吉澤ひとみ被告、勝谷誠彦さんらがアルコールを断てない理由 依存の恐さとは
吉澤ひとみ被告、勝谷誠彦さんらがアルコールを断てない理由 依存の恐さとは 酒気帯び運転で2人をひいて逃げたとして道路交通法違反と自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)に問われた人気アイドルグループ「モーニング娘。」の元メンバー、吉澤ひとみ被告(33)に対し、東京地裁は11月30日、「懲役2年、執行猶予5年」の判決を言い渡した。 20席の傍聴席を求めて1100人以上が並んだ29日の初公判では、吉澤被告は起訴内容を認め、「被害者の方に本当に申し訳なく思っております」と繰り返し謝罪。時折、涙を流しながら「起こしてしまったことを、一生忘れずに過ごしていきたい」と語っていた。 公判では、事故前日の9月5日から飲んでいたとされる吉澤被告の「酒量」も明らかになった。 初公判での冒頭陳述によると、吉澤被告は午後8時15分ごろから9月6日午前0時ごろにかけて、缶チューハイ3本と炭酸水で割った焼酎2杯分を自宅で飲んでいたと指摘。直後に就寝し、午前6時50分ごろから運転していたという。事故直後に現場に戻ってきたあと9時50分ごろに行われた飲酒検知では、呼気1リットル中0.58ミリグラムのアルコールが出たこともわかった。
■キッチンドリンカーだった? 事故後、IT企業経営者である夫は調べに対し、吉澤被告が「毎日キッチンで酒を飲んでいた」と“キッチンドリンカー”であったことを話していたが、11月29日の公判で夫は情状証人として出廷すると、吉澤被告の飲酒について「急激に減っています」と証言。だが、検察側からの「全く飲んでいないわけではない?」という質問に「そうです」とも回答。吉澤被告が完全に断酒しているわけではない現状を伝えた。
11月28日、肝不全により57歳の若さで亡くなったコラムニストの勝谷誠彦さんも、酒に関する本を数多く上梓するほど「酒好き」として知られていた。8月には自身が配信するコラムで、重症のアルコール性肝炎「劇症肝炎」で入院していたことを公表。関係者によると、その後、療養するもなかなか酒を断てなかったとされる。 適量であれば「酒は百薬の長」。だが、自分で酒の飲み方をコントロールできなくなり、その後の人生を左右させてしまうことは元TOKIOメンバー山口達也しかり、著名人に限らず往々にしてある。なかでも、最も重症な部分に位置するのが「アルコール依存症」だ。いわゆる予備軍を含めると、国内に900万人いるとされている。 疾患の啓発を促す厚生労働省のホームページにも、アルコール依存症は「ひとことでいうと、『大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態』」と示している。依存症の治療方針は、かつて「断酒」が原則だったが、近年は酒量を控える「節酒」の治療法も試みられている。ここでは、アルコール依存にまつわる治療法を紹介する。* * *
東京都に住む、Aさん(39歳)は、23歳でテレビ番組の制作会社にADとして就職し、元々付き合いで飲む程度だった酒量が仕事のストレスや不規則な生活から増えた。プロデューサーになった35歳のころから、酒量は更に増えた。2年前、仕事中に突然吐血し、総合病院に運び込まれ、そのまま入院。肝硬変からくる食道静脈瘤破裂だった。治療した医師は、アルコールが病気の原因と考え、治療後に、アルコール依存症の専門病院である久里浜医療センターを紹介。Aさんはそこでアルコール依存症と診断された。
アルコール依存症とは、長い間大量に飲酒を続けることで脳に異常が起こり、自分で飲むことをやめられなくなってしまう病気だ。
「アルコール依存症は、以前は中年男性の病気とされていましたが、近年は社会環境や生活習慣の変化により高齢者や女性の患者が増え、うちを訪れる患者さんの約半数を占めています」
久里浜医療センター院長の樋口進医師はそう話す。
アルコール依存症の治療は「断酒」、つまり一生お酒を飲まないことが基本となる。そのためには患者本人の意志が何よりも重要で、その意志を継続させるために心理社会的治療と薬物療法を併用して行う。
