国際課税勉強会34(タックスヘイブン対策税制の適用除外書面の提出要件)
今日は、国際課税「一角塾」に参加し、サンリオ事件(東京地裁令和3年2月26日、東京高裁令和3年11月24日)について報告を聞きました。
原告で日本法人Xの香港子会社の所得について、課税庁Yがタックスヘイブン対策税制により、Xに対する課税処分をした事件。
争点は、子会社の事業が著作権の提供か否か、事業実態要件を満たすかということに関連しますが、それ以前に、Xが確定申告書に適用除外を説明する書類の添付をしていなかった状況下で、適用除外を主張しうるかどうかでした。
当時の措置法66条の6第7項では、適用除外を説明する書類の添付要件が定められていた(その後平成29年改正で撤廃)が、Xはそれを提出していなかったというもの。(Xが香港子会社に関するタックスヘイブン対策税制適用について検討していたかどうかは不明だが、とにかくXは香港子会社の所得を合算申告しておらず、適用除外書類も出していなかった。)
Yは、課税処分の段階ではその適用除外書類の不提出を理由にしていなかったのに、訴訟に至って初めてその提出漏れを理由に追加し、それが主要な争点となってしまったようです。
裁判所は結局、事業実態を満たすかどうかを検討することなく、書類添付をしていないので適用除外にできないと判断。課税処分を適法としました。
さらに、Xはタックスヘイブン対策による課税がないことを前提としていたので、外国税額控除の適用と計算書添付をしていなかったところ、その添付がないという理由で外国税額控除の適用も否定されました(二重課税が残存)。
Xにとっては非常に酷な判決というようにみえます。が、当時の法の文言に照らすと、裁判所としてはそれを忠実に解釈するので、法にはっきりと書いてある限り、そういわざるを得なかったというのも理解はできます。
ただ、その後に平成27年改正で書類添付要件について宥恕規定が入ったことと、平成29年改正で書類添付要件自体が撤廃されたことを考えると、書類添付の有無にこだわる理由は小さくなるともいえます。
つまり、確定申告当時、適用除外の事業実態要件などをまったく検討していなかったならいざ知らず、それをXが十分に検討していて、そのうえでタックスヘイブン対策税制適用除外として申告していることが何らかの形で立証できるなら、そこまで書類添付の有無にこだわる必要はなかったという議論です。
また、外国税額控除について、タックスヘイブン対策税制で子会社の所得が合算課税されるのに、その子会社が外国で納付した法人税は無視され、二重課税に近い状態が放置されるというのは、もともとの外税控除の趣旨に反するのでは、と考えさせられる事件です。