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定年後、荒野をめざす

寝台列車に乗った

2024.05.23 21:15

 シチリアで最も古い街、シラクーザの駅で寝台列車に乗った。ここは終着駅であり、始発駅である。現在、5月23日21時32分。13分後に出発するはずだ。


 長旅になる。これから、1070キロを鉄道で移動する。乗り換え2回、プーリア州のレッツェを目指す。まずは、ナポリの近くのサレルノまで。670キロの汽車旅が始まる。




 この列車は、海を渡る。メッシーナという港町で4両編成の汽車ごとフェリーに載せて海峡を渡り、イタリア本土のカラブリア州へ行く。寝台は4個が一組になっており、同室の男性に聞くと、そこで2時間を費やすという。船からの眺めはどうかと聞いたら「ネッロ」と言われた。


 黒。闇の中、景色は見えないそうだ。待てよ、昨日は満月。月の光がメッシーナ海峡の海に映るかもしれない。


 ドビュッシーの世界を満喫しよう。


 汽車は珍しく定刻で走り出した。