40-50代の中途入社者が評価する「育成環境が優れた企業ランキング」(vol.109)
終身雇用とリスキリングの間で揺れるミドル世代
要旨:
- 1位にナイル、2位に中外製薬、3位に日本アイ・ビー・エム デジタルサービス
- TOP3企業の「人材の長期育成」は5点満点中4点越え
- ランクイン最多の業界は30社中13社の「Sler、ソフト開発、システム運用」業界
- 充実した研修・人材育成制度は当たり前。「自学しないと置いて行かれる」焦燥感や向上心が自然と湧き上がる環境を挙げる声多数
- 「なぜ自学すべきか?」スキルアップした先に得られるメリットを企業が明示しているかどうかがリスキリング施策成功の鍵
岸田政権が打ち出す経済政策「新しい資本主義」の実現に向けた行動計画である「骨太の方針」(※1)の原案が6月7日に公表されました。「骨太の方針」は「成長分野への労働移動の円滑化」を目的としており、企業のリスキリング(学び直し)支援だけでなく個人への直接投資の検討やベンチャー企業への投資といった各種方針が打ち出されています。中でも、転職しやすい労働市場改革を促す施策の一環とした、副業・兼業など多様な働き方の推進、自己都合退職の失業給付の迅速支給といった施策には労働者からも高い関心が寄せられています。日本の労働市場では長らく是とされてきた、「長く働く・勤め上げる」という概念に、今、大きな変化が起きていると言えるでしょう。
こうした背景から、特に40-50代の「ミドル層の転職」に関する注目は年々高まっているように見受けられます。今回の調査レポートでは、ミドル層でも年功序列に頼らず、経験やスキルでキャリアを切り開いていける企業を探るべく、40-50代の中途入社者から「人材の育成環境が優れている」と評価された企業をランキング形式で紹介します。
(※1)正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針2022」
40-50代の中途入社者が評価する「育成環境が優れた企業ランキング」TOP30
TOP3の「人材の長期育成」スコアは4.00超!充実したスキル育成環境に加え、「若手に負けられない」「自学自習しないと置いて行かれる」向上心が刺激される点を挙げる声
40-50代の中途入社者が「育成環境が優れている」と評価した企業を集計した本ランキング。1位にナイル、2位に中外製薬、3位に日本アイ・ビー・エム デジタルサービスという結果になりました。ランキング全体では、「Sler、ソフト開発、システム運用」業界が30社中13社を占めており、他はインターネットサービスや通信、化学、コンサルティングといった業界企業が並びました。
ランクイン企業の中途入社者が投稿した「働きがい・成長」のクチコミを見てみると、入社形態を問わず研修育成制度が充実している環境、本業とは直接関係がない内容でも学習支援してもらえる環境を特徴として挙げる声が多く見られました。加えて印象的なのは、企業から与えられた成長支援環境を持て余すことなく、日々の業務に活かすべく自学自習する姿勢がある様子も多く投稿されていた点です。豊富な研修機会をただ社員に提供するだけで留めず、「若手に負けられない」「嫌でも刺激を受ける」「自学しないと周囲に置いて行かれる」ような、社員が受動的ではなく能動的にスキルアップをしたくなる、焦燥感や向上心の生まれやすい組織風土があると言えそうです。
上位ランクイン企業の中途入社者がOpenWorkに投稿した「成長環境」に関する社員クチコミ
「日々のニュースが仕事に直結するスピード間を感じながら、営業スキルも磨かれ、証券知識も豊富になり、自分の裁量で仕事ができます。成長、キャリア開発するためのサポートも非常に充実しており、直接仕事に関係ないような資格取得にも補助がでます。(支店営業、女性、野村證券)」
「常に高いスキルを求められるため継続的に自己研鑽が必要ですが、ITスペシャリストとして自信と誇りを持って仕事に取り組むことが出来ます。仕事で求められるスキルをしっかりと習得していくことが出来ていれば、自然と業界で必要とされる様々なスキルを身につけられると思います。その反面、努力を怠って周りについていけなくても置いていかれるだけなので、本人の高い意識が必要。(ITS、男性、日本アイ・ビー・エム デジタルサービス)」
