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俳句舎の俳人名鑑

2018.12.09 06:55

上田五千石 (うえだ ごせんごく)

 昭和8年(1933)~平成9年(1997)63歳。 東京都生れ。静岡県在住。 「畦」創刊主宰

 秋元不死男に師事。「天狼」にも投句。「氷海」「子午線」同人。昭和48年「畦」創刊。第8回俳人協会賞受賞。*上智大文学部新聞学科出身

 句集:『田園』『森林』『風景』『琥珀』『天路』『上田五千石全句集』

     万緑や死は一弾を以て足る

  

     もがり笛風の又三郎やあーい

     渡り鳥みるみるわれの小さくなり

     秋の雲立志伝みな家を捨つ

     柚子湯出て慈母観音のごとく立つ

     梟や出てはもどれぬ夢の村

     あたたかき雪がふるふる兎の目

     

  

宇多喜代子 (うだ きよこ)

 昭和10年(1935) 山口県生れ。大阪府在住。 「草樹」代表

 10代で遠山麦浪に俳句の手ほどきを受ける。のち,前田正治に師事。「獅林」のち「草苑」に投句。桂信子に師事。同人、編集長を務めた。平成17年「草樹」創刊、会員代表。平成18年現代俳句協会会長就任。平成24年会長を退く。第29回現代俳句協会賞・第35回蛇笏賞・第27回詩歌文学館賞・第14回現代俳句大賞・平成28年日本芸術院賞受賞。日本芸術院会員。

 句集:『りらの木』『夏の日』『半島』『夏月集』『象』『記憶』 著作:『世紀末の竟宴』『ひとたばの手紙から』『わたしの歳時ノーと』ほか   

     父のため母仰向きぬ十三夜

     天皇の白髪にこそ夏の月

     稲刈の女のむかし尻高々

     粽結う死後の長さを思いつつ

     湯婆(ゆたんぽ)の夜戦中に似て非なる 

     死に未来あればこそ死ぬ百日紅

     働いてくる日くる日の青嵐


 


上田日差子 (うえだ ひざし)

 昭和36年(1961) 静岡県生れ。東京都在住。 「ランブル」主宰

 父の上田五千石に師事。昭和54年より作句。平成10年「ランブル」創刊。第34回俳人協会新人賞受賞。

 句集:『日差集』『忘南』『和音』

     利休忌の白紙にちかき置手紙

     梟に旅人といふ名をもらひ

     子を負へば涼しき月を負ふごとし

     立つことは枯れてゆくこと大はちす    


 


上村占魚 (うえむら せんぎょ)

 大正9年(1920)~平成8年(1996)75歳。 熊本県生れ。東京都在住。  「みそさざい」創刊主宰

 虚子,松本たかしに師事。たかしの「笛」同人。元「ホトトギス」同人。昭和24年「みそさざい」創刊。※東京美術学校漆芸専攻(現東京芸術大)出身

 句集:『鮎』『球磨』『霧積』『一火』『萩山』『橡の木』『石の犬』『天上の宴』『かのえさる』『自問』『放眼』『玄妙』『上村占魚全句集』 

      六面の銀屏に燈のもみあへる 

      戦は夕焼くる野に泣きて終ふ 

      本丸に立てば二の丸花の中

      黴の書に占魚不換酒の印存す

      梯梧(でいご)とは血のいろに咲く花と知れ

    

 

右城暮石 (うしろ ぼせき)

 

 明治32年(1899)~平成7年(1995)96歳。 高知県生れ。奈良県に永く住む。 「天狼」・「運河」名誉主宰

 松瀨青々に師事。大正9年松瀬青々の「倦鳥」入会。「青垣」「風」同人を経て昭和24年山口誓子の「天狼」に同人参加。昭和31年「運河」創刊主宰。平成2年主宰を茨木和生に譲り名誉主宰に。昭和39年天狼スバル賞・第5回蛇笏賞受賞.俳人協会顧問。

 句集:『声と声』『上下』『虻峠』『天水』『一芸』『散歩圏』

      火事赤し義妹と二人のみの夜に

      いつからの一匹なるや水馬

      万緑の宇陀郡ぬけて吉野郡

      蜘蛛の囲に蜂大穴をあけて遁ぐ

      散歩圏伸ばして河鹿鳴くところ    


 

臼田亜浪 (うすだ あろう)

