Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

俳句舎の俳人名鑑

2018.12.09 06:39

渋谷 道 (しぶや みち)

 大正15年(1926) 京都府生れ。大阪府在住。  「海程」・「紫薇」同人代表。

 平畑静塔に師事・橋閒石に連句を学ぶ。「雷光」「夜盗派」「縄」同人等を経て、昭和52年「海程」に同人参加。「紫微」創刊代表。第18回海程賞・第31回現代俳句協会賞・第10回現代俳句大賞・第46回蛇笏賞受賞。

 句集:『嬰』『渋谷道句集』『藤』『桜騒』『縷紅葉』『紫微』『素馨集』『蕣帖(あさがおちょう)』『鴇草紙』『蘡(えび)』『渋谷道俳句集成』

      炎昼の馬に向いて梳る

      人去れば藤のむらさき力ぬく

      灰のように鼬のように桜騒(さくらざい)

      西行忌菓子のはなびら食うばかり

      折鶴をひらけばいちまいの朧

      阿形吽形の間のあきかぜに吹かれけり

      米袋ひらいて吹雪みせてあげる

      蜃気楼衣詰まりたる蔵ならむ

      青嵐いまぞ阿修羅の六臂欲し

      幕引きつ刺繍(ぬひ)の落花に巻かれをり


 

 

篠原鳳作 (しのはら ほうさく)*旧名 雲彦

 

 明治39年(1906)~昭和11年(1936)30歳。 鹿児島県生れ。

 「ホトトギス」「京鹿子」「かつらぎ」「馬酔木」等に投句。吉岡禅寺洞に師事、「天の川」に投句。同人誌「傘火」創刊に参加。30歳で夭逝。※旧制七高・東京帝大法学部政治学科出身

 句集:『篠原鳳作全句文集』

      しんしんと肺碧きまで海の旅

      満天の星に旅ゆくマストあり

      旅ゆくと白き塑像の荷をつくり

      赤ん坊の踵まつかに泣きじゃくる

      かはほりは月夜の襁褓嗅ぎました

      蟻よバラを登りつめても陽が遠い



 

芝 不器男 (しば ふきお)

 明治36年(1903)~昭和5年(1930)26歳。 愛媛県生れ。

 「ホトトギス」「天の川」に投句。天の川の代表作家になる。横山白虹から「彗星の如く俳壇の空を通過した」と言われた作句活動わずか4年の夭折の作家。*旧制松山高校(現・愛媛大学)出身 東大、東北大に学ぶ。

 句集:『不器男全句集』『麦車』ほか

       永き日のにはとり柵を越えにけり

       まなかひに青空落つる茅花かな

       寒鴉己(し)が影の上(へ)におりたちぬ

       白藤や揺りやみしかばうすみどり

       向日葵の蘂(しべ)を見るとき海消えし

       

 

柴田白葉女 (しばた はくようじょ)

 明治39年(1906)~昭和59年(1984)77歳。 兵庫県生れ。千葉県在住。  「俳句女園」主宰。

 飯田蛇笏に師事。「雲母」同人。高橋淡路女と並んで雲母女流の中心作家。「俳句女園」創刊。第17回蛇笏賞受賞。※東北帝大法文学部国文科出身

 句集:『遠い橋』『月の笛』ほか            

      陸奥の海くらく濤たち春祭

      水鳥のしづかに己が身を流す

      まんさくは薄日の力溜めて咲く

      隙間風ひとすぢこころ無惨なり

 

 

嶋田青峰 (しまだ せいほう)

 明治15年(1882)~昭和19年(1944)62歳。 三重県生れ。東京都在住。 

 徳富蘇峰の国民新聞社に入社。虚子の下で文藝欄を担当。虚子が去り、以後この文藝欄を主宰。合間に「ホトトギス」の編集もおこない、8年間編集責任者も務めた。大正11年篠原温亭と「土上」を創刊。のち、「土上」主宰という責任からか軍国政府の不当な新興俳句弾圧事件に連座。留置場で喀血、まもなく世を去った。*早稲田大学出身

 翻訳:『絆』(バーナード・ショー) 『武器と人』(ストリンドベルヒ) ほか   著作:『青峰集』『俳句読本』『俳句の作り方』ほか

      而(しこう)して蕃茄(トマト)の酸味口にあり

      我が影や冬の夜道を面伏せて

      ネル着たき肉塊(にく)の女に聖書かな

      晝寝覚の大事去りたる西日かな

      時雨傘相傾けて別れけり


 

島津 亮 (しまづ りょう)

