V字回復の経営ー2年で会社を変えられますか
本書は、実際に起こった実話をもとに、著者自らが実践した経営改革の実例を、企業ドラマ風の物語形式に描いたものです。
著者の 三枝 匡氏は 有名な「ボストン コンサルティング グループ」 というコンサルティング会社に勤務後、赤字会社や投資ベンチャー企業の代表取締役も経験され、業績回復の実績もある方です。
ビジネスの主題を(あえて)物語という小説形式で伝える、という手法はたまにありますよね。工場の業務改善を描いた「ザ・ゴール」(著者 エリヤフ・ゴールドラット)、 会社のビジョンづくりをテーマにした「ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか」(ケン・ブランチャード、ジェシー・ストーナー共著)などなど。
自分は、文学部出身の人間なので、こういう企業改革小説は 「ビジネス書と小説をたして二で割った中途半端」な印象をもってしまうのですが、コンサルティング会社で培った経験を実際の会社再建で実践されただけに、本書にでてくる東証1部上場企業「太陽産業」アスター事業部の会社内部の改革を妨げる政治的動き、人間関係など、、それにどう対処すべきか? 実際的な組織改革のHow-toをかなり具体的に描いていて、けっこう説得力があります。
また、最後には改革のポイント毎に「要諦」をまとめとして挙げているので、ストーリーを忘れても、「組織改革」の大切なところは押せえられるよう配慮もされています。
おそらくこのお話で、ポイントになる登場人物を上げるとしたら、やはり「黒岩莞太」です。彼はすでに、「太陽産業」の子会社で組織改革を成功した経験を持っている人物です。そして、太陽産業社長、香川五郎は彼の実績を見込んで(彼に)本社の改革を任せるのです。黒岩は、組織改革の要旨を抑え、常に先手を打ちながら、同時に、生え抜きで改革意識に燃えた人材で構成された、「再建タスクフォース」の若いチームメンバーを引っ張っていきます。(ちょっとカッコイイキャラクターです。)
(この作品を純粋に「小説」として読むなら)自分的には、この黒岩がいかに以前在籍していた子会社の再建を果たすことができたのか? また、個人的にどのような経歴を持ち、何が彼を改革へ突き動かす原動力となったのか? そのあたりの黒岩の人間的バックグランドが知りたいと思いました。(特に、日本の企業は、この「黒岩」氏のような社会員を生みにくい風土、というかカルチャーだと思います。その中で、彼はどのように改革意識を持ち、それを実行できる会社員に成り得たのか?が興味を持ったところでした。
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