 明治12年(1879)~昭和26年(1951)72歳。 長野県生れ。 「石楠」創刊主宰。

 虚子のホトトギス,碧梧桐の新傾向俳句双方を批判,俳壇革正を訴えた。昭和28年大須賀乙字の援助を得て「石楠」創刊。*和仏法律学校(のちの法政大学)出身。

 句集:『亜浪句抄』『旅人』『白道』『臼田亜浪全句集』ほか

      かつこうや何処までゆかば人に逢はむ

      死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり

      燈籠のわかれては寄る消えつつも

      天風や雲雀の声を絶つしばし

      夢の世の春は寒かり啼け閑古

      ごうごうと木が鳴る火事の火は見えず

     

 

有働 亨 (うどう とおる)

 大正9年(1920)~平成22年(2010)89歳。 熊本県生れ。東京都在住。

 長兄、有働木母寺に俳句の手ほどきを受ける。水原秋桜子に師事。「馬酔木」に投句。昭和29年同人。俳人協会顧問。 馬酔木新人賞・馬酔木賞・同功労賞受賞。※旧制五高・京都帝大経済学部出身。

 句集:『汐路』『冬美』『七男』『妻燦燦』『卒哭』

      八月や海月疲れし船溜り 

      噛みあてて青山椒の香なるべし

      春星やとはの氷河を村の空

      髪梳くくや鏡の中の秋の風


 

宇咲冬男 (うさき ふゆお)

 昭和6年(1931)~平成25年(2013)82歳。 埼玉県生れ。 

  宇田零雨に師事。俳句と現代連句を学ぶ。昭和43年「あした」創刊,主宰。平成20年終刊。国際芸術文化賞受賞。※大正大学文学部哲学科出身。

 句集:『心の章』『梨の芯』『乾坤』『晨韻』『荒星』『虹の座』『塵劫』ほか  著作:『現代の連句』ほか

     ほととぎす富士は噴く火をなおはらむ

     走馬灯すでに荒野を失えり

     冬服の重さは冬の重さかな

     天界の塵の塵なる安居かな


 

 

宇佐美魚目 (うさみ ぎょもく)

 大正15年(1926)~平成30年(2018)92歳。 愛知県生れ。 

 昭和21年虚子、橋本鶏二に師事。「ホトトギス」「年輪」を経て昭和38年爽波の「青」に同人参加。のち大峯あきら等と「晨」創刊。第1回年輪賞・第1回四誌連合会賞・平成10年愛知県芸術文化選奨受賞。現代俳句協会会員。

 句集:『崖』『秋収冬蔵』『天地存問』『紅爐抄』『草心』『薪水』『松下童子』

      空蝉をのせて銀扇くもりけり

      馬もまた歯より衰ふ雪へ雪

      すぐ氷る木賊(とくさ)の前のうすき水

      藁苞を出て鯉およぐ年の暮

      あかあかと天地の間の雛納

      良寛の天といふ字や蕨出づ

      最澄の瞑目つづく冬の畦

      白昼を能見て過す蓬かな

      東大寺湯屋の空ゆく落花かな

      紅梅や謡の中の死者のこゑ



 

内田美紗 (うちだ みさ)

 

 昭和11年(1936) 兵庫県生れ。大阪府在住。 「船団」

 鈴木鷹夫に師事。昭和60年「船団」創刊、入会。昭和62年「門」入会、同人のち退会。。 門賞受賞。

 句集:『浦島草』『誕生日』『魚眼石』

      十二月友にふとん屋こんにゃく屋

      ゆきずりの男と眺む浦島草

      霾やまさかの軍歌口に出て

      昼寝覚この世の水をラッパ飲み

      

  

浦川聡子 (うらかわ さとこ)

 昭和33年(1958) 山形県生れ。埼玉県在住。 「炎環」「晨」

 昭和61年より石寒太の「炎環」に入、同人。第11回現代俳句協会新人賞受賞。

 句集:『クロイツェル・ソナタ』『水の宅急便』『眠れる木』

     トランペットの一音♯(シャープ)して芽吹く

     新緑の闇よりヨーヨー引き戻す

     銀河濃し水の宅急便届く

     指揮棒をおろすや漂ふ一雪片



内田慕情 (うちだ ぼじょう)

 明治14年(11881)~昭和21年(1946)65歳。 石川県生れ。

 「ホトトギス」はじめ伝統各誌に拠つたこともあるが、新興俳句勃興とともに「天の川」一誌に作句活動を傾注した。禅寺洞を師として接するが、別格の地位にあり作品は人格とおなじように<大きな>もので、斬新な感性で俳句の新しさを追求した。終戦の引き揚げの混乱の中、赴任先の中国で病死。*京都帝大医学部出身

      うそうそとうつろの音の白穂かな

      腔のおとカオと仆れしラガー起つ

      太陽と正し鼻梁と陰(ほと)隆く

      還馬の毛深き脛の黄土あはれ