 大正7年(1918)~平成12年(2000)81歳。 香川県生れ。大阪府在住。  「海程」

 鈴木六林男らの「青天」を通じ西東三鬼に師事。「雷光」「夜盗派」「縄」「ユニコーン」等の同人。「海程」創刊同人。※旧制大阪外国語学校(現・大阪大学外国学部)出身

 句集:『紅葉寺境内』『記録』『唱歌』『亮の世界』

      脚のびて死ねり蛙のことなれど

      父酔ひて葬儀の花と共に倒る

      氷挽く帯がほどけてならぬなり

      怒らぬから青野でしめる友の首

      えつえつ泣く木のテーブルに生えた乳房

      ALONE!吹き上ぐる褐色の波濤の馬車

      


 清水径子 (しみず けいこ)

 明治44年(1911)~平成17年(2005)94歳。 東京生れ。神奈川県在住。  「らん」

 秋元不死男に師事。姉は不死男の夫人。「氷海」同人。不死男の没後、私淑する永田耕衣に師事。「琴座」同人。「らん」創刊。第17回詩歌文学館賞・第4回鬣TATEGAMI俳句賞受賞。*旧制府立第一高女(現・都立白鴎高校)出身

 句集:『鶸』『哀湖』『夢殻』『清水径子全句集』

      ねころんでいても絹莢出来て出来て

      野菊道笑ひおくれし写真です

      生前の葦かしばらく話さうよ

      倒れたる板間の葱に似て困る

      風呂敷がゆるみて桃の匂ひせり

      慟哭のすべてを蛍草といふ

      寒卵こつうん他界晴れわたり

      生きている限りは老婆秋ふかし



 

品川鈴子 (しながわ すずこ)

 昭和7年(1932)~平成28年(2016)84歳。 愛媛県生れ。兵庫県在住。  「ひよどり連句会」主宰。

 山口誓子,橋閒石に師事。「天狼」に投句、のち同人。平成6年「ぐろっけ」創刊主宰。平成26年「ぐろっけ」終刊。日本連句協会副会長。昭和41年七曜賞・神戸市文化活動功労賞・平成21年兵庫県ともしびの賞受賞。俳句研究五十句競作に佳作入賞を続けた。※旧制神戸女子薬専(現神戸薬科大学)出身。

 句集:『水中花』『漠』『鈴蘭』『品川鈴子句集』『真澄』『船出』『六音』『鮨』『龍宮の客』  著作:『「去来抄」とともに』『誓子の宇宙』ほか

       深き溝ありて花野をひきかへす

       道行きの往きつ戻りつ藁塚まで

       踊る輪に老婆がひとり逆廻り

       枕木は男の歩幅草いきれ

       ねんねこの児の流し目を母知らず

       


 

篠崎圭介 (しのざき けいすけ)

 

昭和9年(1934)~平成16年(2004)69歳。 愛媛県生れ。 「糸瓜」主宰

 富安風生に師事。昭和27年「若葉」入会、同人。昭和30年第2回若葉新人賞受賞。昭和51年「糸瓜」を継承主宰。※立教大文学部出身

 句集:『知命』『旅信』『花』『朴』ほか

      山桜背に蒼穹を負ひにけり

      旅信したたむ昨日雪けふも雪

      舞ふ足袋の真白きうらみつらみかな

      満開の涅槃ざくらを夜が裏(つつ)む

      男ありけり花冷をさまよへり



 

嶋田麻紀 (しまだ まき)

 昭和19年(1944) 茨城県生れ。 「麻」主宰

 菊地麻風に師事。昭和57年「麻」継承主宰。

 句集:『冬すみれ』『たんぽぽ』『夢重力』『史前の花』


     母の国足裏に續きゐて枯野

     板の間に素足の指をひらきけり

     幸せのぎゆうぎゆう詰めやさくらんぼ



 

下村梅子 (しもむら うめこ)

 明治45年(1912)~平成24年(2012)100歳。 福岡県生れ。神奈川県在住。  「かつらぎ」特別同人。

 阿波野青畝に師事。「かつらぎ」 の代表作家。夫は俳人の下村非文。俳人協会名誉会員。※旧制別府高女出身。      

 句集:『紅梅』『沙漠』『長恨歌』『花』

     読初の春はあけぼのなるくだり

     照れば金日かげれば銀芒かな

     屏風の図ひろげてみれば長恨歌

     人麻呂忌枕詞は美しき

     なんなんとして一世紀お元日



 

菖蒲あや (しょうぶ あや)

 

 大正13年(1924)~平成17年(2005)81歳。 東京都生れ。 「春嶺」主宰

 富安 風生,岸風三楼に師事。「若葉」「春嶺」同人。「春嶺」3代目主宰を継承。第7回俳人協会賞受賞。

  句集:『路地』『あや』『鶴の天』

     美しき月夜の屋根に炭団干す

     炭背負ひ仰ぐといふこと父になし

     炭屋死す高きに梯子かけてあり

    

