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Main2-12:受け継ぐ

2024.05.21 07:00

『ガウラ』

「なんだい?ニア」


静まった夜に現れたのは、始祖ニア。

気配に気づいたガウラはそっと彼女の元へ近づいた。


『貴女に、私の魔力を授けたいのです。

貴女はゾディアークとの闘いにて、魔力の扱い方を思い出した。

いつかの儀式により記憶が刺激され、少しずつ思い出していたのです。

思い出したのであれば、きっと私の魔力を受けても問題ないはず。

今の貴女には、アゼムのクリスタルやアルバートの魂があるのだから』

「それをしてどうするつもりだい?」

『どう使うかは自由です。

ただ約束してください、私の力を悔いなく扱うことを』

「分かった」

『それと、私だけが記録している最後の詩を授けます』

「詩?」


首を傾げるガウラ。

ニアは優しい声で話を続けた。


『枷をつけるための詩…あれの効能を消す詩です。

未来で誰かに枷をつけてしまわぬように』


そう言うと、ニアは手をかざし、魔力を与えた。

温かな魔力、優しいその力はガウラの内へと入っていった。


「…痛くない」

『だって私と貴女は同じ血を持つ者だもの。

貴女が受け入れてくれる限り、反発はしないでしょう』

「なるほどな」

『…さぁ、次は詩を受け取って。

これは一族のためであると同時に、貴女への贈り物にもなる詩よ』


進め 例え根のように動けない花であっても

舞い上がれ 例えば愛しき蝶のように

花は枯れゆく 蝶は命燃やす

けれどもそれはあなたのため

未来のために 詩を唱う

止めるものはない

自由に 舞い上がれ


ガウラは静かに聴いた。

その詩を胸に刻むために。

ニアは唱い終えると、満足したように話し始めた。


『ハイデリンのご加護があらんことを。

きっとこの先も貴女は英雄として進むのでしょう。

けれども、隣には必ず人がいることを忘れないで』

「あぁ、忘れないさ。

死んでいった者も、今生きて隣にいてくれる者も、景色も、詩も、忘れない。

英雄という肩書きは望んでいないけどね」

『えぇ、分かっているわ』


そう言うと、ニアは消えていった。

役目を終えたのだろう、その表情は穏やかだった。