【2024年春特集4】地下水汚染対策に繋がるPFOAの原位置浄化技術確立へ~国際航業株式会社
PFOS、PFOAの地下環境における挙動特性をカラム試験で把握した国際航業株式会社(東京都新宿区北新宿2-21-1)は、自社で高い実績がある地下水汚染の原位置浄化技術を生かし、地下水汚染を引き起こす可能性が高いPFASに的を絞った浄化技術の確立を目指して実汚染地下水や模擬汚染水を用いた室内試験を実施。その結果、国内での複数浄化実績がある「電気発熱法を用いた熱活性過硫酸法」によりPFOA等を暫定指針値以下に分解できることを確認したと明らかにしました。(エコビジネスライター・名古屋悟)
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◆電気発熱法を用いた熱活性過硫酸法とは◆
「電気発熱法を用いた熱活性過硫酸法」は、同社が2014年度から開発を進めてきた「電気発熱法」と有害物質を化学的に分解する「酸化分解法」を組み合わせもの。
「電気発熱法」は、地盤に電極井(直径50㎜程度の鋼管)を挿入し、電圧をかけ土壌自体をジュール熱により発熱させるもので、土壌を30~80℃に加温することが可能です。土壌自体を発熱させるため、ヒーターやスチームなどほかの加温法に比べて、均一に加温でき、温度コントロールが容易、電気代が安いほか、電気抵抗の低い粘土層に電気が流れやすく昇温しやすいなどの利点があります。これにより、粘性土の粒子間に吸着しているVOC類の地下水への溶出や気化を促進させるほか、加温によるガス圧の上昇、水の粘性低下による移動性の向上などの効果を生みます。
さらに、「電気発熱法」により地下水などへ溶出してきたVOC類を効率的に分解するために組み合わせるのが、過硫酸ナトリウム等による「酸化分解法」であり、同社ではこれまでに実際の汚染現場で数多く実績を残しており、トリクロロエチレン(トリクレン)やベンゼンなどのVOC類や1,4-ジオキサンの浄化に大きな効果を発揮しています。
◆ポイントは「硫酸ラジカル」◆
「電気発熱法」と「過硫酸ナトリウムによる酸化分解法」を組み合わせることで、分解が極めて難しいPCBや1、4-ジオキサンの分解も可能であることを同社は確認しており、同じく分解が極めて難しい有機フッ素化合物(PFAS)への適用を研究開発しています。
1、4-ジオキサンもPFASも「酸化分解法」単独では分解できませんが、「電気発熱法」による加温で発生させる「硫酸ラジカル」がこれら難分解性物質を分解する肝になります。
◆効果のある温度や過硫酸ナトリウムの添加量、再汚染の可能性ある前駆体の生成の有無等を検証◆
「電気発熱法を用いた熱活性過硫酸法」は、実汚染土壌・地下水を用いた試験において暫定指針値(50ng/l)に対して十分な分解効果を確認していますが、同社では土壌・地下水汚染を対象とした場合の温度やSPS(過硫酸ナトリウム)添加量など至適条件、浄化設計に必要な分解速度、環境中でPFOAと共存していることが多いPFHxAに対する適用性、短鎖PFCAや環境中でPFOAに変化する前駆体など生成の有無――などを確認する必要があるとし、定量評価のため模擬汚染水を用いた室内試験を実施。
室内試験では、温度条件(15℃、50℃、80℃)、SPS添加濃度(5.0%、2.5%、0.25%)など別を組み合わせ、養生期間7日間でPFOA、PFxAの分解率を測定。
◆養生温度50℃、SPS添加濃度2.5%でPFOA分解率99.95%に◆
「養生温度15℃:SPS添加濃度5.0%」及び「養生温度80℃:SPS添加濃度0.25%」では暫定指針値以下にはならなかったものの、「養生温度50℃:SPS添加濃度5.0%」ではPFOA、PFHxAともに濃度0.0002μg/L以下、分解率99.98%となったほか、「養生温度50℃:SPS添加濃度2.5%」でもPFOA濃度0.005μg/L、分解率99.95%、PFHxA濃度0.013μg/L、分解率99.80%に、「養生温度80℃(SPS添加濃度2.5%)」でもPFOA濃度0.013μg/L、分解率98.70%、PFHxA濃度0.002μg/L、分解率99.79%になったとしています。
これによりPFOA、PFHxAを暫定指針値以下に対して十分に分解が可能であることが分かったほか、暫定指針値の10倍程度の数値であればSPS添加濃度を10分の1程度にできることが示唆されているとしています。
また、既往の研究では熱活性過硫酸法によるPFOAの分解では高い温度が必要とされているものの、今回の試験により電気発熱法による加温が容易である50℃でも十分以上の分解効果あることが分かったとし、PFOAの地下水汚染原位置浄化技術として電気発熱法を用いた熱活性過硫酸法適用へ自信を深めています。
浄化設計に必要な分解速度について検証では、一次反応速度定数を見ると、例えばPFOAでは、SPS添加濃度1.25%養生温度50℃で0.052となっているのに対し、SPS添加濃度2.5%養生温度50℃で0.091、SPS添加濃度2.5%養生温度80℃で1.9となっており、一次反応速度定数は物質の種類(C-F結合の数)ではなく、SPS濃度と養生温度に依存していることが分かったとし、C-F結合を直接攻撃しているのではなく、硫酸ラジカルによる官能基(カルボキシ基)の酸化が分解の開始になっているものと推察されるとしています。この結果、短鎖PFASや前駆体の生成が懸念された経緯もあったとしています。
◆熱活性過硫酸法でC-F結合完全に切断…前駆体の発生等懸念もなし◆
このため、分解生成物の評価も大事となりますが、同社では有機フッ素と無機フッ素の物質収支から評価。その結果、有機フッ素であるPFOAやPFHxAの分解量に相当する無機フッ素が確認され、熱活性過硫酸によってC-F結合が完全に切断されていることが分かったとしています。
また、Top Assay処理でPFAS濃度の上昇はなく環境中で酸化されPFOAとなる物質の生成がないことを確認できたとしています。
同社では「今後、本格的なPFOA等の地下水汚染原位置浄化を見据え、現地パイロット試験による検証を予定しているほか、今後規制の可能性がある長鎖パーフルオロカルボン酸(LC-PFCA)への適用性確認、その他現地パイロット試験による原位置浄化対策の適用性評価等を行っていきたい」としています。
「電気発熱法を用いた熱活性過硫酸法」は、浄化のための設備がコンパクトで工場建屋内での適用も可能など対策場所を選ばないほか、対策の深度に制限がないことから深い深度まで汚染された地下水の浄化も可能な点などが大きなポイントとなります。
現在、PFOS、PFOAは暫定指針値が設けられ、監視継続が対応の中心になっていますが、今後、環境基準化等が進み、浄化対策が必要になった時、同社の「電気発熱法を用いた熱活性過硫酸法」は大きな関心を集めそうです。
※記事中の図は、すべて国際航業株式会社提供資料より。
※国際航業の土壌・地下水汚染調査・対策については同社ホームページの以下URLを参照してください。問い合わせも同URLから可能です。
https://www.kkc.co.jp/service/issues/soil-and-groundwater-contamination/
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