     路地に生れ路地に育ちし祭髪

    


 

清水哲男 (しみず てつお) *俳号:赤帆。 

 昭和13年(1938)東京都生れ。詩人。

 弟に詩人の清水昶がいる。もともと俳句を書いていたが、京大在学中に第1詩集を刊行。編集者生活を経て同人誌「ノッポとチビ」に参加。H氏賞・ 第35回土井晩翠文学賞・第2回萩原朔太郎賞・第1回詩歌文学館賞(現代詩部門)・第1回三好達治賞受賞。ホームページ『増殖する俳句歳時記』を運営する。

 句集:『匙洗う人』『打つや太鼓』

     関東平野に雨が一粒秋刀魚焼く

     愛されず冬の駱駝を見て帰る

     さるすべり男盛りがつかんだ死

     


 しょうり 大 (しょうり だい)

 昭和18年(1941) 愛知県生れ。 「鷹」「豈」

 藤田湘子に師事。「鷹」期待の新人として登場。「鷹」同人。のち「俳句評論」にも参加、同人。高柳重信編集長の「俳句研究」第1回五十句競作で佳作第1席、第3回で1位入選の金的を射止める。第1回競作の作品はこの人一代の絶唱とする。

 句集:『』

      憶良らの近江は山かせりなずな

      枕にて死なむ大和よゆきかふ蛾

      海は荒海むかう通るは首なしダリか

      天涯の我は尿るや火のさかき

      死を待つと夏ざぶとんを重ねおく


 

 

白木 忠 (しらき ちゅう)

 昭和17年(1942)~平成25年(2013)70歳。 岐阜県生れ。愛知県在住。  「韻」

 小川双々子に師事。「地表」同人。終刊後「韻」同人。元「豈」同人。昭和43年第2回地表賞受賞.

 句集:『牢として風のなか』『君不知』『暗星』

     一人ゐて一人が暗しビアガーデン

     欲望の川曲りゆく朝ぐもり

     河にをけるけものに母の名をつける

     表現の余白まぶしき八月や

     戦死者のその名ヤンバルクロギリス

     

 

下村槐太 (しもむら かいた)

 明治43年(1910)~昭和41年(1966)56歳。 大阪生れ。 

 15歳で岡本松浜に師事。戦後「火星」に参加、中心作家として活躍。2年で辞し自ら同人誌「鞭」「海比岸」を創刊。のち主宰誌「金剛」を創刊するがいずれも短期で終刊。門下に金子明彦,林田紀音夫,堀 葦雄、火渡周平らがいる。

 句集:『光背』『天涯』『下村槐太全句集』

      死にたれば人来て大根煮(た)きはじむ

      路地の露滂沱たる日も仕事なし

      括らねば日の枯桑の魂ほぐれ

      心中に師なく弟子なくかすみけり

  

 

志摩 聡 (しま そう)*のち原 聰一に改名

 昭和3年(1928) ~平成15年(2003) 岐阜県生れ。 無所属

 加藤かけい、富沢赤黄男のち高柳重信に師事。元「俳句評論」「騎」同人。

 句集:『機罐車ネロ』『渤海薔薇』『志摩聰全句集』『黄體説』

     地獄絵の裏にまはれば鰊蕎麦

     天塩や月を消さむと消ゆる帷子

     のざらしを鮒来てかこむ星座跡

         *

     黄 海軟風(き かいなんぷう)

     黄帆走魚 (こうはんそうぎょ)

     黄葡萄酒  (きぶどうしゅ)

 

 

篠田悌二郎 (しのだ ていじろう) *旧号 春蝉

 明治32年(1899)~昭和61年(1986)86歳。 東京生れ。「野火」

 水原秋櫻子に師事。「馬酔木」同人。昭和21年「野火」創刊主宰。第1回馬酔木賞受賞。

 句集:『四季薔薇』『青霧』『風雪前』『桔梗濃し』ほか

     暁やうまれて蝉のうすみどり

     芒原枯れて光れり人に逢はず

     春蝉や多摩の横山ふかからず

     寒椿落ちたるほかに塵もなし

     寝しわれにさやり吊らるる秋の蚊帳

 

 

篠原 梵 (しのはら ぼん) 

 明治43年(1910)~昭和50年(1975)65歳。 愛媛県生れ。

 臼田亜浪に師事。「石楠」同人。「中央公論」編集長、社長など歴任。※旧制松山高・東京帝大文学部国文科出身

 句集:『皿』『雨』『年々去来の花』

      葉桜の中の無数の空さわぐ

      扇風機止り醜き機械となれり

      閉ぢし翅しづかにひらき蝶死にき

      手毬唄片言にいふをともに言ふ

 

