S-Column「アマミノクロウサギ」
2015.05.15 00:12
かつて日本でウサギが原告となった訴訟があるのをご存じだろうか。平成13年鹿児島地裁の「アマミノクロウサギ訴訟」である。絶滅危惧種が生息する地域のゴルフ場開発による自然破壊に関して、直接の不利益を被ったものとしてアマミノクロウサギなどの動物を原告とする訴訟が起きたのだ。
一見馬鹿げた裁判に見えるが、大事な論点がある。ここでウサギたちに保障されるべきとされたのは、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」ではなく、「良好な環境」を享受する権利、すなわち「環境権」だ。
まさに憲法改正論争の中であるが、集団的自衛権のみならず、健康で文化的な生活の前提として「良き環境を享受し、それを支配する権利」を憲法の中に明記すべきであろう。一方では、環境権を憲法に明記すると企業の開発や公共事業に対して制約がかかってしまうという見解もある。公害などの被害以外にも原発、米軍施設など複雑化した問題を抱えている。しかし現状の憲法による擁護は弱く、裁判ごとにケースバイケースでの判断が強いられている。自由権としての環境権の論議は慎重かつ抜本的に進められるべきである。
自由権としてだけではなく、環境権を「将来世代のために環境保全に努める」という国家の努力目標として明記する必要は十分にある。欧州では景観を守るために、国家の義務として環境権を当然に化している国も少なくない。
明記されれば、世界の環境問題に対して日本が再びリーダーシップを発揮していくきっかけになる。そして国家の努力目標ともなれば、わざわざウサギが訴えを起こさなくて済むだろう。
(村長)