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「社員が成長できる企業・組織」「社員成長タイプの業界分類」に関する調査レポート(vol.5)

2014.07.23 05:00

要旨:


今回の調査レポートでは、「Vorkers(現:OpenWork)」に投稿された75,048件の社員による在籍企業の評価レポートから、「20代成長環境」と「人材の長期育成」を対象にデータを集計、分析しました。


ビジネスパーソンにとって、やりがい、働きがいを感じるために一番必要な仕事の要素のひとつは、「成長実感」です。仕事を通じて、今までできなかったスキルや知識が身につくことは、それ自体が「達成感」を得られるものであるだけでなく、ビジネスパーソンとしての「自信」がつくことにもつながります。しかも、自己の成長は、昇進・昇給、また新たなキャリアの可能性をも高めてくれるのです。したがって、多くのビジネスパーソンにとって、就職・転職先が「成長できる組織・企業であるかどうか」は、非常に重要なポイントだといえるでしょう。


若手のうちから、自分の能力を大きく伸ばせる機会が与えられること。一方、年齢や経験に応じて新たなスキルや経験をする機会があり、何歳になっても自己の成長が実感できること。この2つは一見、二律背反的なことのように思えます。では、現実にはどうなのでしょうか?詳細をみていきたいと思います。


「社員が成長できる企業・組織」ランキングトップは「財務省」

「社員が成長できる企業・組織」ランキングは、「20代成長環境」「人材の長期育成」の合計点から算出しました。これらの企業・組織は、若いうちから成長実感を得られるだけでなく、長期的にも能力・スキルを伸ばすための教育研修制度などが確立、運用されている企業だといえます。


さて、ランキングトップの座に就いたのは、「財務省」です。財務省では、日本経済の安定的発展への貢献を目指し、予算の作成だけでなく、税制や為替、財政投資計画や金融危機管理など、幅広い国家規模の仕事を行っています。若い頃から重要な業務に携わり、年齢を重ねることで日本の代表として国際交渉を行う役割などもあり、生涯を通じて成長できる環境が整っているようです。


2位の日本経営は、会計事務所が母体の病院・福祉・介護のコンサルティングを行っている企業。人材育成に力を入れていると共に、能力主義を採用しているため、若手社員のころから切磋琢磨して自分の能力を高めて成果を出す社風のようです。

3位の千代田化工建設は、石油プラントなど大規模な工場の建設を世界規模で手掛けているエンジニアリング会社です。海外の大きな仕事を20代のころから任されることで早期の成長が図られています。また長期の人材育成のための制度も確立されているようです。

※ランキングの評価点・クチコミ件数などは投稿によって変動するため、「Vorkers(現:OpenWork)」各企業ページで掲載している数値と異なる場合があります。


社員成長タイプの業界分類

Vorkers(現:OpenWork)の企業評価データから、「20代成長環境」と「人材の長期育成」を組み合わせて業界別分析を行い、「Ⅰ:耐久レース」型、「Ⅱ:マラソン」型、「Ⅲ:スタートダッシュ」型、「Ⅳ:ウォーキング」型という4つの社員成長タイプに分類しました。「横軸:20代成長環境」(3.41)と、「縦軸:人材の長期育成」(2.51)の平均値を基準に分類しています。


「Ⅰ:耐久レース」型の業界は、「総合商社」や「コンサルティング、シンクタンク」など

「耐久レース」型は、「20代成長環境」、「人材の長期育成」のどちらとも平均値以上の業界です。突出しているのは「総合商社」です。いわゆる「商社マン」は、入社早々から現場に放り込まれ鍛えられます。海外駐在の機会もあり、駐在先では、若くても自社を代表する立場として、タフな交渉を乗り切らなければなりません。それだけ若いうちから大きく成長できる業界ということになるのでしょう。同時に、総合商社ではキャリアパスも確立されており、ある程度、現場で経験を積んだ後は、多数存在する子会社の社長になったり、あるいは新規事業の責任者になったりといった機会も豊富で、長期的な人材育成も図られています。


「コンサルティング、シンクタンク」は、「20代成長環境」が高いのですが、意外にも、「人材の長期育成」においても平均値以上の評価を得ています。コンサルティング業界では、「アップ・オア・ アウト」という表現があります。これは、若いうちに結果を出して昇進(アップ)できなければ、辞める(アウト)という意味ですが、それだけ厳しい環境だからこそ若手は大きく成長できるのです。能力があれば、マネージャー、パートナーへと昇進・昇給の機会も用意されており、優秀な人材には、長期的な育成も図られていると思われます。


