「俳句初心講座」
https://note.com/uni_do_fu0723/n/n22a46f258d06 【kitchenと詠む、「俳句初心講座」】より
1.俳句とは
俳句とは5・7・5の計17音から成る短い詩の一つです。その短さは世界一と言われており、リズムの良さから古くより親しまれています。
…wikiみたいな説明はこんなもんで良いですかね。
俳句は『季節を楽しむもの』
17音の中に必ず『季語』と呼ばれるその季節を感じられる言葉を唯一つ入れる事で、その季語の持つ、季節の雰囲気を味わうことが出来るのが一番の魅力です。
しかし一方で、俳句が難しそうと言う皆さんは揃って「季語がわからない」と言います。俳句を始めて間もない間は逆で考えると良いでしょう。
つまり「季語から季節を詠む」のではなく、「季節を詠む為に季語を探す」という順序です。
イメージしてみて下さい、あなたがシャワーを浴びて出てきた時、
「冬の朝、シャワーだけ浴びて出てきた時の洗面所」
「夏の昼、シャワーで汗を流して出てきた後のクーラーのかかったリビング」
では肌にイメージする感覚は全く別物です。行動だけ見れば同じ「シャワー上がり」でも、2つの情景を思い浮かべると、前者だけ身震いしてしまいませんか?
後者は何なら気持ち良いだけです。
この2つの情景を読み分ける。そしてそれぞれの季節を味わう。その為に俳句の季語があると思って下さい。
この場合、正直季語は自分のピンと来るものでいいです。何なら「冬の朝」でも季語の役割は十二分に果たしていると思います。
「あなたが感じたこの肌寒さを表現する事」
が最優先の目標なのです。良い季語とは、つまりそれをより的確に、味わい深く表現する為の物に過ぎません。
より雰囲気の合う季語/表現を探す事で自分なりに深みを出す事が出来るのは事実ですが、それは少し先の、背伸びをした話です。
まず詠む、そして推敲する
これもよくある事なのですが、いきなり詠みたい情景を、一発で17音に当てはめる必要はありません。
むしろ詠みたい要素/入れたい情報を列挙していき、その中から必要なものを集めて最後に17音にまとめるイメージが一番取っ付きやすいでしょう。
例を実演してみます。
先ほどのシャワーの例を考えます。冬の朝シャワー上がり、考える事といえば以下のように挙げられるでしょう。
「冬の朝シャワー」「入る前より寒く感じる」「洗面所の冷気キツい」「体をちゃんと拭かないと余計寒い」「でも服着たらじんわりと暖かいな」
この中から使う要素を選んで、これらの情景に合う季語を探してみます。
今回は探した結果、朝寒(あさざむ)という晩秋の季語を使ってみようと思います。
・「朝シャワーって入れづらいな、朝風呂でも良いかも」
・「この時期の冷気って刺すような表現かも」
・「服が朝寒から身を守る的な詠み方も良いな」
・「洗面所、ってちょっと漢字多めで無機質に見えて、冷たく感じられそうだな」
と、連想ゲームのように使えそうな表現の幅を広げていきます。
そして、
「朝寒、風呂上がり、刺さるような寒さの洗面所」
のように、使う要素を確定させたら17音にまとまるよう言葉を並べ替えて考えます。
最終的に
「風呂上がり朝寒襲う洗面所」
「風呂上がり朝寒刺さる洗面所」
「風呂上がり朝寒増して洗面所」
のように朝寒の後の言葉をいろいろ考えていますが17音の形にまとめられました。後は好きなものを選ぶのみです。
今回の完成形は
「風呂上がり朝寒刺さる洗面所」
としました。(ちなみに風呂もまた季語なのですが、そこの議論はまた別の場で…)
このようにして1句を作り上げていくイメージです。
ここまで見てもらえば分かるように、初めは季語に囚われず、自分の感じた季節感を短い要素で書き出し、それに合いそうな季語を後から探す。という詠み方でも問題無いと思います。
大事な事はまず要素を書き出して詠んでみる。違和感や文字の過不足は後から修正すれば良いのです。
初心者の守るべきルールを覚えよう
ここまで俳句の作り方を簡単にお話ししてきましたが、とはいえ俳句は定型詩の一つ、守るべきルールも存在します。ここでは「有季定型」とも呼ばれる、2つの初めたての人が守るべきルールを紹介します。
