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Nozomi Matsuda

ヒミツノハナシ(3)

2018.05.13 22:00

2016年5月。

あの日も放課後、自習スペースに座ってひたすらシャーペンを走らせる松田の背中が、階段を上る私の目に映る。

肩に手を置き声をかけた。

「松田、どうだ?勉強進んでるか?ちょうど部活も休みに入ったしな。」

私がそう尋ねると松田は、苦笑いをしながら答えた。

「わからないところが多すぎて全然進まないし、やればやるほどわからないところが増えてってる。」

「そうか。よしっ、やるか!」

私は松田を元気付けるつもりで言葉を放った。

すると松田は驚いた顔をして私を見た。

「先生ってそんな大きな声出るんだね。」と笑いながら言った。

しばらく松田が黙々と問題を解いていたのだが途中で手が止まった。

「どうした?なんかわかんないか?」私はそれに気がつき、すぐさま声をかけた。

「あ、いや、これわかんない。」

松田はわからないというその問いを指差して言った。

「あー、それはXの与えられた値をさっき出した式に代入して出た答えをもう一方の式当てはめるんだよ。」

さらっと説明したのだが松田はイマイチ理解できなかったようでもう何度か説明を繰り返した。

すると松田はわかってくれたようで、問題の続きを解き始めた。

「そうだ松田。解けない問題はいつもそうやって止まって考えるのか?」私は尋ねた。

「え?逆に止まらないの?」松田は驚いた顔をして答えた。

「あのな、止まってても絶対答えなんて出ないんだよ。数秒考えて出てこないものは絶対解けない。だから、解けなくなったら答え見るか飛ばしてといたほうがいいよ。」私は松田にアドバイスをした。

「うん。でも止まらないって難しいね。」苦笑いしながら問題の続きを解き始めた。

松田が数学を嫌いじゃなくなりつつあるのかもしれない。

松田は毎日のように勉強をするようになった。

あれだけ大嫌いだと言っていた数学の勉強を。