原生林
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s009/010/030/010/040/020/20190226130458.html 【ツバキ原生林】より
久賀島の植生を特徴づけるものとして、ヤブツバキの自生があげられます。平成21年度に市が実施したツバキ分布調査(コドラード調査)では、久賀島に811,580本のヤブツバキが確認されました。これは、他の島と比べても自生密度は非常に高いものになっています。
久賀島では、ヤブツバキの原生林が2箇所所在します。原生林とはいえ、人跡未踏の原始林というわけではなく、古くから人の手によって保護・管理され、ヤブツバキ以外の樹木を伐採することによって形成されたヤブツバキの純林です。
長浜のツバキ林
久賀島の南東部の海岸に位置し、樹林面積は6,800平方メートルほどです。
やや浅い谷合とゆるい斜面に発達しており、土壌は砂礫が多い土質のため痩せ地であるため大木は少ないです。おおむね幹まわり30から50センチメートル程度のものが大半を占めます。林内の植生は貧弱であり、ヤブツバキの下層には1メートル前後のカクレミノ、ヤブニッケイ、スダジイ、ハマビワなどが広がり、ツバキ林を取り囲む樹木にはフウトウカズラ、イタビカズラ、テイカカズラなどの蔓性植物が着生しています。
亀河原のツバキ林
久賀島の南西部に位置し、樹林面積は6.7ヘクタールほどです。北向きの山の中腹から海岸際まで斜面全体をヤブツバキで覆い尽くした純林です。
海岸に近い周辺部のものは直接強風を受けるためか分枝が多く高さ4メートル前後であり、一方樹林内部のものは直立し、高さ7から8メートルと特に大木はありませんが、幹まわりは平均して45から60センチメートルほどです。
ツバキ林内には他の樹木はほとんどありませんが、下層にはツワブキ、シダ類が一面に広がります。また、管理が行き届かないためか、現在ではツバキ林の大部分をツタカズラが覆い尽くそうとしています。ツバキ分布調査では、約10,000本のヤブツバキが確認されています。
久賀島ではまた、日本に古くから野生していた日本固有の柑橘類であるタチバナ(現在では希少種となっている)の自生が数本確認されています。
http://boken.nagasaki.jp/spot/boken343.html 【冒険 343原生林や森林公園、五島で椿めぐりをしてみよう!】より
気候が温暖な長崎県の五島列島には、椿の原種である「ヤブツバキ」など、椿がたくさん自生しています。また、森林公園や教会の庭には、椿の木が植えられ美しい景観を造り出しています。五島をドライブしたり散策したりするときには、そこにある椿の木や花を何気なく見て通り過ぎてしまうかもしれませんね。でも、それぞれの椿にまつわるストーリーや歴史を知ると、もっと楽しく観賞できると思います。
五島の久賀島には数多くのヤブツバキが自生しています。2009年に行われた椿分布調査では、その数80万本以上。島としては大変多い数です。これらのヤブツバキは、長浜地区と亀河原地区で原生林を形成しています。ただし原生林といっても、手付かずというわけではなく、これまで長い間人間によって管理され保護されてきました。
長浜の原始林は久賀島南東部の海岸に面したところに生育していますが、この辺の土には瓦礫が多く肥沃ではないため、大きなヤブツバキは生育していません。幹回りにして30〜50センチ。ヤブツバキの周辺にはカズラ類のつる性の植物も生えています。
一方、亀河原の原始林は久賀島の南西部にあります。海岸から近くの山の中腹までのエリアを覆うように自生していて、他の植物はあまり見られません。このエリアのヤブツバキは少し大きめで、幹回りは45〜60センチです。
©五島市 久賀島のヤブツバキの原始林
©五島市 海岸近くにあるヤブツバキの原始林
©五島市 可憐に咲くヤブツバキの花
