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「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 物語の世界を巧みに取り入れた構成に感動

2024.04.23 22:00

「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 物語の世界を巧みに取り入れた構成に感動


 毎週水曜日は、大河ドラマ「光る君へ」について、本当に身勝手なことを書いている。撮影とも政策とも何の関係もないので、一視聴者として、本当に好きなことを、製作者の苦労も全く顧みることもなく、勝手に評論することは本当に気楽でよいことである。しかし、本来は制作をするということは、並々ならぬ苦労がありなおかつ様々なことを考えながら作品を作っているのであろう。また、今回の「光る君へ」はそのような意味でなかなか面白く、そのような制作の妙を楽しませてくれる作品になっているような気がする。

さて今回は二つの事ストーリーであろう。一つは、疫病の流れ、そしてもう一つは皇室一条天皇(塩野瑛久さん)と定子中宮(高畑充希さん)の世界ということになる。定子中宮は、非常に文学於素養があり、その相手をでいるということで清少納言(ファーストサマーウイカさん)が女房に選ばれたということが今までのストーリーである。その清少納言が後に執筆するのが「枕草子」である。

当然に、これらの作品に関しては、その前に持の辺りや随筆があるわけではないので、この時代の女流作家や貴族の日記は、全て自分の思ったことや体験したことを基にかかれている内容であると言ことから、枕草子の有名な一説「香炉峰の雪」もその題材があったのであろうということになる。その題材は、定子中宮が行ったことをそのまま清少納言が枕草子に残したという設定にしている。

さて「香炉峰の雪」とは、中国江西省北端にある廬山の一峰の事を言う。形が香炉に似ることからそのような名前になっていて、中国の詩人白居易の「香炉峰の雪は簾すだれをかかげてみる」という詩が有名である。これは、政争に巻き込まれて現在の江西省九きゅう江こう市に左遷された白居易は、そこでの自然に囲まれて落ち着いた暮らしを、「香炉峰の雪は簾を撥げて看る(近くにそびえる香炉峰という山の雪景色を、寝室でくつろぎながら、すだれを高くはね上げて見る)」とうたったことで有名になる。

「枕草子―二九九」には、御所に雪が積もった日に、清少納言が中宮定子から「香炉峰の雪いかならん」と問われて、御簾を高く上げてその詩句にならったという話があり、清少納言の機知を伝えるものとして知られているのであるが、そのシーンがそのまま大河ドラマで演じられた。なお「香炉峰の雪」とは現在では、「女性が機知に富んでいることのたとえ」として使われる。

枕草子のファンにはたまらないシーンとなったのであろう。

「光る君へ」実写化ネット反響「香炉峰の雪」とは?「感無量 まさか大河で」定子&清少納言「枕草子」一節

 女優の吉高由里子(35)が主演を務めるNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)は21日、第16話が放送され、清少納言の随筆「枕草子」の有名な一節「香炉峰の雪」が描かれ、インターネット上で話題を集めた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石静氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。

 第16話は「華の影」。近江・石山寺からの帰路。まひろ(吉高由里子)は図らずも、さわ(野村麻純)を傷つけていることを知り、落胆。後宮に藤原伊周(三浦翔平)や藤原隆家(竜星涼)らが集って賑わう中、藤原詮子(吉田羊)が現れ、一条天皇(塩野瑛久)らに緊張が走る。その頃、都は疫病が蔓延。ある日、たね(竹澤咲子)がまひろを訪ね、悲田院に行った父母が戻らないと助けを求める。悲田院に向かった目にしたのは…という展開。

 年が明けた正暦5年(994年)、雪の積もった内裏・登華殿。藤原定子(高畑充希)は何をして遊ぼうかと思案し「少納言、香炉峰の雪はいかがであろうか」と問い掛け。ききょう(ファーストサマーウイカ)はハッと何かに気づくと「御簾を」と女房たちに指示し、自らも御簾を巻き上げる。「どうぞ、お近くで」。雪化粧した庭が眼前に広がった。

