「あなたは本当に損得だけで行動できているか」小林剛、RTDリーグ2018優勝記念インタビュー第3回(全4回)
AbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送されたRTDリーグ2018にて、見事優勝した小林剛選手(麻将連合)にお話を伺いました。
インタビュアーは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
▼▼▼麻雀上達の秘訣は、損得「だけ」で行動すること▼▼▼
小林の麻雀観も紹介したところで、麻雀上達の秘訣を聞いてみた。
小林「とにかく損得だけでやることだね。感情も消す。こだわりももたないようにする」
もっともな意見だが、これは現代ではすでに浸透した考え方であるし、目新しくはないように映る。
小林「いや、損得でやってるつもりで、感情でやってる人がかなり多いよ。感情で無駄に牌を止めてる人が多い。例えば、『ダブ東を鳴かれたら嫌だな』とかで東が切れなかったりね」
なるほど。損得で判断しているつもりでも、いつの間にかそれが感情に置き換わっていくものなのだろう。麻雀というあいまいに思考しなければならないゲームにおいて、あいまいに損得を判断しているつもりが、いつの間にか感情で判断していると。
小林「そうそう。『マンガンをアガりたい』が『高い手をアガリたい』なのか『マンガンをアガると得だからアガりたい』なのかって、すごく重要だよ。後者が正しくて、『マンガンをアガるとこれぐらい得だからマンガンをアガりたい』っていうのが損得による判断だよね」
これは、言葉で表すのは簡単だが、やるのは難しい。ただ、麻雀上達には絶対に不可欠な要素であると思われる。小林からのメッセージとして、ぜひ定期的に思い出してみてはいかがだろうか。
▼▼▼役牌ポンと数牌アンコを同じように打っている▼▼▼
今や全世代のヒーローとなった小林。そのマネをしたい小さなお友達、大きなお友達のために小林麻雀の極意を伝授してもらおうと、もう少し踏み込んで聞いてみた。遠くから役牌を鳴いていくこともある小林だが、鳴いた後にアンパイを持ち続けることが多い。アンパイを持つ基準があるのか聞いた。
小林「アンパイの持ち方っていうか、役牌ポンと数牌アンコを同じように打ってるだけなんだよね。うーん、そうだなあ・・・」
小林はそう言ってスマホを取り出すと、こんな牌姿の画像をこちらに向ける。
小林「感覚的にでいいんだけど、この手牌、怖くてどうしようもないって思わないよね?」
ドラや巡目にもよるが、確かに悲観するような手牌には映らない。
小林「じゃー、これで9pアンコの部分が發ポンだったらどう思う?アガれそうではあるけど、さっきよりアンパイ持ちたくなる気がしない?」
確かにそうかもしれない。言われてみれば、正にそんな感覚だ。
小林「それが感情だね。多くの人は鳴くことを特別視しすぎなんだと思う。9pアンコと發ポンって同じなんだよね。どうせスジとかにならないとアンパイにならない9pは、ポンしたら切れない發とそんなに変わらない。なのに、發ポンだけ恐がる人が異常に多いんだよね。むしろ、手役に絡まなさそうな9pアンコがあるぐらいなら、發ポンの方がかなりやる気にならないとおかしいよね」
なるほど。ということは、アンパイを持つ基準も自ずと・・・
小林「そう、上の2つの手牌で全く同じ状況なら、おれは同じようにアンパイを残してるはずだよ。鳴いたときに特別多くアンパイを抱えているわけじゃなくて、門前でも同じようにアンパイを抱えているはずなんだよね。門前でも鳴いてても、微妙な手牌で数牌ばっかりになってるときにはアンパイの字牌を抱えてるんじゃないかな」
非常に明快な説明である。ちなみに、小林はアンパイとして(生牌だろうと)字牌を採用することが多いが、これはどんな感覚なのだろうか。
小林「数牌よりマシっていう感覚だね。字牌ってやっぱりアガれるパターン数が極端に少ない(シャンポンか単騎待ちだけ)から、生牌であっても数牌よりは安全度が高いよね」
数牌だらけの微妙な手でノーテンのときには、生牌であったとしても字牌を1枚抱えてみると、小林のように押し返すことを増やせるかもしれない。
▼▼▼ランダムとは、均等ではなく偏るということを知っておくべき▼▼▼
いくら損得で判断できるプレイヤーでも、悪い結果が出続けるとなかなかいつもの判断ができなくなってくるものではないだろうか。
小林「そうなるのは、麻雀というゲームの性質をちゃんと理解していないからだと思う。麻雀牌がランダムに積まれているんだから、麻雀の結果だって当然ランダムだよね」
当然だ。麻雀牌をひっくり返しながら意志を込めて積んでいるわけではない以上、麻雀牌も結果もランダムになる。
小林「ここでちゃんと理解しておかなければならないのは、ランダムとは均等ではなく、偏るってことなんだよね。つまり、偶然っていうのは続くものなんだよ。みんな、それをちゃんと理解していないと思う。ランダムが均等を意味するのなら、ホンイツなんて役は存在しないよね。色が偏らないわけだからさ」
ということを頭では理解していても、心底飲み込めているわけではない人は多いだろう。
「ランダムとは偏ることである」
負け始めると精神的にやられてしまう方には、ぜひ今一度肝に銘じておいてみてほしい。
▼▼▼麻雀とはミスするゲーム、そういう認識があるから次巡から修正できる▼▼▼
麻雀においてミスすることは誰にでもある。小林のようなトッププロも例外ではなく、決勝最終日のインタビューでも「麻雀とはミスするゲーム。他の人がミスで10万点損してるところを、自分だけ5万点に抑えようと思って打ってる」と答えてくれた。
確かに、今シーズンの予選でも、私の質問に対して「あれはミス」と隠すことなく答えてくれた。驚くべきことは、ミスした打牌があってもすぐに修正するところだ。
小林「麻雀はミスするゲームだと思ってるからね。ミスするのはしょうがない。ちゃんとそういう風に認識してれば、次巡からすぐに修正できるはずなんだよね」
2018シーズン予選BLACK DIVISION 39回戦、トータル首位で抑えめに打っていた小林は、南3局にこの手牌となった。
両面リーチを想定すれば打1sとなるが、小林は打4mとする。
小林「これは4m残した方がよさそうだなって、打った瞬間に思った。トータルもダントツだし、この半荘の順位も競りだしで、ダマテンでアガれる(イーペーコーの)テンパイにしたくなっちゃったんだよね」
あっさりとミスを認める。そして、偶然にも次巡に4mを引いた。
放送対局である。例えば、「ミスったら恥ずかしい」「一貫性がないと批判されるかもしれない」という風に思ってしまうと、4mをツモ切りたくもなる。
しかし、小林は、今度は4mを残して1sを打っていった。一見すると一貫性がないようにも見えるが、小林の信条は「麻雀はミスするゲーム。ミスったら次巡にも即修正」。だからこそ生まれるこういった修正。この修正力があるからこそ、小林は大崩れしないのである。
次回、ついに最終回!小林が麻雀プロとしてこだわっていることとは!?(最終回に続く)