過敏性腸症候群の知覚過敏と注意の関係:事務局便り#7
- 過敏性腸症候群の知覚過敏
- 注意をお腹に向ける影響
*動画とブログの中身は同じです。
本日の内容は、過敏性腸症候群の知覚過敏と注意の関係についてです。最初に過敏性腸症候群の知覚過敏について説明します。
それから、脳腸相関から考える、注意をお腹に向ける影響についても少し触れたいと思います。
知覚過敏とは、本来感じない程度の刺激でも、痛みや不快感を感じてしまう状態のことです。
例えば、歯の知覚過敏では、普通は平気なはずの水やお湯でも、痛みを感じてしまいます。
腸管の知覚過敏も、少し機序は違いますが、同じように本来は感じないはずの腸管の動きで、便意や痛みを感じてしまう状態です。
腸管には常にガスや便があるのが普通です。それが過敏性腸症候群では、普段より少しのガスや便でも、普通よりも痛みや不快感を感じやすくなっている状態です。
では、なぜ知覚過敏が起こるのでしょうか?
過敏性腸症候群では、脳から出るホルモンが知覚過敏を引き起こす原因の一つです。
ストレスが加わると、脳の一部である視床下部から、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンという物質が出されます。
このホルモンは、副腎皮質刺激ホルモンを放出させる働きを持っており、副腎皮質刺激ホルモンは、副腎からストレスホルモンとも呼ばれる副腎皮質ホルモンを放出させ、血圧や血糖値をあげる働きをします。
また、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンは、腸の運動異常を引き起こし、知覚過敏を悪化させる働きがあることがわかっています(※1)。
前回説明した、脳と腸の関係で考えると、お腹に不安や過度の注意が向くことでストレスがかかります。
すると、脳から先ほどの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、腸の知覚過敏や運動異常が悪化します。
このホルモンを直接抑制する薬は、まだ治療には使われていません。
ただし、このホルモンの刺激で出されるセロトニンという物質も腸管の運動異常に関わっており、このセロトニンの働きを抑制する薬はすでに治療薬として販売されています。
次回は、薬も含めた過敏性腸症候群の段階的な治療について説明します。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成
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集英社プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】を連載中です。連載、10回目は過敏性腸症候群についてです。
※1 Fukudo S et al. Role of corticotropin‒releasing hormone in irritable bowel syndrome and intestinal inflammation. J Gastroenterol 42(Suppl 17):48‒51, 2007