 藤原公任(町田啓太)「流石、中宮様。見事な問い掛けでした」

 隆家「何のこと?」

 公任「白楽天の詩でございますな。『香炉峰の雪は簾(すだれ)を撥(かか)げて看る』

 定子「少納言、見事であった」

 ききょう「中宮様のお問い掛けにお応えでき、ホッといたしました。いつもこのように参るかどうか分かりませぬが」

 定子「そうだわ、お上。今日は雪遊びにいたしません?」

 各々が雪の山を作るなど、愉快な一時を過ごした。

 「香炉峰の雪」とは、現在の江西省九江市に左遷された唐の詩人・白居易(白楽天)が自然に囲まれた暮らし、名勝・廬山を詠んだ一節「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」のこと。清少納言の「枕草子」の第二八〇段(第二九九段とも)「雪のいと高う降りたるを」には「香炉峰の雪」をめぐる定子とのやり取りがある。

 雪が積もったある日、定子は「香炉峰の雪はどうであろうか」と問い掛け。清少納言は機転を利かし、白居易のように御簾を高く巻き上げ、雪が見えるようにした。転じて、機知に富む例えにも。

 SNS上には「香炉峰の雪。鳥肌が立った」「実写化を見られる日がくるなんて(涙)。感無量」「まさか大河で香炉峰を聞き見ることができるとは」「香炉峰の雪のシーンの美しさたるや、タメ息が出ちゃった」などの声が続出。反響を呼んだ。

 次回は第17話「うつろい」(4月28日)が放送される。「衆院補選・開票速報」のため、本放送(総合)は通常より10分繰り下げの午後8時10分開始となる。

[ 2024年4月21日 20:45 ] スポニチアネックス

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/04/21/kiji/20240420s00041000632000c.html

 さて、もう一つの今回の流れは京都の疫病が入り、その疫病に対応するということが問題になる。関白藤原道隆(井浦新さん)は、「この病は貧しいものに掛かる」として全く相手にしないが、一条天皇は対応するように促すということになる。この辺が藤原道隆と一条天皇の確執が出ているということになり、後に道隆が「伊周(三浦翔平さん)を関白に」と言っても、一条天皇がそれを全く認めなかったということにつながる所うまく伏線にしている。

 その疫病患者の中にまひろ(吉高由里子さん)が文字を教えていた子供が訪ねてくる。そしてその父母が疫病にかかったということを知らされ、病人が集まる悲田院にまひろが看病に行くというストーリーである。なお悲田院とは、寺院などに付属して,孤児や病者・貧窮者を収容・救済した施設の事を言うが、疫病にかかった人は、その場ですぐに埋葬され、他の人への感染を防ぐ役目にもなっていた。このような施設は後にもらい病患者などが集まる場所として一遍上人絵伝などに書かれているが、基本的に死を待つ場所として隔離される場所である。

そのような場所にいれば当然いまひろも感染してしまうし、そこに、「よごれやく」とした藤原道兼(玉置玲央さん)が視察に行くという。なお、歴史の教科書などでは、「平安時代には施薬院別院として東西悲田院があり,貧窮者を救済するとともに京内の死体埋葬などを行った。預僧・預・乳母などの職員がおり,運営には藤原氏の封戸があてられた。」とあるので、藤原道兼が出かけて行っても特におかしいことはない。ただし、この物語は「疫病に対応しない」という藤原道隆と、疫病を積極的に視察に行く道兼、そしてそこでまひろを探し出して看病する道長(柄本佑さん)という三兄弟の対比が書かれている。そしてその道隆の一族は徐々に天皇の信頼を失い、道兼はこののちに疫病にかかって早々に世を去り、そして道長の天下になり、まひろがそこに深く絡む。

そのまひろの存在を、妻である源倫子が気づき、ほくそ笑むというような展開になっている。こののちの複製んが大きくちりばめられていながら、同時に、当時の物語の世界を巧みに使い、演出に使っているというおもしろさは、やはり制作人の平安時代の物語を読みつくしている苦労の結晶なのかもしれない。しかし、その苦労を見せずにうまく演出にしているところが心憎いところでもある。