同一労働・同一賃金 正規と非正規の働き方(vol.58)
非正規よりも「待遇は良い」が「やる気は低い」正規社員。満足度を徹底比較
要旨:
- 正規・非正規の待遇格差は、大企業ほど大きい。
- 社員の士気(モチベーション)は非正規の方が高い。
- 非正規は会社規模によって平均年収が変わらない。
4月から順次適用となる働き方改革法の一つに「同一労働・同一賃金の原則」(2020年4月より適用開始)があります。これにより、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の格差が解消されることが期待されますが、そもそも現在、正規と非正規の間でどのくらい満足度や待遇に差があるのでしょうか?
今回の調査レポートでは、Vorkers(現:OpenWork)に投稿された「正規雇用労働者(正社員)」及び「非正規雇用労働者(契約社員)」のクチコミ評価をそれぞれ集計し、「格差」を分析しました。Vorkers(現:OpenWork)に蓄積された約30万人のデータから考察します。
同一労働・同一賃金とは
同一労働・同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)であるか、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)であるかを問わず、同一の賃金を支給するという考え方です。
同一労働・同一賃金の導入は、同一企業・団体における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すもので、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。
正規の方が満足度が高い、は固定概念!?「正規・非正規 満足度比較」
正規、非正規、満足度が高いのはどちらなのか。Vorkers(現:OpenWork)に寄せられた「正規雇用労働者(正社員)」及び「非正規雇用労働者(契約社員)」の評価スコアを項目ごとに集計しました。全体で見ると、総合評価では双方に差は無く、項目別では非正規の方が高評価のものも多くあります。その中でも特に差が大きかったのが「社員の士気」の項目です。Vorkers(現:OpenWork)の過去の調査で、新入社員の「社員の士気」は最初の3年間で一気に低下することがわかっています。長期に勤める正規社員よりも、有期雇用である非正規社員の方がモチベーションをフレッシュに保ちやすいのかもしれません。また、正規社員は非正規と比較して、会社に不満がありながらも転職活動をせずに働き続ける社員の割合が高いことも影響していると考えられます。
ワークライフバランスについては、残業時間と有休消化率の両方とも非正規の方が良い結果となりました。
年収格差は大企業で拡大。非正規の平均年収は企業規模で変わらず。
満足度比較で、正規の方が高かった項目の一つが、「待遇の満足度」です。Vorkers(現:OpenWork)に投稿された年収データから、平均年収を比較しました。全体では正規の方が187万円高いという結果になりましたが、会社規模別にみてみると、中小企業では102万円の差なのに対し、大企業ではその倍以上の216万円の差があります。待遇の満足度スコアの差が大企業で大きくなるのは、金額の差であると言えるでしょう。また、正規は企業規模で平均年収額が変わるのに対し、非正規は同額である点も興味深い結果となりました。
データの集計について
データの収集方法
「Vorkers(現:OpenWork)」の会社評価レポートへの回答を通じてデータを収集しています。
会社評価レポートの回答条件は下記の通りです。
- 社員として1年以上在籍した企業の情報であること
- 500文字以上の自由記述項目と、8つの選択項目に回答いただくこと
- 月間残業時間(実数)、有休消化率(実数)についても収集
対象データ
Vorkers(現:OpenWork)に投稿された「正規雇用労働者(正社員)」及び「非正規雇用労働者(契約社員)」295458人のクチコミを対象データとしています。年収については数値集計を開始した2018年5月以降621162人のデータを対象にしています。(集計期間:2016年1月~2019年1月、年収集計期間:2018年5月~2019年1月)