11月10日(土)『歌舞伎座十一月、吉例顔見世大歌舞伎夜の部』
楼門五山桐(さんもんごさんのきり)、文売り(ふみうり)、隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)の三本立て。
楼門五山桐(さんもんごさんのきり)は、石川五右衛門が吉右衛門、久吉は菊五郎の大顔合わせ。金ぴかの南禅寺山門の楼上に、石川五右衛門が座っていて、絶景かな絶景かなの名セリフはお馴染み。山門がせり上がり山門に吉右衛門と地上に菊五郎が立つ。役者の大きさと、桜満開の季節感、絢爛豪華な山門が美しい。色彩の乱舞を楽しんでお仕舞。市川猿翁の久吉でもう一度見たい。
文売りは、清元舞踊で雀右衛門が踊った。新春のとある日、梅の枝を持って踊るのだが、小田巻と勝美と言う二人の遊女が、一人の男を奪い合い、掴み合いの喧嘩になると言う踊り。文売りは、何を商う商売なのか、良く分からないが、恋文を売っていたようにも、恋愛運を占う御御籤の様な物を売っていたとも思われる。踊りは良く分からないので、この辺で終わる。
隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)。その昔平成6年には先代猿之助で、平成20年の勘三郎、26年には吉右衛門で見た。猿之助は初役で務めた。初代、二代、そして当代と受け継がれた隅田川続俤である。この芝居は、釣鐘建立といって浄財を集めるが、建立のつもりはなく、金に汚く、集めたお金は、飲み食い女に使い、無精ひげ、衣装は汚れてぼろぼろ、頭には丸い禿があり、人殺しも平気で行なう破戒僧、法界坊が主役の話である。殺人も犯すが、愛嬌があり、悪逆非道の坊主ではない、何処か憎めない、何処かにいそうな坊さんである。この芝居は、台詞があってないようで、アドリブも飛ぶ。法界坊がとにかく突っ込んで芝居をするので、法界坊を演じる役者は、愛嬌や役者ぶりが要求され、それなりの法界坊のイメージを持たないと演じられない。猿之助は、徹底して下品に下品に演じていた。でも猿之助には、勘三郎に通じる、下地にユーモアがあり、役者としての腕があるので、汚い下品ではなく、楽しいブラックコメディになっていた。猿之助の薄汚い役は、あまり記憶がないが、徹底的に下品で汚い坊主姿から、美しい野分姫へのチェンジが、ふり幅が大きくて楽しかった。押されて倒れれば、「又骨折したら大変」、とくすぐりを入れて笑わせたり、野分姫の幽霊となって、舞台上で宙乗りしたり、猿之助がこれまでも、これまでもと熱演して見せてくれるので、楽しかった。