芸能界「五十五年体制」に挑む三者、芸能人の地位向上へ
【芸能考察】 五輪後に芸能界がバージョンアップする可能性が出てきた。平成三十年十二月七日に小栗旬(壬戌)が新元号二年で所属する芸能事務所「トライストーン・エンタテイメント(代取:山本又一朗)」の新代取に就任する旨を日刊大衆が報じた。
およそ八年前、小栗は初監督映画「シュアリー・サムデイ(二〇一〇)/松竹」の完成披露会見にて「日本の俳優ユニオンを創りたい。」と述べていた。米国には俳優達の労働組合「SAG-ADTRA」がある。前身は映画俳優組合(スクリーン・アクターズ・ギルド)と米国テレビ・ラジオ芸能人組合で、ハリウッド俳優や歌手、モデルの各種権利を保護する。組合の会員数は十万人を超える。米国組合を小栗は参考にしている。日本には未だ無いシステムだ(報道現在)。
一番の特徴はギャラ(報酬)だろう。「エージェント」という代理人がおり、固定報酬と「聖杯(至高の目標)」という変動報酬(映画等の興行収入による出来高制)を代理人が交渉できる。日本では芸能事務所が主に報酬の契約に携わっており、事務所内のスタッフが適宜、応じている。俳優達の代理人とは言い難く、事務所の意向を多分に受ける。よって所属する俳優達の意向と報酬が米国よりも制限される事になっている。ともすれば、俳優達には自身の本当の報酬を知らされないで仕事をしている事も多い。
小栗は、昭和三十年につくられたとされる芸能界の「五十五年体制」に六十年の時を経て挑む。
一方でジャニーズ(代取:ジャニー喜多川、メリー喜多川、藤島ジュリー景子)からも滝沢秀明(壬戌)が立つ。来年に子会社「ジャニーズ・アイランド」を設立し、ジャニー喜多川(辛未)代取の後継者として滝沢が事実上のトップとなる報道だ。現在は事務所の後輩のプロデューサとして活動しており、民放各局でプレゼンを行っているという。
新たな子会社ではJr.の他に映画監督や脚本家等も育成するという。民放よりも舞台・映画に重きを置きそうだ。滝沢自体は新子会社の役員や新養成所の理事長等の肩書きが待っている。現体制ではCDデビューがなければ一人前ではないが、既にCDデビューの打ち止めが現実的でJr.の未来が暗い。新子会社で様々な体制変更を行える可能性がある。そして滝沢の目には本格的なアジア進出も映っているだろう。
併せて、芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会(代表理事:望月宣武、向原栄大朗、安井飛鳥、河西邦剛、佐藤大和)」の存在も見逃せない。昨年に発足した同協会の代表理事は全て弁護士。芸能界の旧体制に蔓延る権利侵害に対して、活動を行っている。統一契約書の浸透を図っている。本年六月にはアイドルG「虹のコンキスタドール」の元メンバのセクハラ訴訟で記者会見等のバックアップをした。
政治的に云えば、この三者は革新勢力である。旧体制の保守勢力に対して芸能人の権利の最大化(特に報酬増)を図る為に若手が奮闘する事になる。大きな口火を切るのは後二年後か。若手俳優・歌手・モデル・声優達と世論によって、今よりも大きな希望ある新芸能界にバージョンアップできる。
画像引用:小栗旬、「いつか俳優のユニオンを作りたい」と将来の夢を語る/シネマトゥデイ、an・an (アン・アン)2018年 12月 12日号/HMV&BOOKS
撮影記事:金剛正臣