「Ⅱ:マラソン」型の業界は、「自動車」「総合電機」などの第2次産業

「マラソン」型は、「人材の長期育成」の評価が高く、「20代成長環境」が平均値以下の会社です。このカテゴリでは、「電力、ガス、エネルギー」、「化学、石油、ガラス、セラミック」、「自動車、自動車部品、輸送機器」、「総合電機、家電、AV機器」など、第2次産業を代表する業界が目立ちます。これらの業界においては、分業体制が確立され、組織のヒエラルキーが重視されている傾向にあります。安定した品質の製品・サービスを継続的に提供する必要性からも、失敗を許容しにくい環境にあり、若手に「とりあえずやらせてみる」ということがなかなかできません。このため、若いうちはそれほど成長実感が得にくい業界だといえます。しかしながら、年齢を重ねることにより、組織の上層へと昇進し、経験に応じた役割やポジションが提供されやすい業界といえるでしょう。


「Ⅲ:スタートダッシュ」型の業界は、「インターネット」などの成長産業や、「理容、美容、エステティック」などのサービス産業

「スタートダッシュ」型は、「20代成長環境」が高く、「人材の長期育成」が平均値以下の業界です。このカテゴリでは、まず「インターネット」の業界のように、近年成長が著しい新しい業界であるために、若手が活躍できる、すなわち成長できる業界である一方、「人材の長期育成」のための各種制度が未整備のところが多いと想定される業界があります。


また、「理容、美容、エステティック」のようなサービス業界では、現場の若手社員が多く社員の入れ替わりが激しく、会社としては「人材の長期育成」のための投資に及び腰になりがちであるという可能性が考えられます。


「広告代理店、PR」など、若いうちから鍛えられることで有名です。こうした業界は、他の業界よりも転職率や独立志向が高いことから、企業側としても「人材の長期育成」にはあまり力を入れにくいという業界特有の状況があるのかもしれません。


「Ⅳ:ウォーキング」型も複数の業界が存在

「ウォーキング」型は、「20代成長環境」、「人材の長期育成」のどちらとも平均値以下の業界です。それぞれの業界においてなんらかの事情があると思われますが、会社として成長実感につながる機会の提供が難しい業界であると考えられます。


「20代成長環境」ランキングでは、リクルート系企業、コンサルティング会社が上位に

「20代成長環境」の評価の高い企業ランキングを見ると、トップの「リクルートマーケティングパートナー」を始め、リクルート系企業が目立ちます。リクルート系企業は、30代前後での「卒業」(独立)が奨励されるほど、若いうちに高い能力を身に付ける機会がある企業として知られています。


コンサルティング会社もまた、基本的には徹底した「能力主義」であり、能力を磨けば磨くほどより大きなチャンスが与えられる職場であり、若いうちに成長を望むビジネスパーソンがコンサルティング会社を目指すのも当然のことでしょう。

※ランキングの評価点・クチコミ件数などは投稿によって変動するため、「Vorkers(現:OpenWork)」各企業ページで掲載している数値と異なる場合があります。


「人材の長期育成」ランキングトップは「財務省」

「人材の長期育成」ランキングの1位は「財務省」です。財務省は、「20代成長環境」のトップ30には顔を出していません。実は、「20代成長環境」の全体平均が3.41に対して、「人材の長期育成」の全体平均は2.51と低めであり、その中で群を抜いて財務省が高い評価を得たことが、「20代成長環境」+「人材の長期育成」の合計点でトップになったことの背景にあります。なお、3位の裁判所もまた、その社会的役割に照らして、人材の長期育成が当然の取り組みになっているものと思われます。


2位の出光興産は、「人を中心とした経営を行い、事業を通して社会の発展に貢献する」という「人間尊重」の経営理念を持ち、家族主義的な経営で有名です。「従業員は解雇しない」という方針のもと、終身雇用を前提とした長期的な人材育成制度が確立していることの反映が2位というポジションでしょう。


4位のNTTを始め、「人材の長期育成」の評価の高い企業は、通信、電気などの社会インフラを提供している企業や、大手メーカーが目立ちます。

※ランキングの評価点・クチコミ件数などは投稿によって変動するため、「Vorkers(現:OpenWork)」各企業ページで掲載している数値と異なる場合があります。


データの集計について

データの収集方法

「Vorkers(現:OpenWork)」の会社評価レポートへの回答を通じてデータを収集しています。

会社評価レポートの回答条件は下記のとおりです。

対象データ

2007年7月~2014年7月に、社員・元社員から投稿されたレポート回答(全75,048件)を対象データとしています。

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