私が施術に強い刺激(痛みを伴う刺激)を用いない理由
当院で施術を受けたことのあるかたはご存知だと思いますが、私は基本的に施術の際に痛みを伴う刺激はしないようにしています。
単純に私自身が痛みを伴う施術を受けるのが嫌いというのもありますが、施術において痛みを伴うほどの強い刺激を用いるメリットがない(少なくとも私はメリットを感じない)からというのがその理由となっています。
私が施術をする際に考慮している法則があり、それを『プリューゲル・アルントシュルツの刺激法則』をいいます。
この法則は「刺激の強度と神経や筋(筋肉)の興奮性」について述べられたもので、その内容は以下のようになっています。
弱い刺激は神経機能を喚起し、中程度の刺激は神経機能を興奮させ、強い刺激は神経機能を抑制し、最強度の刺激は神経機能を停止させる。
*神経機能=生理的作用=基本的な生命活動に関連する作用、喚起=奮い起こす、興奮=促進
弱い刺激は「刺激を刺激として感じないもしくはようやく感じ始めるレベル」、中程度の刺激は「心地の良いレベル」、強い刺激は「強いと感じるレベル」、最強度の刺激は「痛みを感じるレベル」とされることが多い印象です。
そして私が基本的に施術に用いる刺激は「弱い刺激・中程度の刺激」がほとんどです。
(電気治療で意図的に強い刺激を用いることはありますが、刺激時間はごく短時間です)
接骨院という業態というのは基本的に患者の訴えの多くは「痛み」になります。
そしてその「痛み」には捻挫や骨折などの外傷(ケガ)が伴っていることも多くあります。
外傷では筋肉や靭帯など生体組織が損傷していますが、その損傷の治癒や「痛み」の抑制は神経機能=生理的作用が十分に起こることでなされます。
そのために、弱い刺激で神経機能を呼び起こし、中程度の刺激でそれを促進(活性化)させることを狙って様々な施術を行います。
しかし、強い刺激となると神経機能は抑制されていくため、施術の効果が得られにくくなっていくことが考えられます。
例えば、いわゆる「強揉み」と呼ばれる強く押したり揉んだりする施術は「強い刺激」に該当しますが、これを定期的に繰り返し受けている方は徐々にその刺激を強くしないと満足できないようになっていくことが非常に多くあります。
というのも、強い刺激を繰り返すことで「感覚」という神経機能が抑制されるため、徐々に刺激を感じにくくなっていく(感覚の鈍化)ということが起こります。
そのため刺激を強くしていかないと、そもそも刺激を感じないようになっていくのです。
そして強い刺激は生体組織が破壊されるリスクが高いため、強く押したり揉んだりすると筋線維が損傷した結果いわゆる「揉み返し」が起こりやすくなります。
さらにタチの悪いことに、強い刺激は血管を圧迫する力が強くなるため血行が阻害され、それによって組織の再生・修復が十分になされなくなる可能性があり、筋肉などの組織がどんどん脆弱(脆く弱く)になるためさらに損傷しやすくもなります。
リラクセーションとして受けるのであればとやかく言いませんが(完全に自己責任であり、その場で満足すればOKなのがリラクセーションなので)、「治療」として受けるのであれば強い刺激は身体にとってプラスにはならないと私は考えます。
強い刺激によって楽になったように感じるのは、その刺激によって神経機能が抑制されることで感覚が鈍くなり、身体に起こっている異変に気づけなくなっているだけで、決して治っているわけではないというのが私の見方です。
強い刺激の施術を好んで行う施術者もおり、それを肯定も否定もしませんが、身体に余計な負担をかけずに本質的な問題の解決を目指すために私は施術を行います。