椿「玉之浦」は赤い花びらに白い縁のある美しい椿です。その名前は、五島福江島の南西にある玉之浦地区で発見されたことに由来しています。1947年、炭焼きを生業としていた有川作五郎さんが父ヶ岳で偶然にも見つけたのがこの椿でした。その後、玉之浦の町長だった藤田友一さんがこの椿に「玉之浦」という名前を付け、1973年に開かれた全国椿展に出品したところ、大変な人気を博し、それから広く世に知られるようになったのです。
ところが残念なことに、そうした人気のために多くの人が五島を訪れ、玉之浦の枝や根を乱獲したため、原木は枯れてしまいました。ただ、そのように多くの人が各地に持って行ったことで、その子孫が日本だけでなく世界中にも広がり愛されるようになりました。
©五島市 福江島の玉之浦地区で発見された椿「玉之浦」
©五島市 椿展に出品された玉之浦は大変な人気を博しました。
©五島市 赤い花びらに白い縁取りがとてもうつくしい「玉之浦」
「聖母の大椿」は福江島の三井楽にある大きな椿の木のことです。三井楽にはキリスト教信者が多く、この椿の木がキリシタンの歴史を見守るかのように、そこに長い間生育してきたということで、聖母の大椿の名前が付けられました。大椿を見るには、途中アーチのようになった椿の木のトンネルを抜けて進みます。しばらく行くと広場があり、そこに「聖母の大椿」が立っています。木の前に名前が書かれた札が立っているので分かります。
福江島の東部、鬼岳の中腹には「五島椿森林公園」があり、この公園の中に五島椿園と鬼岳樹木園が作られています。五島椿園には、自生のヤブツバキを含めた270種以上、約3000本の椿が植えられています。この中には、すでに紹介した「玉之浦」もあり、特にコーナーを設けて鑑賞できるようになっています。五島椿森林公園はよく整備され美しく、椿の品種も充実した質の高い公園であることが高く評価され、2010年に国際優秀椿園に認定されました。
©五島市 三井楽にある「聖母の大椿」
©五島市 大きく成長した大椿のところどころに椿の花が見られます。
©五島市 国際優秀椿園に認定された「五島椿森林公園」
キリスト教の信者が多い五島には、教会も数多く建てられていますが、その中でも堂崎教会と水ノ浦教会では、敷地内に椿を植えています。
県の有形文化財に指定されている堂崎教会の天主堂は五島で初めて建てられた天主堂で最初は木造でしたが、1908年にレンガ造りの教会堂が完成しました。この赤レンガの建物に庭に植えられた椿の緑の葉と赤い花が良く映え、また、教会堂の中にあるステンドグラスには椿がモチーフとして使われています。
福江島の北部にある水ノ浦教会は、和洋折衷の建築様式を持つ白壁の美しい教会です。1797年に外海から数人の信者がこのエリアに移り住んだことからキリスト教が広まったと言われています。最初の教会堂は1880年に建てられましたが、その後1938年に現在の姿に作り変えられました。敷地内に植えられた椿の花は教会堂の白い壁にマッチして美しい光景を造り出してくれます。
©長崎県観光連盟 堂崎教会と椿 ©長崎県観光連盟 水ノ浦教会と椿
五島では毎年2月になると椿まつりが開かれ、2021年も2月20日~2月28日に開催されることになっています。このイベントでは椿に関する展示や椿の植樹、また椿マラソンなどが予定されています。2020年の第26回の椿まつりは新型コロナウィルスのために開催されず残念でした。その分2021年の第27回五島椿まつりに期待したいですね!開催状況など詳しい内容は、公式サイトで確認してください。
五島の椿にまつわるお話や観光スポットを紹介しました。ヤブツバキの原生林や美しい玉之浦の発見、そしてキリスト教信者を見守ってきた聖母の大椿や森林公園など、五島はまさに椿の里ですね!2021年の2月までには新型コロナウィルスも収まって椿まつりが無事開催されるよう祈らずにはいられません。その時にはぜひ五島に出かけてさまざまなイベントや椿めぐりを楽しんでください。
©五島市椿まつりでは椿に関する展示会が開かれます。 ©五島市椿の木の植樹風景
©五島市五島つばきマラソン
写真提供:五島市 文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
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