5・7・5を守る 季語を1つだけ使う
5・7・5を守る
皆さん、俳句といえば「字余り/字足らず/破調/自由律」なんて技術があるのは何となく知っていると思います。
要は俳句の肝である5・7・5のリズムを崩す事で、違った間や余韻を残し、新鮮なイメージを読み手に残す事が出来る技術の一つです。
ただし、これかなりの上級テクである事を覚えておいて下さい。俳句の良さである「リズム感/テンポ感」を敢えて削っているので、その時点で俳句として「マイナスからのスタート」となります。
これらの技術は詠み手にかなり強いポジティブな意図がある場合でないと、ほとんど失敗に終わります。
「どうしても字数が減らせない」程度の根拠で字余りはしないようにしましょう。(1敗)
余談ですが、「字余り/字足らず」をどこで使うかによってマイナス度合いが違います。
軽症で済むのは上六と言われる「6・7・5」のケースです
(それでもかなりのマイナスですが)
ちなみに、最も重症は中八(5・8・5)です。禁忌レベルのマイナスを被ると覚えておいて下さい。とにかく、5・7・5で詠んでねって事です。
季語を1つだけ使う
俳句は1つの季語を用いる事で、その季語の持つ季節感を味わうのが醍醐味。
つまり冬っぽいものを2つ並べたら、季語1つの持つ季節感が薄れてしまいます。
もし別の季節の季語が入ってしまった日には、それは季語界におけるコンタミと言えるでしょう。この記事で読むはずない「コンタミ」という言葉にゾクッと来た理系の皆さん、実生活でコンタミしたくなかったら季語は1つだけ使って下さい。という訳で、まず守るべき2つのルールについての紹介でした。
逆に言えば、始めたての人はこの2つが守れていればそこまで変な俳句になる事はありません。安心して詠んで下さい。
俳句の2つの詠み方を知ろう
俳句の作り方は、大きく2つに分けられます。それが一物(一物仕立/いちぶつ)と二物(二物衝撃/にぶつ)になります。
簡単に言えば、「季語を1つだけとことん詠み切ったら一物」「季語と別の物を対比させて詠んだら二物」と覚えて貰えれば十分です。
さっきの朝寒の句は、風呂を入れているので二物ですね。
それぞれ簡単に紹介していきます。
・季語を研究しまくって作る一物
ここでは、俳句としての作り方に焦点を当て、実際の句にまでする事は割愛します。
例えば「桜」に焦点を当てます
「桜、きれい」「桜、ピンク」「桜、でも意外と白っぽいな」「桜、散ったら色が濃く見える」「桜、太陽で透けるとより白く見える」
先程同様、連想ゲームのように桜を見た感想を並べていきます。ここで重要な事は「今まで気にした事がなかった事象に特に意識を置く」事だと思います。
桜=ピンクのイメージが強いですが、実際見てみると染井吉野などはかなり白っぽいです。そういった実際に発見出来た物事について、その発見を句にしようとする事が一物の作り方です。
そして、「太陽でより白い桜、落ちると濃く見える」のように使う要素を選んで、後は句にまとめます。(句作は一旦割愛させてもらいます)
・コントラストが鍵の二物
一物に対して二物は詠むべき季語と遠過ぎず近過ぎない別の物を引っ張ってくる必要があり、この取り合わせの目新しさ、対比の面白さを楽しむ詠み方となっています。
二物の詠み方は至ってシンプルです。
連想ゲームで広げるやり方ではなく、「ただその場にある2つをピックアップするだけ」です。どちらかと言えば水平思考寄りですね。
先程の「桜」をテーマにするなら「桜とブランコ」「桜と滑り台」「桜と子供」「桜と緑茶」「桜と五平餅」etc…このように、何でも良いので取り合わせを見つけて、自分が面白いと思った取り合わせについて詠んでみる方法が二物の最も簡単な詠み方と思われます。
二物は一物と違いメリットデメリットがかなりはっきりしています。
メリットは
・誰でも簡単に新鮮な句を作れる・一句作る為の労力が少ない(コスパが良い)
・句作に詰まらない
デメリットは
・季語の季節感を奪う恐れがある・気付かずに季語を2つ使う恐れがあると言った所でしょうか。(ちなみに、先程の例で言うと実はブランコは春の季語なので、季語を2つ使ってしまいアウトです。気付いたかな?)
