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俳句舎の俳人名鑑

2018.12.09 06:25

寺井谷子 (てらい たにこ)

 昭和19年(1944) 福岡県生れ。 「自鳴鐘」主宰。

 横山白虹・横山房子の四女。10歳から作句。昭和41年より「自鳴鐘」の編集に携わる。「花曜」同人。「自鳴鐘」副主宰として主宰房子を補佐。平成19年3代目主宰を継承。第30回自鳴鐘賞・第39回現代俳句協会賞・北九州市民文化賞・第7回桂信子賞受賞。

 句集:『笑窪』『以為』『街・物語』『母の家』

     庁舎に桜生きても死んでも紙一枚

     産むというおそろしきこと青山河

     骨細を知られてよりの秋の蛇

     春愁や蛇となる髪解き放ち

     男にも鎖骨の翳り草ひばり

     母の家まで六百五十歩春の雨

 

 

寺井 文子(てらい ふみこ)

 大正12年(1923)~平成12年(2000) 兵庫県生れ。 「草苑」

 多彩な師系。日野草城、神生彩史、永田耕衣、桂信子に師事。「琴座」などの同人。桂信子の「草苑」創刊に同人参加。第1回草苑賞受賞。

 句集:『密輸船』『弥勒』『寺井文子遺句集』

     完璧な墨絵の沖の密輸船

     夕虹や砲丸投げがひとり居り

     白鳥の首の中の弥勒かな

     陽炎やひたすら象をあやつりぬ

     一夜経て姥となりけり桃の花

 

 

寺田京子 (てらだ きょうこ)

 大正14年(1925)~昭和51年(1976)54歳。 北海道生れ。「寒雷」「杉」

 加藤楸邨に師事。「寒雷」に投句、同人。「杉」創刊同人。放送作家。第15回現代俳句協会賞受賞。

 句集:『冬の匙』『日の鷹』『鷺の巣』『雛の晴』

     日の鷹がとぶ骨片となるまで飛ぶ

     頭上よりシャワー見えざる鷹が飛ぶ

     セルを着て遺書は一行にて足りる

     樹氷林男追うには呼吸足りぬ

     凧とぶや僧きて父を失いき


 

寺山修司 (てらやま しゅうじ)

 昭和10年(1935)~昭和58年(1983)47歳。青森県生れ。東京都在住。

 高校時代俳句に熱中,各誌に多くの作品を発表する。「牧羊神」を創刊。高校生俳人として名を知られた。昭和30年以後,俳句から離れる。昭和50年句集花粉航海』を発刊。ここで復活して見せたが、作句活動は続けなかった。俳句から短歌,詩そして演劇等多彩な才能を発揮した。昭和42年「演劇実験室・天井桟敷」を結成。昭和29年「短歌研究」第2回五十首詠特選・昭和39年、昭和40年、芸術祭奨励賞・第1回久保田万太郎賞・昭和41年芸術祭賞・放送記者クラブ賞受賞*県立青森高校出身。 早大教育学部に学ぶ。

 句集:『われに五月を』『わが金枝篇』『花粉航海』『わが高校時代の犯罪』『寺山修司俳句全集』 著作:歌集、詩集、戯曲集、小説、シナリオ、演劇論ほか多数。

     目つむりていても吾(あ)を統(す)ぶ五月の鷹  

     わが夏帽どこまで転べども故郷

     花売車どこへ押せども母貧し

     林檎の木ゆさぶりやまず逢いたきとき

     ラグビーの頬傷ほてる海見ては

       * * * *

     父を嗅ぐ書斎に父を幻想し

     暗室より水の音する母の情事

     母恋し鍛冶屋にあかき鉄仮面

     母とわが髪からみあう秋の海

     姉と書けばいろは狂いの髪地獄

   

    

手塚美佐 (てづか みさ)

 昭和9年(1934) 神奈川県生れ。茨城県在住。 

 石川桂郎編集の「風土」創刊にかかわる。のち、桂郎と結婚。桂郎没後永井龍男に師事。岸田稚魚「琅玕」創刊同人。平成元年主宰を継承。平成25年2月をもって終刊。茨城文学賞受賞。

 句集:『昔の香』『中昔』『猫釣町』

       身の奥の百物語秋ついり

       今生の狂ひが足らず秋螢

       花鳥風月虫を加へてゆめうつつ

       夏果てやはるかなものに土不踏

       猫釣町パリにあるてふ朧かな

       闇恋うて蟇の漂流始まれり



 

寺田澄史 (てらだ きよし)

 昭和6年(1931)~平成30年(2018)86歳。 新潟県生れ。東京都在住。  「騎」同人

 高柳重信門。「薔薇」を経て昭和33年「俳句評論」創刊に参加。同人。のち「騎」同人。俳句評論賞に挑戦、佳句を残す。

 句集:『副葬船』『がれうた航海記』『新・浦嶼子伝』

      されば死鯨ぶりの ゆたにゆたに

      柿くへばあれ複葉機は奔るなれ

      日に三たび汝は自転車に縛らるれ

      露の葉やすふいんくすを夜飼する

      鬼蓮を裂けばむかうも昼なりき

      


出口善子 (でぐち よしこ)

 昭和14年(1939) 大阪府生れ。 「六曜」代表

 鈴木六林男に師事。「花曜」同人。平成17年「花曜」解散後,「六曜」創刊代表。第16回花曜賞受賞。

 句集:『瞬』『亂聲』『貝の華』『刺茨牡丹』『わしりまい』『羽化』

     十三夜少女しずかに血を流す

     少年を左手(ゆんで)に誘い桃採りに

       大勢に一人ひとりに雪降れり

     六林男亡し忍び返しに冬夕焼け

 

 

手代木唖々子 (てしろぎ ああし) 

 明治37年(1904)~昭和57年(1982)78歳。 北海道生れ。 「海程」・「合歓」主宰

 昭和15年「合歓」創刊主宰。のち「海程」に同人参加。

 句集:『天歩』

     夕焼は草負いかぶりても見ゆる

     乾く橇嗚咽はいつも背後より

 

照井 翆 (てるい みどり)

 昭和37年(1962) 岩手県生まれ。  「寒雷」・「草笛」同人。

 楸邨に師事。平成2年「寒雷」入会。「草笛」入会、同人。草笛新人賞・草笛賞・ 第20回現代俳句新人賞・第68回現代俳句協会賞特別賞・第12回俳句四季大賞受賞。

 句集:『針の峰』『水恋宮』『翡翠楼』『雪浄土』『龍宮』

       焚火して蝦夷(えみし)の貌に囲まるる

       蜃気楼地下三階は古代都市

       帰りたし子猫のやうに咥へられ

       双子なら同じ死顔桃の花

       寒昴たれも誰かのただひとり

  

 

照屋 真理子 (てるや まりこ)

 昭和37年(1951) 東京都生れ。 「季刊芙蓉」代表

 塚本邦雄に短歌と俳句を学ぶ。平成19年「季刊芙蓉」に参加。平成23年主宰須川洋子の死去とその遺志よって「季刊芙蓉」の代表に就く。

 句集:『月の書架』『やよ子猫』

     むかし螢いま仮初めの美少年

     切り株の夢の梢に小鳥来る

     この世にも少し慣れたかやよ子猫