『世界史を変えた新素材』:佐藤健太郎
2018.12.08 06:15
佐藤健太郎著『世界史を変えた新素材』おもしろい!
サイエンス部門の方が書く世界史、これ歴史家の方々と切り口が違うからほんとおもしろい!
現在のシリコンバレーには、アドビシステムズ、アップル、グーグル、ヒューレット・パッカード、インテル、フェイスブック、オラクル、サン・マイクロシステムズ、ヤフーなどが本拠を置く。これらの企業の影響力は、いまさら改めて語るまでもないだろう。
こうして並べてみるとあまりに凄まじい進歩で、とうてい一つの地域でわずか数十年の間に起きたこととは思えない。だが歴史を振り返ってみると、ある時代のある地域に才能が集結し、一挙に巨大な進歩をもたらしているケースは多々ある。十五世紀のイタリア・ルネサンス、十八世紀に始まるイギリスの産業革命などが、その例に挙げられよう。ずっと小規模ではあるが、十二人のノーベル賞受賞者を出したアーネスト・ラザフォード(一八七一〜一九三七年)の研究室、戦前の理化学研究所、有名漫画家が数多く巣立ったアパート「トキワ荘」なども、こうした例に入れられると思う。
こうした才能の異常な結集と爆発が起きているケースには、いくつかの共通点がありそうだ。新しく切り拓かれた分野であること、十分な資金が集まっていること、リスクのあるチャレンジができる状況であること、自由闊達に議論ができる環境であることなどだ。
第12章 無機世界の旗頭−シリコン p210