デメリットにさえ気をつければ、比較的一物より詠みやすいイメージがあります。(1日吟行して作った句が全て二物、なんて日も…)
以上、一物と二物という俳句の種類の紹介でした。俳句を作る一つのコツになるかと思われます。
切れ字を使おう
切れ字とは、句切れ(5・7・5のそれぞれの最後の部分)に使う事で様々な効果をもたらす技法です。例えば・次の句へのリズム感を強調し、対比をはっきりさせる・切れ字を上五に使い、強制的に映像を切り替える・詠嘆する事でその物の持つ深みを強調するなんて効果を持っていたりします。
現代で使われる切れ字は「や(上の句で使う)」「かな(末尾で使う)」「けり(末尾で使う)」
の3つが挙げられます。
他にも、僕は「や」程の強い詠嘆をしたく無い時や末尾に1文字で詠嘆したい時に「よ」を切れ字として使いますが、あまり知ったような口を利くのも危ないので、一旦この3つを使うことをおすすめします。
松尾芭蕉の有名な句で「古池や蛙飛び込む水の音」とありますが、これが名句と言われる理由は「蛙」という季語に対して「古池や」と詠む事で、読み手に「寂れた古池の映像」を中七に入る前に目一杯イメージさせてから、飛び込むカエルに視線を向けさせ、最後にその水音をイメージさせるという「視点/映像の切り替え」が鮮やかである所がよく挙げられています。
やや難しく話のように感じますが、初心者が使いやすいケースは「二物の上五に『物+や』」「二物の下五に『物+かな』」のパターンです。
季語とのコントラストを意識する二物において手軽に試せるパターンですので、試しに使ってみて下さい。
さて、以上で俳句における基本の詠み方と覚えておきたいルール、一物/二物/切れ字について紹介していきました。次はいよいよ実践方法です。
2.俳句をカジュアルに楽しむ 現代人に合った詠み方
皆さん、俳句を詠むと言ったらどんな光景を思い浮かべますか?
「筆」「短冊」「扇子」「畳」「歳時記」「抹茶」「よう分からん頭巾」みたいなイメージ、ありませんか?
このような俳句の詠み方も無くは無いのでしょうが、我々現代人には似つかわしくありません。現代人なら俳句を詠む際に使うものは最小限2つあれば十分です。
そう、「メモアプリ」と「Google」です。
少し知っている人なら、俳句を詠む際には『歳時記』という季語がたくさん載った本が必要なのではないか?と思うかもしれませんが、初めから歳時記を買う、というのも中々ハードルが高いものです。
正直、自分の言いたい風景や物を季語で何と言えるのか探すだけなら、Googleに入れる方がよっぽど早いです。
メモアプリに関しても、本来俳句を詠む際はノートに書く事の方が多いのですが、「ノートが無くて俳句が詠めない」では本末転倒です。先程のように詠みたい景色を短文で表現するならメモアプリで十分でしょう。つまり、現代人が俳句を詠む為には、スマホさえ持っていれば良いのです。便利な世の中ですね。
・スマホでの季語の調べ方
先程の「朝寒」を調べた方法です。3秒クッキング以上です。…こんなので良いのかって?十分です。詠みたい情景 季語」で検索をかければ、使えそうな季語がゴロゴロ転がっています。先程も述べたように、あなたが詠みたい情景を詠む事が最優先です。季語を見つけた経緯は17音に透けませんので。
まず、外に出かけよう
俳句及び句会のフォーマットは実は様々です。この中で恐らく最もやりやすいフォーマットが「当季雑詠(とうきざつえい)」と呼ばれる形式です。
これはつまり、「今の季節に関する季語なら何でも良いよ〜」
という意味です。裏を返すと「今の季節に関わり無いものは詠まないでね」という意味でもあります。当季雑詠はその季節ならではの体験を詠むことが出来るので句作のヒントが生まれやすい、初心者におすすめのフォーマットです。
では、当季雑詠する為にはどうすれば良いか?お外に行きましょう。…「表出ろやボケェ!」って意味でなく、文字通り外に出てお散歩する事が当季雑詠の最も良い取り組み方です。
外に出ることで普段注意して見ないような物が句作のヒントになります。思いがけない所に二物のヒントが転がっていたりするのです。(以前ゴミ箱からはみ出た、「空き缶のプルタブ」で詠んだ事もありました)日常を注意深く観察する事って思った以上に面白いのです。
まず外に出る。これが俳句を作るコツです。普段に比べてアクションを起こす
さて、これを読んでいる頃、皆さんは先程の内容から既に外に出かけているでしょう。冗談です。先述の二物句のコツです。外に出かけたらアクションを起こして下さい。なんでも良いのです。例えば「海→足だけ浸かる」「ブランコ→乗ってみる、靴飛ばしてみる」「しんどそうな坂→全力で駆け上がる」「缶のおしるこ→2本目を買ってみる」普段取らないような行動でも良いのです。初めて体験するからこそ気付く事もあります。その気付きは俳句において、とても貴重と覚えておいて下さい。
メモをきちんと取ろう
特に先程のようにアクションを起こした時の気付きに有効です。
