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富士の高嶺から見渡せば

ウイグル強制収容所の暴かれた真実①

2018.11.25 14:11

<21世紀のこの世の中で、中国共産党政府は、ナチスのジェノサイドやポル・ポトによる知識人大量虐殺に類する行為を公然と行っている。特定の民族を狙った蛮行はジェノサイドというしかなく、文化大革命のそれとは比較にならない。こんなことを許していては歴史に汚点を残すということを「漢人」の友人たちには強く訴えたい。>

アムネスティ・インターナショナル日本などが主催して「ウイグル強制収容所から奇跡の生還」と題する報告会が11月23日、お茶の水の明治大学で開催された。報告したのは、2017年3月から8ヶ月間、ウイグルの強制収容所に収容され、今年初めに釈放されたカザフスタン国籍のオムル・ベカリさん(42歳)と、去年3月拘束され、ことし国家転覆罪で死刑判決を受けた新疆大学元学長を兄に持ち、現在米国に亡命中のヌーリ・ティップさん。それに明治大学講師で中国研究者の水谷尚子さんの3人。冒頭の訴えは、水谷さんの発言である。

報告会の目玉で、強制収容所からの「奇跡の生還」を果たしたオムル・ベカリさんは、両手両足を一本の鉄の鎖で繋がれた姿で登壇し、その状態で30分以上も立ったまま話を続けた。収容所に入って初めの3ヶ月間は、そうした鎖で繋がれた状態のまま拘束され、拷問を受けたといい、時には涙で声を詰まらせながら、けっして思い出したくはないはずの収容所での過酷な体験を苦しそうにうつむきながら語り続けた。「奇跡の生還」という意味は、ウイグルの強制収容所に拘束されている100万人あるいは300万人とも言われるウイグル人、それにカザフ人などトルコ系のイスラム教徒のなかで、これまでに生きて釈放された人はオムル・ベカリさんと同様にカザフニスタン国籍を持つ、たった20人ほどしかいないとされるからだ(そのなかで収容所での体験を公に語っているのは5人のみだという)。収容所で死亡したと言われる人も遺体が家族に戻されるわけでもなく、消息は不明のままで、たとえ収容所から放り出されたとしてもすでに瀕死の状態で手の施しようがなく、すぐに息を引き取る人がほとんどだといわれる。

報告会の様子は、NHKやTBSが来てカメラを回し、読売新聞や毎日新聞なども取材していたが、実際に報道されたのは証言のごく一部に過ぎない。以下は、歴史に記録を残すという意味で、報告会で語られた証言内容を私のメモに従ってできるだけ詳しく記載しておきたいと考える。

オムル・ベカリさんは、新疆ウイグルのトルファンで生まれ育ったが、父親がカザフ人ということもあり、30歳のとき国籍をカザフスタンに移し、カザフスタンで旅行会社の副社長をしていた。去年2017年3月、旅行会社の仕事でウルムチに出張したついでに、一泊の予定で両親がいる故郷のトルファンに戻ったところ、突然、自宅に押し入った武装警察の5人に、手足を縛られ連行させられた。収容所に入ってすぐに血液検査のほかDNAや腎臓の検査を受けさせられた。中国では受刑者の臓器が売買されているという話を知っていたから、自分も臓器売買の対象になったのかと恐怖を覚えたという。

最初の4日間は、「トラの椅子」と呼ばれる鉄製で地面に固定された椅子に、両手両足を縛られた状態で座らされ、尋問を受けた。当局側は「国家分裂を図った、テロを計画した、テロリストを擁護した」の3つの罪を認めるよう迫った。オムルさんは、自分がカザフ国民であることを伝え、弁護士の面会とカザフスタンの大使館に連絡するよう訴えたが聞き入れてくれなかった。「トラの椅子」での尋問の後も、両手両足が鎖に繋がれたままの状態で3ヶ月間を過ごし、抵抗したり命じられたことを行わないと再び「トラの椅子」に24時間縛り付けられたり、壁に向かって24時間立たされたり、狭い真っ暗な部屋に24時間閉じ込められるなどの罰を受けた。そのほかにも真夏の日中に裸で外に立たされたり、真冬には氷の上に立たされたうえ水をかけられたり、あるいは両手を天上に繋がれて、下にある汚い水の池に首まで漬からせるなどの拷問もあった。また、ムスリムにとっては禁忌である豚肉を食べるよう強制され、食べるまで拷問が続けられるということもあった。

収容所での生活は、12平方メートルほどの部屋に45人から50人が詰め込まれ、食事も学習もトイレも同じ部屋で行われた。夜はそのうちの35人が寝て、残りの10人が見張りに立ち、途中で交代するという生活だった。そこで鎖につながれた状態のまま24時間を過ごした。天上に小さな窓があるだけで、部屋の空気は汚れていた。まるで「ここで死ね」と言われているとしか言い様のない環境だったという。

