過敏性腸症候群の治療③:事務局便り#10
- FODMAP(フォドマップ)とは
- 低FODMAP食の進め方
- 低FODMAP食の注意点
*動画とブログの中身は同じです。
本日の内容は、過敏性腸症候群の治療についての第3回目で、前回に引き続き食事療法について説明します。
最初にFODMAP(フォドマップ)について説明します。
それから、低FODMAP食の進め方についてと、その注意点についても少し触れたいと思います。
FPDMAPは小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすいオリゴ糖、二糖類、単糖類、そしてポリオール類といった糖類の頭文字をとった造語です。
それぞれ小麦や、玉ねぎ、乳製品、果物、ハチミツ、マッシュルームやキシリトールなどに含まれることが多い糖類です。
インターネットでFODMAP/フォドマップと検索すると、具体的な食品やレシピがたくさん出てくるので、過敏性腸症候群で悩んでいる人たちは自分で調べて試していることも多いようです。
低フォドマップ食は、過敏性腸症候群の症状を改善する食事法として、オーストラリアのモナシュ大学で行われた研究結果から提案されました。
モナシュ大学のウェブサイトでは、この食事法が説明されています。
その概要を簡単に説明します。
まず、FODMAPの成分が多い食品を2~6週間避けてみます。
症状が改善すれば、FODMAPが自分に合わない可能性があると考えます。
この場合、8~12週間をかけて控えていた高FODMAP食品を一つずつ試し、症状の悪化がないかを確認します。
悪化がなければ、その食品は自分にとって問題がないものと考えます。
これを繰り返し、自分に合った食べ物リストを作っていきます。
なお、最初にFODMAPを含む食品を控えても症状が変わらない場合は、そこで終了して構いません。
モナシュ大学のウェブサイトでは、この食事法をサポートするアプリも提供されています。
つづいて、低FODMAP食を試す時に気をつけるポイントを3つ紹介します。
まず、モナシュ大学の報告によると、低FODMAP食を試した人の74%で症状が改善されました。ただし、この結果には過敏性腸症候群だけでなく、フルクトース吸収不良の人も含まれています(※1)。
つまり、全ての過敏性腸症候群に有効な治療法とは限らないわけです。
このため、先ほども述べた通り、低FODMAP食に変えてみても症状に改善が見られなければ、無理に続ける必要はありません。
次に、日本の食事も欧米化してきていますが、日本人と欧米人ではこれらの糖類を分解する腸内細菌が異なるとされています。
そのため、低FODMAP食が日本人に本当に効果的かどうかはわかっていません。
当てはまれば儲けものぐらいの気持ちで挑戦しましょう。
最後に、低FODMAP食は効果があれば、ある程度継続することが大切ですが、このときも無理をせずに行うことが重要です。
研究では栄養士が食事の栄養バランスやカロリーに気を配っていましたが、自分で試す場合は、栄養不足にならないように気を付ける必要があります。
次回は過敏性腸症候群の治療における、睡眠と運動について説明します。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成
IBSすっきりプロジェクト中央事務局 臨床試験の参加者募集中!!
e-mail: suciri117@gmail.com
ホームページ:https://suciri.localinfo.jp/
集英社プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】を連載中です。特に第10回および第11回は過敏性腸症候群についてです。
※1 Shepherd SJ, Parker FC, Muir JG, Gibson PR. Dietary triggers of abdominal symptoms in patients with irritable bowel syndrome: randomized placebo-controlled evidence. Clin Gastroenterol Hepatol. 2008 Jul;6(7):765-71. doi: 10.1016/j.cgh.2008.02.058. Epub 2008 May 5. PMID: 18456565.