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WUNDERKAMMER

ショートショート151~160

2018.11.30 12:08

151.自分を幸せから遠ざける為、1人山奥で寂しく、孤独を抱えながら亡くなった老人は、

遠い未来で考古学者らに発見され、博物館で来客から脚光を浴びている。

・・・

152.その山奥の廃寺には、無数のロープが垂れ下がっていた。

輪っかを下にしたそれは、風が吹いたためなのか、ゆっくりと揺れ始めた。

ぐらん、ぐらん

ふと、寺の奥を見ると揺れていない一つのロープが見えた。

椅子と共に月光に照らされたそれは、まるで私を待っているかのようで…

・・・

153.スマートフォンの変換予測のところに、「今夜」「さえきが」「くる」「殺」「にげろ」と出ていたのだが、それに気付いたのは夜であり、また先程声を掛けられ、一緒にご飯を食べているこの佐伯さんと私の身に何が起こるのかとても気になっている。

・・・

154.その海には焼死体の幽霊が出る。

深夜その海をみると揺れる赤いものが海上近くに浮いており、よく見てみるとそれは家族であろう男女と子供の影が中にある炎の塊だった。

人が燃えている為焼死体と言われているが、三人共ただ燃えているだけである。

またその海で炎に関する事件はない。

・・・

155.真っ白な老人が現れた。神々しい彼は僕に「宝くじを買いなさい」と告げた。

買うと見事一等。

それから彼は僕にお告げをする。

アレを買え、こう言え、宗教を作れ、人を集めろ、堕落しろ、大罪に酔え、改宗させろ、異教徒は、殺せ

ここに来てやっと彼は神ではなく悪魔なのだと気が付いた。

・・・

156.昔役者が使うドーピング剤があった。それを使うと脚本を一発で覚え、役に完璧に染まる事が出来るのだ。

何故その薬がもう無いかというと、その薬を使い過ぎると元の人格が薄れ、次第に自分がどんな人間だったかわからなくなるのだ。

かく言う私も、架空の全てであり現実の誰でもなくなってしまった。

・・・

157.「私が死んだらこれと一緒に燃やしてくれないか」

死の間際、叔父はそう言った。

中を見てみると、色とりどりの綺麗な花々と、古ぼけた1枚のエコー写真が入っていた

私はその小さな棺を長い眠りについた叔父の胸に抱かせ、

彼らのこの先の幸せを願ったのだ

・・・

158.A国で異様に落ちている紋章入りの鉄の塊と、同じようなものがB国にも見つかったので「古代、我々の国は兄弟だったかもしれない」として友好関係を築き、とても仲良くしているのだが、

その大昔、A国とB国は敵対しておりその鉄の塊は互いに打ち合った大砲の弾だと言うことは、神様しか知らない事だ。

・・・

159.受験勉強に追い詰められたある夜、教科書の文字がフワリと浮き出した。

ついに幻覚を見たかと思ったのだが、文字達がふわふわと漂う様が面白かったのを覚えている。

気がつくと、私は教科書に伏せて眠っていた。

しかし以前は無かった乱丁だらけの教科書を見ると、夢ではなかったのだと思う。

・・・

160.2才の子供がシーツを被り遊んでいた。

それをパソコンの画面越しに見ていたのだが、床に仁王立ちした子供の身長がググッと伸びていく様が見えた。

心なしかシーツも伸びているようだ。

天井に到達した時、我に帰り振り返ると子供は元の身長のまま、意味ありげにキャッキャと笑っていた。