過敏性腸症候群の治療①:事務局便り#8
過敏性腸症候群の治療の流れ
*動画とブログの中身は同じです。
本日の内容は、過敏性腸症候群の治療についての第1回目です。治療については、何回かに分けて説明していきます。
今回は診断、そして第1段階~第3段階に至るまでの治療の流れを、診療ガイドライン(※1)に沿って説明します。
過敏性腸症候群の治療は、図のように段階を追って行われます。まず、第2回でも説明したように、ほかの病気がないことを確認して、過敏性腸症候群と診断されたら治療が始まります。
このとき、病気について充分に説明することも治療の一部です。症状があるのに検査で異常が見つからないと、不安になることがありますが、病気の特徴を理解することで不安を減らすことができます。
また、しっかりした説明は信頼関係を高め、治療効果や満足度にも影響します(※2)。
残念ながら、この説明が不充分なまま治療が行われていることも少なくありません。第一段階として、まずは食事や生活習慣の改善を試みます。
それでも症状が改善しない場合に薬物治療が勧められますが、実際には、食事や生活習慣に対する指導は簡単なものにとどまり、診断と同時に薬が処方されます。この理由については次回触れていきます。
薬物治療で改善が見られれば、薬を続けるか、減らすか、一旦中止して経過を見るかを主治医と相談します。
第一段階の薬物治療の効果が不十分な場合は、第二段階として抗うつ薬や抗不安薬などの脳に働く薬や、簡易精神療法などが次の治療候補となります。
内科医はこれらの治療に慣れていないことも多く、副作用なども考えると精神科や心療内科での診察が勧められます。しかし、過敏性腸症候群のヒトを適切に診察できる、精神科や心療内科の紹介先を見つけることは簡単ではありません。
第2段階の治療でも改善せず、心理的ストレスが大きく関与する場合は心理療法が勧められますが、保険が適用されないことや効果が明確でないこと、そもそも提供している病院がほとんどないことから、紹介は非常に困難です。
このように、診療ガイドラインで推奨されている治療が、臨床ではまだ充分に普及していないというのが、過敏性腸症候群の治療の特徴です。
次回は、食事指導について、問題点も含めて説明したいと思います。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成
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集英社プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】を連載中です。第10回および第11回は過敏性腸症候群についてです。
※1 過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドライン2020 日本消化器病学会 公開日:2020年7月15日
※2 Dhaliwal, S. K. and R. H. Hunt (2004). "Doctor-patient interaction for irritable bowel syndrome in primary care: a systematic perspective." Eur J Gastroenterol Hepatol 16(11): 1161-1166.