いきなり俳句にするのではなく、先述の通り短文で要素を書き出しておくのです。
俳句にする作業は後から出来ます。その瞬間の新鮮な気付きを後から思い出せるよう、なるべく的確にメモを取ってみましょう。
結局使われない要素であったとしても全て残しておきましょう。物事への気付きは、経験値として自分の中に残ります。以上、俳句の取り組み方の紹介でした。
次は一般的に意識されている手法について、自分の体感も合わせてお話ししていきます。
(注:いきなり考えるのは難しい内容が続きます。句作中意識出来なくても問題ないので、「へーそうなんだー」くらいで読んでください)
3.自分の俳句を詠む為に
その言葉、必要ですか?「雨が降る」「メダカが泳ぐ」「寒さ感じる」
逆に「降らない雨/泳がないメダカ/感じない寒さ」を見せてみやがれというお話です。
俳句はどう頑張っても17音、これらの動詞はたった2、3音ですが、削った事で新たな情報を入れる事も出来ます。
例えば「雨強く」と言えば「雨が強くなっている」様を表せます。
「迷うメダカ」なら「迷っているようにフラフラと方向を変え泳ぐメダカ」をイメージさせた上、上記より1音減らせます。先程の朝寒の句でも、寒さが「刺さる」と表現しました。
動詞/形容詞が句の中に必要かどうかは「(動詞/形容詞)でない○○」の存在を考える事がポイントです。これが存在しない/想像しづらいなら、それはいらない動詞/形容詞であるということになります。
17音でオチをつけろ
下五に起承転結の結を持ってくる事で収まりを良くする手法があります。(あくまで手法の一つです)例えば以下のような句がありました。「秋田犬跡なき雪に飛び込んで」
イメージしてみて下さい。友達との会話で「犬がさ、跡一つ無い雪の中に飛び込んだんだよね〜」と言ったらどうなるでしょう。多分、「…それで?」と言われます。
この話の順序では会話のオチが無いのです。この会話にある程度のオトし所を作るなら、
「この前の旅行先、跡一つ無い雪景色が綺麗だったんだよね!興奮して雪に飛び込んだ奴が居たくらい!」「それは凄い、命知らずな人だな。」「ポチって言うんだけどね、」「人ちゃうんかい」とでも話せば、会話のオチは着きそうです。
俳句も同じように、下五でオチをつけるように詠むと良いでしょう。
中七までで惹きつけられて、下五でストンと落とされると読み手の印象にも残りやすく、映像もイメージされやすいです。
先程の句で言うと、「飛び込んで雪にひと穴秋田犬」「秋田犬」と「飛び込み」の位置を入れ替えてみました。
中七まで読むと「飛び込んでぽっかりと雪にひと穴出来ている」景色が、下五まで読むと「そこから顔を見せる秋田犬」がようやく見えて来るのではないでしょうか。
このように、その句のオチとなりそうなワードを最後に持ってくる事で、読み手を惹きつけられる、面白い俳句になる事があります。試してみて下さい。
子季語でオリジナルの味付けを
季語には、実は「親と子」と呼ばれる関係性があります。ある季語の派生形がある場合、
派生先を「子季語(こきご)」派生元を「親季語(おやきご)」とそれぞれ呼びます。
(親季語は単に季語とも呼ばれます)
では、先程詠んだ句を今一度見てみましょう。「飛び込んで雪にひと穴秋田犬」
注目すべきは「雪」という季語、イメージしやすいですが、実は雪の子季語を調べてみると
六花、雪の花、雪の声、深雪、雪明り、粉雪、細雪、小米雪、餅雪、衾雪、今朝の雪、根雪、積雪、べと雪、雪紐、筒雪、冠雪、雪庇、水雪、雪華、雪片、しまり雪、ざらめ雪、湿雪、雪月夜、雪景色、暮雪、雪国、銀化、雪空、白雪、明の雪、新雪
『きごさい歳時記』(URL:kigosai.sub.jp)より
どんだけあんねん。それだけ多くの人が詠んできた季語という事です。目新しさもへったくれもありません。
そこでこの句の季語である雪を、イメージの合う自分好みの子季語に置き換えてみましょう。
今回選ばれた子季語は「餅雪」です。
いつものこれを用いてこのように詠み直してみました。「餅雪に飛んでひと穴秋田犬」
雪という季語に比べ、餅雪のふわふわ感が加わった事で「秋田犬のふわふわとした毛並み」と取り合わせが良くなったように思われます。
書き方で雰囲気を変えよう
おーさむぷれー オーサムプレー 𝑨𝑾𝑬𝑺𝑶𝑴𝑬 𝑷𝑳𝑨𝒀
文章や文字は表記を変えると雰囲気が変わりますよね。
俳句も同じで、敢えてひらがな表記やカタカナ表記を取り入れると出したい雰囲気を強調する事が出来ます。さらに先程の句を用います。
「餅雪に飛んでひと穴秋田犬」
ふわふわ感を出したい、という目標があったのですがどうでしょう。
「穴秋田犬」の部分です。漢字が並び過ぎて、ちょっと固く見えますよね。
そこで「秋田犬」を「あきたいぬ」と表記してみましょう
「餅雪に飛んでひと穴あきたいぬ」
「あ」「い」「ぬ」が俳句に加わった事で俳句に丸みが出て来ました。
何というか、「わんっ!」って感じがしませんか?