心理社会的治療は、大きく三つ。一つめは教育だ。アルコール依存症の特徴は、本人が自分はアルコールに依存しているという事実を認められないことにある。そのため、まずは、アルコール依存症という病気を理解し、自分が依存症であることを把握させる。二つめは患者たちを集めて行う認知行動療法。なぜ入院するに至ったのか、立ち直るためにはどうしたらいいのかを本人に考えてもらい、患者同士意見を出し合う。三つめは個々に対するカウンセリングだ。この三つを繰り返し、患者自身に断酒を決断させ、実行させる。
心理社会的治療は症状の重症度によって「入院」、または、「外来」のいずれかで行う。Aさんの場合は食道静脈瘤破裂の治療で断酒できていたため、外来で通院しながら、日常生活を送るための認知行動療法、カウンセリングなどの治療を受けた。
一方、断酒を継続させるために薬物治療が併用される。従来は「抗酒薬」と呼ばれるものが使われてきた。一口酒を飲むだけで悪酔いを引き起こす働きにより、酒に対する嫌悪感を抱かせ、飲酒を予防する薬だ。しかし抗酒薬は副作用が出やすく、心臓や肝臓に問題を抱えている人は使用できない。また、患者自身も副作用の強さから怖がって飲みたがらない人が多かった。
■飲酒欲求を抑える断酒補助薬が登場
これに対し、2013年5月、飲酒欲求そのものを抑える断酒補助薬「レグテクト(一般名・アカンプロサートカルシウム)」が登場した。アルコール依存症になると、脳の興奮に関係するグルタミン酸神経の活動が高まり、飲酒欲求を高める。レグテクトはその神経の働きにブレーキをかける薬だ。抗酒薬とは異なり、副作用も少ないため、ほぼ全ての患者に使用できるという利点がある。 ただ、レグテクトは1日3回服用する必要があるため、断酒への強い意志と規則正しい生活が必要になる。また、飲酒欲求は脳内のさまざまな神経伝達物質が関係しており、レグテクトが働くのはそのうちの一つだ。そのため「レグテクト単体での効果はまだ限定的だ」と樋口医師は言う。 今後、日本においてより効果的なアルコール依存症治療を進めるためにも、新薬の開発・承認が急がれる。
酒指導での治療も実験的にはじまる
アルコール依存症の治療で大きな問題点としてあげられるのが、推計109万人の患者のうち、治療を受けている人数が約8万人と極端に少ないことだ。肥前精神医療センター院長の杠(ゆずりは)岳文医師は、一般の病院でもアルコール依存症の治療が受けられるように、国立病院機構福岡病院の中にアルコール専門外来を09年に開設した。ここではアルコール依存症の治療目標に、これまでの断酒に加えて、飲酒量を減らす「節酒」も新しく選択肢として実験的に加えた。
「現在、予備軍を加えると、アルコール依存症患者は900万人程度いるとされています。一般の病院で、しかも節酒を治療目標に加えることで、より多くの人が依存症の治療につながるようにしたのです」(杠岳文医師) 節酒の治療は外来で15分から30分程度のカウンセリングを行う。カウンセリングの目的は、このまま飲み続けるとどのような体の病気になるか正しい知識を教えることと、具体的な目標を立てたり、飲酒日記をつけたりして、自分なりの節酒の方法を一緒に考えてもらうことだ。「たくさん飲む人ほど自分の飲酒量に不安を持っています。ただ、自分だけでは量を減らせないので、適切な指導が必要です」(同)
とはいえ、すぐに節酒がアルコール依存症治療の選択肢に加わるわけではないと杠医師は語る。「アルコール依存症治療の基本は断酒だと思います。ただし節酒を治療の選択肢に入れることで、比較的軽症な患者層や予備軍への治療が広がることを期待しています。また13年からメタボ健診に減酒支援が加わったことで、アルコール依存症の予防に節酒が効果を発揮するでしょう」
■アルコール依存症の診断基準
次のうち3つ以上当てはまれば、アルコール依存症の恐れがあります。・お酒を飲めない状況でも強い飲酒欲求を感じた・自分の意思に反してお酒を飲みはじめ、予定より長時間または多量に飲み続けた・お酒を飲む量を減らしたり、やめたときに、手が震える、汗をかく、眠れないなどの症状が出た・飲酒を続けることで、お酒に強くなった・飲酒のために仕事やつきあいなど大切なことをあきらめた・お酒の飲みすぎによる体や心の病気がありながら、お酒を飲み続けた
師走です皆様もどうか気を引き締めて良い年を迎えましょうよ