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童話作家|浜尾まさひろ

第31回 オマージュを書いてみる1

2024.05.03 20:12

イラストは、Microsoft Copilot(人工知能)の作品


オマージュを書いてみる1


新美南吉の「飴だま」は短くまとめられたお手本のような童話です。あらすじは、渡し舟に乗った親子の後から一人の侍が乗り込みます。幼子たちが一つしかない飴を自分が欲しいと騒ぎはじめると、眠りを邪魔された侍が刀をぬいて起きだしてきます。 

母親は子どもが斬られるのではと真っ青になっていると、さむらいはその飴を舟のヘリにのせて二つに割ります。幼子たちに分けてやり、また眠りはじめた……というものです。 

緊張感とユーモア、ほのぼのとした結びに共感した読者も多いでしょう。私はこのさむらいがまた眠りをさまたげられた設定でオマージュを書いてみました。 


さむらいとキツネ 


ある秋の、風もないおだやかな日のことです。さむらいが、小かげで気持ちよさそうに眠っておりました。 


※ ここまで書くとさむらいの視点ではなくて、神の視点になってしまいます。さむらいの視点にするには「気持ちよさそうに」ではなく「気持ちよく」とすべきです。 


さっきからずっと、だれかが枯葉をふんで近づいてくるようで眼をさましました。 

おや? 

うす眼をあけると、一匹のキツネが足元にいるのです。 

「あっちへいけ」さむらいはキツネをけとばしました。キツネはキュン、と鳴いて、からだがどばされそうになりましたが逃げることはありません。それどころか、なおもさむらいのそばに寄ってきたのです。ねむりをじゃまされたさむらいは、腹をたてて起きあがりました。 

「おまえはおれに斬られたいのか?」 そういうと、こしの刀に手をかけて、親ゆびで刀の刃をのぞかせて見せました。 


※ さむらいの視点なのでここまで威厳を見せた方が効果的でしょう。しかし、起こされた怒りを強調するために、冒頭は「昨日は夜通し山を越えたので、ヘロヘロに疲れていました」と一文を加えることで、読み手はさむらいに感情移入ができます。 


それでもキツネは、さむらいのそばからはなれません。 

「……?」 

さむらいは、キツネのただならないようすに気づくと、口もとのヒゲに手をあてました。 

「おまえは、どうして逃げないんだ?」 

すると、キツネはさむらいをみちびくように歩きはじめました。 


浜尾 

イラストACより


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