UI/UXという意味不明な言葉について考える(その2)
UXデザインと「ウェブデザイン技能検定」
前回に引き続き、UI/UXという意味不明な言葉について考えていきます。
ウェブデザイン技能検定とは、ウェブデザインに関する知識・技能、実務能力等を認定する国家検定制度です。技量に応じて一級・二級・三級の等級があります。この検定の一級出題範囲に「ユーザモデルに応じたデザイン手法」という項目がありますが、これはUXデザインのことです。
理解しがたいことですが、UXという概念そのものは出題範囲ではなく、UXデザインで用いる手法とプロセスだけが出題範囲です。さらにいえば、「ユーザモデルに応じたデザイン手法」という項目は「インターフェースデザイン」の下位項目に位置付けられています。
UXデザインを学び始めた初心者UIデザイナーの多くは、参考書を読んでもUXデザインとUIデザインとの関係が全く分からないことに驚愕すると思います。本来のUXデザインでは、UIデザインはUXデザインという大きな概念のごく一部に過ぎないからです。
ではなぜ厚生労働省は「インタフェースデザイン」の下位項目に「ユーザモデルに応じたデザイン手法」を位置付けたのでしょうか? 前の記事を読んだ皆さんなら御察しの通り、「UI/UX」というウェブ業界に普及してしまった概念を厚生労働省も無視できなかったからです。迷惑な話ですね。
UIデザインの視点で「ユーザモデルに応じたデザイン手法」を説明する
敢えてUIデザインの視点で「ユーザモデルに応じたデザイン手法」を説明すると以下のようになります。
- UIをデザインするには、設計要件を定義する必要がある
- 設計要件を定義するにはユーザー要求を定義する必要がある
- ユーザー要求を定義するテクニックとして「理想シナリオの構造化」がある
- 「理想シナリオ」とは「現状シナリオ」を元に考察した理想の体験談である
- 「現状シナリオ」とは現状におけるユーザーの体験談の要約である
- 現状におけるユーザーの体験談は「ユーザー調査」によって集める
- 「理想シナリオ」および「現状シナリオ」に登場する主人公を「ペルソナ」と呼ぶ
- シナリオをフローチャート風に書き改めたものを「カスタマジャーニーマップ」と呼ぶ
- ペルソナ・シナリオ・カスタマジャーニーマップを総称して「ユーザモデル」と呼ぶ
- 上記の一連の作業プロセスを総称して「ユーザモデルに応じたデザイン手法」と呼ぶ
当然ですが、実際のペルソナ・シナリオ・カスタマジャーニーマップは商品企画そのものを決定しあらゆる設計要件の根拠となるものであり、UIデザインに限って用いられるものではありません。
UIとUXとは全く次元の異なるもの
前の記事の繰り返しになりますが、
UI=User Interface の略。人間と機械とが情報をやりとりするために設けられた部位、具体的にはボタン・タッチパネル・画面上の文字表示・アイコン・等のこと
UX=User Experience の略。製品・システム・またはサービスを利用した際および/またはその利用を予想した際に生じる人々の知覚と反応(心理変化および行動変化)のこと
であり、UIとUXとは全く次元の異なるものです。厚労省が「UIをデザインするための手段としてUXデザインがある」という考え方にお墨付きを与えてしまい混乱が生じていますが、実際には逆で「UXをデザインするための手段としてUIデザインがある」が正しい考え方です。お間違えなきようお願いします。