神の母(祭日)お告げの祈り(教皇フランシスコ 2024年1月1日)
[ポイント]
愛は相手に空間を空ける
「沈黙の母」―「アドラチオの母」
「母」の沈黙
沈黙とアドラチオの中で、主を中心に置く
驚きとアドラチオに満ちた沈黙
→主に空間を空ける:降誕から十字架のもとまで…
[試訳]
***
まなざし
愛する兄弟姉妹の皆さん、新年、おめでとうございます!
至聖なる神の母マリアを祝うこの日、
私たちに与えられた新しい時を、マリアの思いやりに満ちたまなざしのもとに置きましょう。
この一年、マリアが私たちを守ってくださいますように。
***
「母」の沈黙
今日、福音は、
マリアの偉大さが、何か並外れた行為を果たすことにあるのではないことを、明らかにしています。
むしろ、天使たちから知らせを受けた羊飼いたちが、ベツレヘムに向かって急いでいる間(ルカ2・15-16参照)、
マリアは沈黙のうちに留まっていました。
「母の沈黙」、それは美しい特徴です。
それは単に言葉の不在(言葉がない)のではなく、
神が働いておられる不思議に対する、驚きとアドラチオ(礼拝)に満ちた沈黙です。
聖ルカは記しています。
「マリアはこれらのことをことごとく心に留め、思い巡らしていた」(2・19)。
そのようにしてマリアは自分の中に、お生まれになった方への空間を作りました。
沈黙とアドラチオのうちに、イエスを中心に置き、救い主としてのイエスを証ししました。
沈黙の母、マリア。アドラチオの母、マリア。
***
このように、イエスを胎に宿し、生んだからというだけでなく、
イエスの場所を占めることなく、イエスを生んだからこそ、彼女は母なのです。
十字架の下、最も暗い時であっても、マリアは沈黙のうちに立ち、
主に空間を作り、私たちのために主を生み続けてくださるでしょう。
***
「沈黙の聖堂(cattedrale del Silenzio)」:神と人とが出会うことが出来る場
19世紀の、詩人である修道士が書いています。
「沈黙の聖堂であるおとめマリアよ、[…]
あなたは、私たちの肉を楽園の中に、神を肉の中に運んだ」
「沈黙の聖堂」:美しいイメージです。
マリアは、彼女の沈黙と謙虚さをもって、
神の最初の「聖堂」、
神と人とが出会うことの出来る場所となりました。
***
私たちの母たち
けれど、私たちの母親もまた、その隠れた気遣いや思いやりによって、
しばしば沈黙の壮大な聖堂となります。
母は私たちをこの世に送り出し、私たちが成長できるように、
何度も人目を引かず、私たちをフォローし続けます。
***
愛は相手に空間を作る
愛は決して窒息させません(押さえつけません)。
愛は相手に空間を作ります。
愛は私たちを成長させます。
***
耳を傾けるための沈黙
兄弟姉妹の皆さん、
新しい年の初めに、マリアを見つめましょう。
そして、感謝の心をもって、母親のことも考え、見つめましょう。
特に沈黙の中で培われる愛を学ぶために。
相手の尊厳を尊重し、相手が自由に自己表現できるようにし、
あらゆる形の所有、抑圧、暴力を拒絶しながら、
相手に空間を作る愛。
今日、それがどんなに必要とされているでしょうか!
互いに耳を傾け合うための沈黙が必要です。
今日の「世界平和の日」のメッセージにあるように、
「人間が利己主義、自分の利害、利益欲、権力欲の誘惑に負けるとき、
自由と平和的共存は脅かされます」。
***
愛は、尊敬、やさしさから成る
それに反して、愛は尊敬から生まれ、優しさから生まれます。
このように、愛は障壁(バリア)を取り払い、
兄弟的な関係を生き、より公平で、より人道的で、より平和な社会を築く助けとなります。
***
今日、神の聖なる母、私たちの母に祈りましょう。
新しい年、私たちが、いのちを生み出す この柔和で静かな、控えめな愛において成長し、
世界に平和と和解の道を開くことができますように。