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重戦車総攻撃(1966)THE YOUNG WARRIORS

2024.05.15 12:08

〈ビデオ解説より〉


主演のジェームス・ドルリー(1934年生れ)は馴染みが薄いので、簡単に紹介しておく。「禁断の惑星」(56年制作、同年本邦公開)でデビュー、次いでプレスリー主演の「ラブ・ミー・テンダー」に出た。以来B級作品の出演が続いたが、テレビの「バージニアン」(64-69年)で人気を獲得した。強い個性はないが、甘い雰囲気を備えた二枚目である。さて、軍隊で最もワリに合わないのが歩兵だ。戦争が始まると最前線に出て、敵弾をモロに受ける危険に晒されている。その上、カッコもよくない。66年制作のこの映画は、軍隊の中で最も冴えない歩兵の悲哀を描いたものである。第二次大戦時ドイツと戦っているクーリー軍曹(ジェームス・ドルリー)の隊に三人の兵隊が配属される。彼等は実戦の経験が乏しく、うち一人は実戦の経験なしときて隊長はガックリする。この愉快なイントロがエンディングで効果を発揮する。クーリーの歩兵小隊はハッカー(スティーヴ・カールソン)、ガスリー(ジョナサン・ダリー)その他が中心になっているが、臆病者、ヒョーキン者、愚痴っぽい男、リューマチ病みといった連中の集まりで、何ともしまらない。唯一頼りにしていたハッカーも無抵抗の敵兵を射殺し隊長に意見されてから調子が狂ってしまう。しかも怖気づいて敵前逃亡するものまでいる始末である。役立たずの兵を率いて、斥候、突撃、退却をくり返しながら戦う隊長の巧みなコントロールが見どころの一つでもある。戦争映画だから戦闘シーンが多いのは当然だが、ここの作品の狙いはズッコケ兵士たちが見せるドジな行動やユーモラスな会話によって人間味を描くことだったのかも知れない。勇敢に戦うことだけが兵隊ではない、という角度を変えた視点がユニークな戦争映画にしている。オーバー・テンションの日本人には考えられない作り方である。普段はチャランポランでも戦いには勝つ、それがアメリカ兵なのだ。最後は重傷を負った隊長が戦列を離れ、手柄を立てたハッカーが隊長に昇格する。そこに頼りない新兵が配属されてガックリの冒頭と同じシーンは落語の「廻りオチ」に似たおかしさである。とにかく、歩兵は大変なのだ。脚本のリチャード・マセソンは有名なSF作家で、「縮みゆく人間」、「ビート・ジェネレーション」、「恐怖の振り子」、「アダムとイブ」など映画の世界でも活躍している。


●監督:ジョン・ペイザー

●原作:リチャード・マセソン

●キャスト

 ジェームス・ドルリー

 スティーヴ・カールソン

 ジョナサン・ダリー

 ロバート・パイン

 他

●1966年アメリカ映画●1967年日本公開