朝は3時から4時のあいだに起こされ、軍隊と同じように布団をきれいに四角に折ってかたづけたあと、共産党の歌を歌いスローガンを叫ばされた。6時から7時の間に国旗を揚げる集会があった。7時半に朝食をとるが、食事は朝昼晩とも饅頭1個におかゆ一杯。食べる前には必ず、国家への感謝、習近平への感謝、そして共産党への感謝の言葉を唱え、国家の繁栄と習近平の健康長寿を祈る言葉を叫ばされた。8時からは、共産党を称え、党のスローガンを叫び、歌を歌わせられる洗脳教育が昼食を挟んで午後まで延々と続いた。夕方からは夕食を挟み夜12時まで、自己批判や他人を批判する批判形式の学習が続いた。ここでは「ウイグル人に生まれて悪かった、ムスリムとなったのが間違いだった。自分はウイグルでもムスリムでもなく、共産党のものだ」と唱えさせられ、まるで「党のロボット」になることを迫られる洗脳教育を受けさせられたという。

こうした過酷な収容所の生活でオムルさんの115キロあった体重は、8ヶ月間で半分近くの60キロにまで落ちた。現在は90キロまで回復しているが、今も精神的には不安定で、元の状態には戻っていないという。収容所で叫ばされたスローガンを絞り出すような声で再現したときには、そのあと顔を手で覆って嗚咽し、しばらく言葉も出ないほどだった。収容所での悪夢のような経験が蘇り、耐えられなくなったのかもしれない。

収容所では、訳の分からない薬を飲まされることがあり、飲んだふりをして吐き出すようにしていたが、この薬を口にしたあとには下痢が続いたり、意識を失ったりすることもあったという。

収容者が体調を崩しても治療を受けることはなく、尿に血が混じる状態でも放置された。拷問を受け、自分たちの目の前で死んでいく収容者の姿を2人目撃した。肉体的にも精神的にも極度に衰弱して死んでいったという。

毎週、3人から5人が部屋から呼び出され、そのまま帰ってこなかった。部屋から連れ出すときは収容者1人に必ず4人の警官がつき、抵抗されないようにしたが、手足を鎖で繋がれた状態では抵抗できるはずもなかった。連れ出された人がその後どうなったかは、誰にも分からない。そのあとには新しい人が入ってきた。収容所のなかでは外部といっさい接触できない。遺体を家族に返したかも分からなかった。

オムルさんが強制収容所に収容されたあと、80歳になる父親も拘束されたほか、母親や妻の家族など親族19人が今も収容所に収容されているという。80歳の父親は、ことしの9月18日に収容所で死んだことが分かった。父親は、長く公務員を務めて中国語にも不自由はなく、年金をもらい、生活するには何の問題もなかった。強制収容所について、中国当局は職業訓練をさせる場所だと強弁しているが、「80歳の老人に今さら職業訓練や中国語を教える必要がどこにあるのか」とオムルさんはいう。オムルさん自身も、中国語も含め5つの言葉をしゃべり、会社幹部として立派な職業人でもある。そうした人々まで有無を言わせず拘束する収容所を職業訓練所だと言い張る中国の言い分は、それまで収容所の存在自体を否定してきたものが、いろいろと外部に証拠が出され、その存在を否定できなくなったために、ただ名前を変えて綺麗ごとを言い、言いつくろうためのものにすぎないとオムルさんはいう。

報告の最後にオムルさんは「収容所は中国がいうような教育のための施設ではなく、民族浄化のための施設だ。その中には100万人どころか、その数倍の人が拘束されている。21世紀のこの時代に、経済大国になったと言われる中国が、民族浄化という犯罪を行っている。このことを世界に知らせるのは、今も収容所のなかにいる同胞たちへの私の義務だ。世の中には正義とか人道というものがあって、誰もがそれを尊重している。動物でもその権利が守られる時代に、ウイグルでは手足を縛られ、自由を奪われた人々がいる。こんなことを放っておいたら、やがて香港や台湾でも同じことが行われ、東南アジアに広がっていくことも考えられる。習近平や陳全国(新疆ウイグル自治区書記)は、人間ではないから、こんな残酷なことができる。彼らは人間性を失ったファシストというしかない」と訴えた。

NHKのBS1「国際報道2018」は11月28日、「衝撃証言 ウイグル族“不当収容”の実態」という特集番組を放送した。この中では、来日したオムル・ベカリさんへのインタビューや水谷尚子さんによるスタジオ解説などで、ウイグルにおける強制収容所の実態を詳しく報じている。

(そのほかの関連記事)

NHK「ウイグル族 収容所の実態は… 拘束された男性が講演 東京」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181124/k10011721681000.html

朝日新聞「『反抗すれば24時間立ち続け』ウイグル収容施設の実態」11月24日

https://www.asahi.com/articles/ASLCS46QHLCSUHBI00X.html

毎日新聞「中国ウイグル族 再教育施設の元収容者、日本で証言」

https://mainichi.jp/articles/20181124/k00/00m/030/128000c

https://www.msn.com/ja-jp/news/world/中国ウイグル族再教育施設の元収容者、日本で証言/ar-BBQ1fa8

テレビ朝日「ウイグル族の収容施設 拘束男性がその実態を語る」

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20181121-00000010-ann-int