンダーをテーマにした映像作品が増える中、4月からスタートしたNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」は、日本で初めて女性として弁護士・判事・家庭裁判所長を務めた三淵嘉子さんの人生をモチーフにしています。

主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)は、銀行マンの裕福な家庭に生まれ、花嫁修行の場として捉えられていた女学校を卒業し、あとは良家に嫁ぐだけという、一昔前の女性の王道コースが待っていました。

しかし寅子は、結婚=幸せを唱える厳格な母・はる(石田ゆり子)の説得に「はて?」と疑問を抱いていました。

そんな中、日本では法的にも女性の地位が低いことに知り、法律に興味を抱くという展開です。

日本の近代女性史を法律の視点から紐解き、エンタメとして広く多くの人に届けたいとする制作陣の思いが画面の隅々から伝わってきて、毎朝、胸を振るわせながら見ています。

4月8日からの第2集は、母の許しも得て、寅子は明律大学女子部法科に通い始めます。

でも、寅子の背中を押して大学に送り出すギリギリまで、母は言いました。

「寅子。何度でも言う。今、お見合いした方がいい。その方が間違いなく幸せになれる」。


はて?


思わずテレビの前で首を傾げてしまいました。

というのも、大阪アジアン映画祭で上映されたジョージア・スイス合作映画『ブラックバード、ブラックバード、ブラックベリー』(2023)が、結婚について実に興味深い考察を提唱していたからです。

主人公はジョージアの小さな村で雑貨店を営む48歳のエテロ。

母親を早くに亡くし、父と兄による抑圧を受けながら育った彼女は婚期を逃し、

”行き遅れ”として村の女性たちからも嘲笑の対象となっています。

でも彼女は、実に毅然としているのです。

それどころか、既婚マウントをとる女性たちに反す刀で言い放ちます。


「結婚と男のちん⚪︎が女性に幸福をもたらすと言うのなら、

          世の女性たちはもっと幸せになっているはずだ」

(C) ALVA FILM & TAKES FILM


まさに‼️

この惚れ惚れするような、粋なセリフを書いたのは、本作の監督であり脚本も手がけたエレーヌ・ナヴェリアーニ

1985年生まれ、ジョージア・トビリシ出身で、ノンバイナリーを公言しています。

長編デビュー作『I am Truly a Drop of Sun on Earth』(2017)がロッテルダム国際映画祭に、第2弾『Wed Sand』(2021)がロカルノ国際映画祭、そして『ブラックバード、ブラックバード、ブラックベリー』がカンヌ国際映画祭監督週間に選出と、順調にステップアップしてきた注目の存在です。


ジュネーヴ造形芸術大学卒というスイスとのコネクションを持つことからジョージアとスイスの合作となっていますが、映画の舞台はいずれもジョージアで、伝統的な家父長制の残る家庭や閉ざされた田舎町で、”普通”に捉われずに生きる人たちの苦悩を描いてきました。

『ブラックバード、ブラックバード、ブラックベリー』も、フェミニストの作家タムタ・メラシュヴィリ同名小説が原作。メラシュヴィリ自身も、本作の脚本に参加しています。

先に記したセリフだけでなく本作は格言ばかりで、上映時間110分の間、シビレまくりです。

なのに驚きなのは、こんな才能溢れるナヴェリアーニ監督の作品を、日本で紹介するのは今回が初めてとか。

映画祭だけではもったいない!

是非とも劇場公開されることを望みます。

できれば「虎に翼」放映中に。配給会社の皆様、急いで!!