 

島田牙城 (しまだ がじょう)

 昭和32年(1957)京都府生まれ。長野県在住。  「里」

 昭和49年波多野爽波に師事。「青」編集長を経て、「青」退会。平成8年今井聖の「街」創刊に同人参加。「里」創刊。第1回雪梁舎俳句大賞受賞。

 句集:『火を高く』『袖珍抄』『誤植』    

      大好きな櫻であれば振り返る

      麥秋の仙気と酒にある因果

      三界に末黒の葱を抜きすすむ

      反りかへる天空涼夜ともちがふ

      凍つる池こんちくしやうを飼ふとせむ

 

 

嶋田洋一 (しまだ よういち)

 大正2年(1913)~昭和54年(1979)65歳。 東京生れ。

 父、嶋田青峰につき俳句を学ぶ。昭和8年「土上」同人。同9年「早稲田俳句」を創刊。新興俳句の推進者のひとり。戦後「青玄」を経て昭和43年大野我羊の「東虹」に 同人参加。※早稲田大学出身。

 句集:『洋一句集』ほか

     山脈(やまなみ)に冬くる牛の斑濃き

     秋風にとまれる汽車の罐(かま)鳴りぬ 

       

 

島谷征良 (しまたに せいろう)

 昭和24年(1949)広島県生れ。神奈川県在住。 「風土」・「一葦」主宰 

 石川桂郎に師事。中学3年から俳句をはじめる。「風土」同人。27歳で「一葦」を創刊。第5回風土賞受賞。

 句集:『卒業』『鵬程』『履道』『舊雨今雨』『南箕北斗』

     かたまつて生くるさびしさ蝌蚪も人も

     人間(じんかん)に毛深き蝿の生れけり

     曙や蘂を離さず梅ひらく

     裸木よなきがらよりはあたたかし

 

 

塩野谷 仁(しおのや じん)

 昭和14年(1939)栃木県生れ。千葉県在住。  「遊牧」代表・「海程」

 金子兜太に師事。昭和37年「海程」創刊とともに入会、のち同人。八木三日女の「花」にも参加,同人。平成11年「遊牧」創刊。第3回花賞・第18回海程賞・第62回現代俳句協会賞受賞。

 句集:『円鐶』『独唱楽譜』『東炎』『荒髪』『全景』『私雨』『夢祝』

      地球より水はこぼれず桜騒

      紅茸を蹴り夭折に遅れおり

      走らねばてのひら冥し秋の水

      かくじつに階段は果つ天の川

      三日後の朧の夜なら狂えそう

 

 

柴田佐知子(しばた さちこ)

 昭和24年(1949)福岡県生れ。 「空」主宰・「白桃」

 伊藤通明に師事。昭和61年「白桃」入会、のち編集長を務める。平成15年「空」創刊。白桃賞・白桃同人賞・第7回俳壇賞・第25回福岡市文学賞・第22回俳人協会新人賞受賞。

 句集:『筑紫』『歌垣』『母郷』『垂直』

      レース編む夜とぶ鳥を思ひつつ

      秘すことのはじめ手毬を背に廻し

      能面の裏は月夜の山河かな

      マフラーを巻いてやるすこし絞めてやる

     

 

清水基吉(しみず もとよし)

 大正7年(1918)~平成20年(2008)89歳。東京生れ。 *作家  「日矢」主宰

 石田波郷に師事。「鶴」同人。のち「日矢」主宰。前鎌倉文学館館長。俳人協会顧問。第20回芥川賞受賞。

 『清水基吉全句集』ほか

     観音の千手の一手蝶招く

     永らへて湯豆腐とはよくつきあへり

     骨納む名残の雪の降るわ降るわ

 

渋川京子(しぶかわ きょうこ)

 昭和9年(1934)東京都生まれ。 「頂点」「面」「明」

 昭和50年和知喜八の「饗焔」に入会。のち「面」「頂点」「国」「ぽお」に参加。第7回饗焔賞・第15回現代俳句協会新人賞・第66回現代俳句協会賞受賞。

 句集:『レモンの種』

      ひろびろと腹上はあり夏あかつき

      仏壇のなかは吹き抜け鳥帰る

      山頂に置き忘れたる懐手

      菊炊いて夜の濃淡たしかめる

 

 

白濱 一羊 (しらはま いちよう)

 昭和33年(1958) 岩手県生れ。  「樹氷」主宰

 小原啄葉に師事。平成5年「樹氷」入会。平成23年「樹氷」主宰を継承。

 句集:『喝采』

     完璧といふ曲線の寒卵

     原発へ繋つてゐる春炬

     万愚節伏せ字に代はる自主規制

     戦争のはじまつてゐる桜かな