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サメとゾンビと空伏空人

血の轍:押見修造(ビックコミックスペリオール)

2018.12.04 16:24

 脅迫されたので書きます。

 Youtubeでやってるゲーム実況とかtwitterでやってる短い宣伝動画とかに出演率の高いらのちゃんだが、とうとうブログにまでやってきた。恐ろしい子だぜ。




 そんなわけで今回紹介する漫画は『血の轍』。

 作者は押見修造。『惡の華』や『僕は麻理の中』の人である。

 良くも悪くもまあ気持ち悪い作風の人で、『良く』の方の人間である私からしてみればとても大好きな作者さんである。

 出会いは悪名高きアニメ『惡の華』だった。だって神聖かまってちゃんの「の子」がop歌うって言うんだぜ。見るしかねえじゃん。アニメOPの「惡の華 -春日高男-」はぜひ聞いてほしい。「惡の華 -仲村佐和-」も「惡の華 -佐伯奈々子-」も。キャラとゲストボーカルがピッタリ合いすぎてかつ全員灰汁が強い。本家宇宙人のフルバージョンが物足りなくなってしまっているほどである。灰汁が強すぎたんや。の子と後藤まりこと南波志帆だからね。

 あとedの「花 -a last flower-」もいいぞ。なんならフルで歌える。


 そんなわけで「血の轍」。

 世間では「最強のマザコン漫画」だとかそんな感じに言われている。

 マザコン。マザーコンプレックス。

 またはマザーがヤベー漫画だ。


 マザーの名前は静子。朝勝手に息子の部屋の中に入ってきてくすぐって起こし、レンジでチンするタイプの肉まんとあんまんどっちがいいか聞いてくる人である。

 主人公である息子の静一が”言うことを聞いてくれる良い子”であると認識すると肉まん確定ガチャになり、やばい、離反しかけていると思うと手作りのサンドイッチをつくり、夕飯にはカレーを用意することで「ほら私もしっかり役に立ってる! あなた達の役に立ってる! そんな私を捨てるの!!」とアピールしてくる。

 あと息子の部屋のドアを普通に開くタイプの人だ。父親の方は二回ノックしている。偉い。

 家族関係は良くはない。離婚するほどでもないし喧嘩するほどでもないけど子供からすると「別れる機会探ってんじゃあねえの?」みたいな雰囲気を醸しだしている感じ。

 実際一回家を出よう。みたいな展開になった。もちろん、静一を連れて行こうとしている。これは「静一が心配」というよりは「自分を肯定する存在が必要」が近いだろう。ちなみに俺は母親に「もう嫌だ。沖縄に行こうよ。あんた行きたい大学あったんでしょう?」と数度言われたことがある。俺が行きたかった大学は京都にあるのでそれは間違いだ。

 エロくて綺麗なマザーなのだが、作者のインタビューを見る限り「息子フィルター」がかかっているようだ。静一の感情がのった視界。ゆえにマザーは綺麗に映っている。

 表紙は大体静一とマザーの写真。赤ん坊の頃から小学校入学式まで進んでいる。巻末にアルバムが描かれていることから恐らくこれはマザーが大事に保存している写真だろう。子供の子供の頃(ややこしいな)――幼少期の頃のちょっとしたことも大体全部覚えている。五歳ぐらいの話を急に、まるで昨日あった出来事であるかのように「覚えてる?」と話し始める。覚えているはずがないので覚えている体で話す。マザーは気づいているかもしれないし、気づいていないかもしれない。ただ話せたらそれでいいのかもしれない。

 全体的に”私が”という主張が見え隠れしている。

 ”私が”どんな思いでいたか。

 ”私が”どれだけつらかったか。

 ”私は”こう思っていたのに。

 ”私の”なにが分かるんだ

 ”私が””私が””私は””私の”

 感情的に叫ぶと満足する。言ってやった。という気分が強いのだろう。

 だがそれは大体”私が”という感情が強すぎて言われた方はなんにも理解できない。なんなら前後の文脈があってなくてひたすら困惑する。逆にこっちがなにを思っているのか理解するつもりはない。「こういう子供」に育てたくて育てたのだから「こういう子供」になっているはずだと信じて疑っていないのだ。悪かったね真面目に生きずにラノベ作家になってブログ書いたりゲーム実況してたりして。

 とどのつまり、自分が上にいたいのだと推測される。なので否定されるとマザーはフリーズする。その上でマザーに必要なのは「自分を肯定する誰か」であり「こういう子供」である。目の前にいる子供である必要はない。現実から逃げだすことがある。あと死のうとする。死にたくて死のうとしているのではなくて、脅すための死なのだが、結構真面目に死のうとすることもある。”私は”悪くなくて”あなたが”悪いのだ。と分かるように死ぬ。ものすごい心に悪い。


 そんな感じのマザーが出てくる。

 そんなマザーから逃げた方がいいと思いつつ、逃げたあとが恐くて逃げられない息子の話だ。

 しかしどっちが正解なのだろう。

 強い人はきっと、突き放すのがどちらのためにもなる。とか、そんな強いことを言うだろう。しかし俺にはそれが正解とは思えないのである。まあ、じゃあ、ついていくのが正解だと思うのかと言われたらそうでもないような気がする。どっちが正しいんだろうね。

 皆納得いく終わり方は無理だろうね。皆幸せはもっと無理だろう。

 だから、こういうもんは困ったものなのだ。

 そんな漫画だ。

 胃が痛くなるだろう。誰もが。

 だってこういうの、普通によくあることじゃん。