このように表記に拘ると、より自分の出したい色が見せられる可能性があります。特に「漢字が多いと固い」「ひらがなが多いと柔らかい」イメージは是非活用してみて下さい。
(では「もち雪」はどうでしょう。
是非考えてみて下さい。ここは人によって分かれそうですが、私は敢えて「餅雪」とします)
さて、まだ読めてる人は居るのでしょうか。説明パートを終えて8000字を突破しました。
アドカレ係に「多くて5000文字」と言ったのはどこの誰でしょうか。ここまで説明した事の中で1つ2つ使えたら、もう俳人の仲間入りです。忘れてしまっても仕方ありません。その時は上から太文字の見出しだけ拾い読みしてみて下さい。
次はいよいよ、実際に俳句を詠んだことのない初心者5人と私で吟行句会(散歩しながら俳句を詠む会)をした記録を残していきます。
どうなるのでしょうか、ここの執筆時点で翌日なので、かなり楽しみです。それでは、続きをどうぞ。
オタク6人、初冬の吟行句会へ
日は11月も下旬、この日私哲大はKBD内から選りすぐりの「こいつに俳句を詠ませてみたい」という人を募っていた。
場所は横浜みなとみらい、ここから海の見える臨港パーク、遊園地、赤レンガ倉庫を通り横浜中華街まで歩きながら俳句のヒントを貰っていく予定だ。
みなとみらい駅のエスカレーターを登ると、やきとり1とりんがいた。(略)
句会のルール説明
ここで一般的な吟行句会の進行を紹介しようと思う。大まかに分けると以下のようになる。
・投句・清書・選句・点盛り・講評
投句
まず、今回のような吟行句会では句会前に句作時間を設けることがある。今回はHUB到着から1時間の句作時間を取った。
句会では作った俳句を自作の短冊に書いて提出する。(今回はA4のコピー用紙を細長く8等分にして作成した)
清書
さて、集まった短冊を全員に混ぜて分配する。
そして自分の手元に来た俳句を清書用の紙(今回はルーズリーフ)に一句ずつ正しく清書する。
こうする事で、誰の作品か分からなくする目的がある。
誰の作品か分からない方が色眼鏡が入る事なくその句を見られるので、清書中も「誰の字だろう…」とかは全く考えず、無心で清書する。
清書が終わったらそれぞれの紙に通し番号を付ける。今回は4枚に清書したので1〜4と書いておく。「どの紙に書いてあったこの句が良かった!」と覚えておかないと選句時にめちゃくちゃやりにくい。
以下は今回の投句一覧です、是非一度この中から3句程良いなと思った句を選んでみてください。あなたの選んだ俳句が実際の参加者と一致しているのか楽しむのもまた一興。
本日の投句一覧
1枚目
昼火事も野焼けと覚ゆ晴散歩 橋の上小春の強風髪荒(あら)れ
初冬(はつふゆ)に鶏排(ジーパイ)を抱えて笑顔 冬うらら点々として赤白帽
穏やかな波につどいし冬の鳥 枯れ芝や寝そべるシャツはああ悲劇
肌寒よ気持ち同じく虹、我が身 木枯らしに刺されて寄せる人の波
踊り子と見紛うそれは枯れ葉かな 試験過ぎ快晴眺む小春日や
2枚目
小春ゆえ留守を預かる一張羅 在りし機種触れつ叩きつ肌荒るる
雲ひとつなくてワロタ小春空 うそ寒や石碑に当てた手のひらに
船荷積む勤労感謝クレーン車 冬麗(とうれい)や紅茶の冷えが和らいで
吹きつける風快(こころよ)し小春かな 空高く冷たく光る冬の月
木枯らしに千円の夢塵と化す
3枚目
のっぺりと絨毯の見掛けさざなみに 冬温し枯れたる芝を踏みつける
立冬や彫刻の影ひえひえと 中華街友の揚物貰いつつ
小春日が嘲笑うやう重装備 ぽかぽかでワロタハトちゃん水浴びちゃう
