変わったけれど、変わらない
MaiSaiに行った。
女性政策研究家の三井マリ子さんが、登壇するというのが大きな理由だ。
イプセン専門家で翻訳家のアンネ・ランデ・ペータースさんとのリレートークが展開されている。
イプセンは、妻の影響を受け、「人形の家」のノラが家でする結末に変えたそうだ。
しかし演じる役者が「女性が家を出るストーリーなんて演じられない」と当初の舞台公演時は拒否。やむなく、イプセンは2通りの結末を作ったとか。
イブセンが人形の家を書いたのは1879年。
ものがたりは、「わたしは私の人生を生きる。父親の人形でも夫の人形でもない」と気づきを得る、女性の精神的自立が軸になっている。
この時代にしては実に画期的な、あまりに画期的な展開だ。
ノルウェーは平等の国、と言われるが、当時はまだまだ女性の地位は低く
妻は夫の持ち物という位置付けであり結婚=家と夫を守るのが妻の役割という時代だった。
翻って学生時代の友人たちとのお茶会。
ひとりは、寒村に嫁いだ。かの地域は、いまだ、伝統的な風習を守って生活しているのだという。
長男の嫁は、家のなかのすべての家事育児を担い、親戚縁者がくればもてなす。
朝夕の、お仏壇へのお供えタイム、お祈り(というのかな)タイムは必須。
女性の月のものは、「汚れ」とされその期間、女性は別部屋で生活しなければならない。
学生時代は、日本各地をあちこちバックパッカーとして旅行したり、男子学生とも対等に議論を交わしていた彼女。
このような生活がかれこれ20年以上は続いている。3人のおこさんは現在進行形で子育て中だ。
まるで奴隷のような生活ではないか!?と驚愕する。
「仕事は、あなたは仕事をしたいと思わないの?」と思わず聞くと
「家事一切と子育てやっていると、そんな時間はない」
という。
いや、そういうことを聞いているのではなくて、あなたはどうしたいか、と聞いているのだけれど、と思う。
幸い?夫は優しく理解ある方で、料理や子育て関連のあれこれも積極的に関与してくれるのだという。
また一人の友人は、「こんどチベットツアーに参加するの!誰か一緒に行かない?」と元気いっぱいだ。彼女は仕事をしており、もちろん、夫と子どももいる。
そんな彼女は、NHKの大河ドラマを見てこう感じたという。
「今の日本って当時とぜんぜん変わっていないじゃないって思うのよね」。
MaiSaiでは、三井さんが、いまだ家父長制はびこる日本における女性議員輩出の重要性、比例代表制導入の重要性について熱弁されている。
かたや幸福度の高い、ノルウェー、女性議員や首相もあたり前にあるノルウェーからやってきた、イプセン専門家で翻訳家のアンネ・ランデ・ペータースさんは一足飛びに、今のノルウェーになったわけではない、と優しく語る。
時代は変わった、社会の、女性に対する捉えかた、位置付けも変わってきた。
しかしいまだ、男性も女性も生きづらさを覚える人の多い現実がある。
けっして「自己責任」「本人の資質の問題」ではないだろう。
構造、根強く蔓延る男性優位、ミソジニー思考に目を向け、自らがそれらと正面から向き合い「自分はどうするか」を軸に淡々としかし断固として日々の営みを続けること。
そしてときに声高にアクティブに社会に働きかけることこそ大切なのでではないか。