「若い社員の意欲が高いので、負けていられないという気持ちでモチベーションが向上しました。資格取得支援の社内制度もあるので、語学の勉強がはかどりました。(コンテンツ管理、男性、ナイル)」
「社内には自己成長のためのプログラムが多々ある。活用次第では能力開発も可能であるが、興味ないとただ惰性で仕事をするだけになる。周囲が能力開発に敏感な人が多いため、嫌でも刺激を受けて能力開発にいそしんでいる。(企画、男性、中外製薬)」
「知識向上に関するもの、マインド向上に関するもの、両者において、様々な社員限定のコンテンツが用意されているので、業務内容以外の法律や社会保障など、たくさんの学習が、自分の好きな時間にできます。また、非常の自己成長欲の高い方が先輩方に多いので、日々刺激を受けています。(営業、女性、プルデンシャル生命)」
「毎月のように何かしらの研修があり、またAWSやSalesforceなどの3rd Party系の研修も自由に受けられるため、成長速度は速いと思う。悪く言うと勉強しなければならないことが多く、土日や平日深夜に勉強して追いつく必要がある。(法人ソリューション、男性、NTTデータ)」
「なぜ自学自習をすべきなのか?」スキルアップを通じ自分で待遇や未来を切り開いて行ける、道筋を企業が示すことがリスキリング成功の鍵
経済産業省によると、「社外学習・自己啓発を行っていない人」の割合が日本は46%となっており、これは諸外国と比べても非常に高い割合となっています(※2)。自学自習することへのハードルが高い人も多い中、社員が自ら必要性を感じてリスキリングすることで何を得られるのか、企業が明確に道筋やメリットを提示させることが重要と言えます。実際、ランクイン企業のOpenWorkのクチコミを見ていくと、スキルアップをすることで一層キャリアアップや昇進昇給が望める、他部署でも通用するスキルを得られるといった声が見られました。年齢や在籍年数関係なく自己成長を続けることで、企業に自身のキャリアを預けず、自分の力で待遇や未来を切り開いて行くマインドセットはビジネスパーソンにとって一層肝要となるでしょう。
(※2)2022年5月 経済産業省「未来人材ビション」
OpenWorkに投稿された、自学自習やスキルアップを通じて得られる「変化」に関する社員クチコミ
「各自スキルアップ制度(書籍購入、セミナー費用補助支援)を有効活用して当たり前のように成長を図ろうとする環境。ある業種で満足した人向けに事業部やチーム間を体験・異動できる制度がある。(デジタルマーケティング、男性、ナイル)
「教育プログラムが充実しており、社内にコンサルタント経験者による教育プログラムが運営されています。経験の浅い方でも成長しやすい環境が整備されています。所定の研修を受講しなければプロモーションできないため業務と並行しての受講はかなり大変です。(シニアコンサルタント、男性、クニエ)」
「社員教育に力を入れており、多種多様なトレーニングを受ける機会がある。また、キャリアプランに応じて社内の異動も柔軟に受け入れてもらえるのでモチベーション高く新しいことにチャレンジできる。(主任、男性、NTTデータ)」
「教育の材料は揃っているので、自己成長に関しては本人次第なところはある。キャリアに関しても、定期的に他事業部の話を含めて、異動出来る仕組みになっている。(エンドスコピー、女性、ボストン・サイエンティフィック ジャパン)」
「ポスティング制度を活用すれば自分でキャリアを考えて行動に移すことが出来ます。社内教育も豊富なのでリスキリングも出来ます。反対に、年功序列的なキャリアが好きな人には向かないと思います。(SE、男性、富士通)」
データの集計について
OpenWorkに投稿された、40-50代の中途入社者による会社評価レポート回答23,276件を対象データとして使用。対象者・集計期間を限定しているため「OpenWork」の各企業ページで掲載している企業評価点とは異なる。