秋の暮手狭に覚ゆミニ木馬 雲のようゴンドラ回る小春空
冬草に転がりて照る日輪よ
4枚目
空っ風観覧車を揺らし遊ぶ やわ豆腐痺れ極まり実山椒
冬うらら大の字の野郎が二匹 潤いし冬苺にも甘衣(あまごろも)
黙々と煮込み頬張る冬隣(ふゆどなり) 牌楼(パイロウ)に似て騒がしい師走かな
枯れ芝もこども心で芽吹かせる 肉包(ローパオ)の湯気奪うやう乾(から)っ風
誰(たれ)そ燃ゆ線香かほる冬隣(ふゆどなり) 観覧車人が枯葉か逆ムスカ
逆ムスカと、よりふじの亡霊が2体程居ます。
選句
ここまで終わったらいよいよ選句開始、清書した紙を回しながら、「良いな」と思った作品を手当たり次第にスマホにメモっていく(この時通し番号も一緒に書く!)
くれぐれも自分の作品を選ばないこと(最大限の他人への煽りになるので要注意)
1周したら、メモった作品の中から規定句数になるまで絞る。(今回は7句選、哲大のみ主催として9句選の許可を頂きました)
最後に、選句の中なら1句、特選句を選定します。この特選句はつまり、その人がその日一番良いと思った俳句なのでとても価値がありますね。
(こちらも哲大のみ2句選の許可を頂きました)
点盛り
どの句を選んだかの発表の場です。
紙に書いた通し番号の順番に、選んだ俳句を発表して行きます。例えば
「並選です、1番、〜〜〜、〜〜〜、2番、〜〜〜、…最後に特選句です、3番、〜〜〜」
このようにまず特選でない選句を発表し、最後に特選句を発表するのが通例です。
この時、清書した紙を参加者に1枚ずつ振り分け、自分の手元にある紙の中から選句されたら選者のマークをその俳句の上に書きます。
(哲大の選句なら選んだ句の上に「哲」の1文字を書く)
全員の選句が終わり、選句を表すマークが全員分揃ったら点数集計、今回は並選1点、特選3点として集計を行いました。
そして規定点数以上の俳句について全員で講評を行います。
今回は2点以上の句が11句と丁度良い量だったので2点以上としました。
実録!はじめての句会音声!
ここから講評と入りますが、これは見てもらった方が早い。
という事で、各講評句ごとの実際の音声データと可能な限りの文字起こしをしてみました。
読むだけで実際の句会の雰囲気が分かるので、気になった俳句だけでも読んでみて下さい。
講評一覧
まずはペンネーム発表
(略)
この記事を通して
最後に、ここまで長文でしたがありがとうございました。少しでも俳句の世界をご紹介出来たのなら、頑張って書いた甲斐がありました。
今回の参加者も言ってくれていますが、俳句って「何でもないはずの事に気付ける」んです。その気付きって大事で、何も思わないはずの日々に少しだけアクセントが生まれるのです。
「もう一枚着てくれば良かった」「あそこのラーメン激アツだったな」「日差しが気持ち良い」そんな事ですら日々の気付きとして思い出に残れば、まさしく毎日がたった一日しかない特別な日にだって出来ます。
僕は俳句を初めてからそんな意識を持つようになって、何でもない日々が楽しくなった人間です。これからもそういった楽しさを皆さんと共有出来たらな、と思っております。
今回、この記事を読んで、少しでも俳句に興味が湧いたそこのあなた。一緒に17音で日々の気付きを綴ってみませんか?
何より自分の句が褒められるのって、結構嬉しいのです。体験してみて下さい。
参加希望等はいつでも、ご連絡等お待ちしております。次回の句会は春頃、新入生からOBOGまで幅広く歓迎しております。
それでは、俳句の世界でお待ちしております。
永遠の初心者俳人、哲大がお送り致しました。