4m80を跳ぶ男子選手と女子選手は、どっちの方が上手?
皆さん、こんにちは。
中京大学の榎です。
今回は下記の論文を紹介したいと思います。
女子選手は同じ記録を持つ選手を参考にする場合、男子選手と女子選手、どちらを参考にすべきなの?っていう疑問に答えてくれる論文です。
では、内容を見ていきましょう。
【方法】
この研究では、2007年世界陸上女子棒高跳決勝に出場した女子トップ選手11名(記録:4m50〜4m80)と同記録水準の男子学生8名(記録:4m40〜4m80)を対象としています。
対象とした選手の身長や体重、自己記録、撮影した動画から分析した項目をもとに分析を行っています。
世界陸上では2台、地方競技会では3台のデジタルビデオカメラで跳躍動作を撮影しています。
分析したのは、踏切1歩手前からバーを越えるまでです。
算出した項目は以下の15項目です。
・踏切速度
・踏切角度
・踏切の時の重心の高さ
・突っ込み時のポール角度
・握りの高さ
・抜きの高さ
・ひじ関節角度
・肩関節角度
・股関節角度
・ひざ関節角度
・体幹角度
・ポールが曲がっている割合
・ポールを離すときの右手の高さ
・ポールを離すときの右手と重心との距離
【結果】
結果をまとめると以下のような点が明らかになりました!
- 身長と自己最高記録に差はなかった(女子トップ選手は、男子学生と身長がほぼ変わらない!)
女子でも170〜180cm近くある) - 女子トップ選手は男子学生と比べて体重・助走速度・踏切速度・握り高が低く、抜きの高さ・突っ込み時のポールの角度・踏切の時の重心の高さが高かった
- ポールの動きは、女子トップ選手の方が踏切直後にポールを曲げ、男子学生よりもポールが伸展するタイミングが早かった。
(男子学生は、バーが十分に伸展する前にクリアしている傾向があった。) - ポールを離す際、右手と重心の距離は女子トップ選手が大きかった
(クリアランスに向けてポールを突き離す瞬間、女子トップ選手の方が、グリップ位置に対してより重心が上がっていた!) - 右肩の角度は女子トップ選手が突っ込みからポールが最も曲がるまでの間で、大きかった(≒脇が開いている)
- 体幹角度は女子トップ選手が突っ込みからポールが最も曲がるまでの間で小さく、地面に対して垂直に近い状態でいた
(突っ込みからポールが曲がるまでの間、上半身が払われたりせずに真っ直ぐの進んでいる)
【まとめ】
4m40〜4m80程度の記録を持つ男女を比べると、女子選手は男子選手と比較して、体重と助走速度が低い(=エネルギーが低い)にもかかわらず、技術的に優れているから高く跳ぶことができていると考えられます。
また、女子トップ選手はポールが最も曲がるときまで右肩の角度が大きく、体幹角度が小さいことから、エラスティックなポジションができていると考えられます。
つまり、女子棒高跳選手が4m40〜4m80の記録を目指す際には、同水準の男子選手ではなく、女子選手の動作を参考にすべきであるということです。
当たり前だろと思うかもしれませんが、目指すべき方向を定めて、地道に体力と技術の向上を同時に目指してくださいね!
(writer:榎)