今月の輝く!リフォームセールス~誰からも信用される分け隔てない対応 「あなたに頼みたい」と思わせる徹底的なヒアリング
リフォーム営業2年目ながら、持ち前の接客スキルで、施主とも職人とも良好な関係を築く水戸奈央さん。問題に真っ直ぐ向き合う一生懸命さが魅力。相手が納得いくまで徹底的にヒアリングを重ね、満足感の高いリフォームを届けている。
▲ReMore(神奈川県横浜市)ディレクター 水戸奈央さん(37)
接客業、革製品のリペア職人、外装工事の施工管理と多様な業種を経験後、2021年にかねてより興味を持っていたリフォーム営業の道へ。初年度の売り上げは3000万円。
施主に対して常に正直に向き合う
ReMoreは2020年に設立され、水まわりを中心に住宅リフォームを手がけている若い会社。入社2年目の水戸さんは、以前より建築業に興味を持っていたものの、営業職に対しては苦手意識があった。
「営業という職種はとにかく売らなければいけない、と思っていました。そうではなく、お客様に対して誠実にサービスを提供するという会社理念に共感し、転職を決めました」と、水戸さん。
前職の屋根・外壁工事の現場管理の経験から、ある程度の知識はあったが、リフォーム営業は未経験。初めは知らない用語だらけだった。わからないことは有耶無耶にせず、正直にわからないとした上で、自分で調べたり、職人さんに質問したりと、がむしゃらに取り組んだ。
施主に対しても、納得のいくまで対話を繰り返す。時には施主宅を出て、ファミレスで雑談をしながら、施主の家への思いや、そこで過ごした家族との思い出を聞いていたこともある。
水戸さんのこうした一生懸命な姿勢は信頼に結びつき、水戸さんと一緒に働きたい、水戸さんに頼みたい、と思われる理由のひとつになっている。
要望されていなくても気になることは掘り下げる
水戸さんが大切にしていることは、関わる時間の密度だ。「同じような内容の見積もりが並んでいたら、選ばれる決め手になるのは営業の人柄だと思うんです」と話す。
問い合わせがあれば、初めの電話で希望内容、理由、気になっているメーカー、家で気になることを粗方聞き出す。その上で「1時間くらい大丈夫ですか?」と聞き、じっくり話せる準備をお願いしておく。
例えば、ある浴室リフォームの現場調査で、水戸さんが気になったのは明らかな間口の狭さ。浴槽の出し入れが心配になるほどだった。
加えて、施主の言った「そもそも家が寒い」という言葉も聞き逃さなかった。すかさず窓リフォームの補助金の話を持ち出し、「今だったら〜」とメリットを説明した。
初めから具体的に聞き出すことで、初回プランから細部まで気を使った内容に仕上がる。水戸さんは浴室・間口・窓断熱をフォローした見積もりを提出した。浴室交換の見積もりのみの他社と比べて、金額では高くなっているのに、施主に選ばれたのは水戸さんだった。その後内装なども希望され、当初の予算100万円から、170万円にまで膨らんだ。
イレギュラーにも慌てない
職人との連携プレー
リフォームにはつきものの解体後のイレギュラー対応でも、職人との連携でうまく乗り切っている。
以前の工事で、ユニットバスの入れ替えの際、シロアリによる土台の痛みが激しく、柱は2階まで被害が及んでいたことがあった。
現場調査の段階で、基礎が湿っていたのでもしかしたらと予兆はあった。元々、木工事は予定していなかったため、急遽大工を手配する必要があった。水戸さんはこうした予想外の事態に備えて、怪しい現場の時は事前に職人に声掛けをしてある。
「現場調査で危ないなと思った時は、何か起きた時に頼れる職人さんへ『こんな現場があるのでもしかしたら』と、あらかじめ日程と内容を相談しています」と水戸さん。
すると、職人もある程度準備をしていてくれるので、スムーズに対応できる。気にかけておけるため、先に情報を聞いておけた方が職人としても安心だという。この現場でも、すぐに対応できたため、問題なく工事が進められた。
水戸さんは普段から誰とでも分け隔てなく接することを意識している。職人とも休憩時にお互いにプライベートの話をしたり、愚痴を聞いたりと、日常の中でこまめに言葉を交わす。こうした何気ないふれあいで、自然と良好な関係を築けている。
施主の無茶な要望にも「そうだよね」とまず共感
水戸さんが営業で難しいと感じているのは、周りをコントロールすることだ。施主と業者、それぞれの考えや状況を汲み取り、判断すること。
施主から無茶な要望を言われた時でも、水戸さんはまず「そうですよね」と、自分がクッションになり一度受け止める。その後、職人や業者へ共有する際に気をつけているのが、一方的に任せて投げっぱなしにしないことだ。
「職人さんたちは、皆大変な思いをして一生懸命やってくれています。やってもらって当たり前、の考えはせず、自分も一緒に考えます」と、常に自分自身も向き合う姿勢を崩さない。
職人からも「あなたが間にいるからお客さまと喧嘩にならずに済んでいるよ」と言われる水戸さん。こうした一言が、しんどい時でも支えになっているという。
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経験不足をカタログ熟読で補う
そんな水戸さんの目下の目標は、知識力の向上だ。経験数を蓄えるには時間が必要だが、その分メーカーカタログから情報を補っている。
商品に関する知識収集はもちろん、特にトラブルの原因になりうる施工の注意点や、収まりに関わる部分を熟読している。例えば、設備の設置のために専用の配線が必要なのか、配置に必要なスペースはどれくらいなのか。
「書いてあるのに知らなかった、だとお客様への説得力も落ちてしまいます。経験不足だからこそ、得られる情報は身につけたいと思います」と水戸さん。手直しがなく、工期通りに終わらせられる。職人にも施主にも満足してもらえる現場にしたい、と話す。
▲水戸さん愛用のアイテム。PC、iPad、スケール、筆記用具。iPadは現場調査の際、図面への書き込みや写真データの共有が手軽にできて効率的だ。複数あるスケールは室内用と室外用で使い分ける。愛用しているハンドクリームは、いい香りで癒しになっている。
思い出を残したキッチン
水戸さんが強く印象に残っていると話す初めて1人で受注できた事例。
施主・父・子どもの3人暮らしで、亡くなった母が大切にしていたキッチンのリフォーム依頼だった。
家族の思い入れが強く、何度も打ち合わせを重ね、20以上のプランを作成。使い勝手を考慮し、大部分の壁タイルはパネルに貼り替えたが「思い出も大事にしよう」と、一部だけ残した。完成後、施主は愛着が湧きすぎてキッチンから出られない、というほどの喜びようだった。
親身になってくれる水戸さんの人柄に惹かれた施主から「数年後にはお風呂をリフォームしたいから、その時も水戸さんが担当してね」と嬉しい言葉をもらった。
リフォマガ2023年6月号掲載