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紅く色づく季節

かわいい君に頼られたい

2024.05.30 14:35

【詳細】

比率:男1:女1

現代・ラブストーリー

時間:約10分



【あらすじ】

とあるカップルの日常です。

『かわいいだけじゃなくて……』の後日談でございます。

付き合ってしばらくした頃。

拓海が体調を崩します。うつさないように香奈を帰らせようとする拓海ですが……



【登場人物】

香奈:(かな)

   20代。拓海の彼女。

   最近は拓海の家で過ごすことが多くなってきているようです。


拓海:(たくみ)

   20代。香奈の彼氏。

   久方ぶりに体調を崩したようです。



●拓海の家・夜

   香奈がキッチンで料理をしている。

   拓海が帰ってくる。


拓海:……ただいま

香奈:(キッチンから)あ、おかえり~

拓海:香奈?

香奈:ちょっと待っててね~。おかえりなさい、拓海

拓海:……ん

香奈:ちょうど炒め物作ってて。今日は早かったね。飲んでくるって言ってなかったっけ?

拓海:……あぁ、ちょっと疲れてさ……

香奈:え? 大丈夫?

拓海:うん、寝てれば治るから(よろけて)あっ……

香奈:(慌てて支える)あ! 本当に大丈夫?

拓海:うん。ごめん、香奈、重いだろうからもう離して大丈夫だよ

香奈:うん……

拓海:香奈?

香奈:あのね、離れたいんだけど……

拓海:ん?

香奈:拓海が私のこと捕まえてるんだよ?

拓海:え? あ! ごめん……

香奈:ううん

拓海:……

香奈:ねぇ、拓海?

拓海:なに?

香奈:本当は大丈夫じゃないよね?

拓海:え?

香奈:最初はスーツ越しで分からなかったけど、拓海、今すっごい熱いよ。熱あるよね?

拓海:……

香奈:拓海?

拓海:……わかんない

香奈:はい?

拓海:身体熱いなとは思ってたけど、気のせいかなって思ってたから測ってないし

香奈:(ため息)

拓海:何だよ?

香奈:もう、とりあえず寝室直行!

拓海:え?

香奈:いいから、ほら

拓海:いや……

香奈:なに? 一人じゃいけないって言うんならこのまま連れていくけど?

拓海:え?

香奈:その際は、私が拓海を着替えさせるまでがワンセットだから

拓海:……

香奈:どうする?

拓海:……寝室行きます

香奈:分かればよろしい。あ、スーツとかは脱いだらそのままにしてていいよ。私が後でやるから

   着替えたら、そのままベットに入ること。いい?

拓海:……はい

香奈:よし。じゃあ……

拓海:……

香奈:えっと……拓海?

拓海:ん?

香奈:ごめんね。一回離して?

拓海:え?

香奈:手

拓海:手? あ、ごめん!

香奈:(苦笑して)もう。大丈夫だよ。ササッとキッチンのもの片付けたらすぐに私も行くから

拓海:……あぁ

香奈:帰ったりしないから大丈夫だよ

拓海:いや、でも……

香奈:帰れって言われても帰りません。こんな拓海を放って帰るなんてできません

拓海:……わかった

香奈:よろしい。じゃあ、着替えたらすぐにベットに入ること!

拓海:(苦笑して)わかったよ




●拓海の家・寝室

   着替えてベットに横になっている拓海。

   香奈、必要な物をもって入ってくる。


香奈:拓海~? お、ちゃんと着替えて寝てるね

拓海:あぁ……

香奈:(サイドテーブルに物を置いてベットの端に座る)よいしょっと。あ、スーツ。そのままにしておいていいって言ったのに

拓海:……いつもの癖だ

香奈:そっか。具合は?

拓海:……だいじょ……

香奈:(遮って)正直に言ってね?

拓海:……帰ってきた時よりもきついかも。身体が熱い……

香奈:そっか。食欲は?

拓海:……食べられなくはないだろうけど、食べたいとは思わない

香奈:そっか。じゃあ、おかゆじゃなくてこっちで正解かな?

拓海:ん?

香奈:みかんゼリー。たまたま食べたくなってコンビニで買ってきてたんだけど……

   拓海、みかん苦手じゃないよね?

拓海:あぁ

香奈:ならよかった。じゃあ、とりあえずゼリー食べて薬飲もう

拓海:……

香奈:で、脱水症状にならないようにスポーツドリンク枕元に置いとくから飲んでね

拓海:……

香奈:あとは、おでこに貼るやつ今ないから、枕のところに冷たいの敷かせてね

   一応、タオルでくるんであるから冷たすぎるってことはないと思うんだけど、もし嫌だったら取ってもいいから

拓海:……

香奈:拓海?

拓海:……香奈、やっぱり帰った方がいい

香奈:え? どうしたの急に?

拓海:一緒にいたらうつすかもしれないだろ

香奈:だから帰れって?

拓海:あぁ……

香奈:ばーか

拓海:は?

香奈:こんなに弱ってる拓海、置いてなんて帰りません

拓海:弱ってなんか……

香奈:(クスリと笑って)……気付いてない?

拓海:え?

香奈:拓海、さっきから私の服ずっと握ってるの

拓海:っ!

香奈:そんなに慌てなくてもいいのに

拓海:……

香奈:私は嬉しいよ? 拓海がこうやって頼ってくれて

   具合悪い時って誰かに傍にいてほしいって思うでしょ? そんなときに拓海の傍にいられて嬉しい

拓海:……香奈……

香奈:ねぇ、拓海?

拓海:ん?

香奈:今日くらいはいっぱい甘えてよ。私に頼って?

拓海:香奈……

香奈:いつも私が頼ってばっかりで支えてもってばっかりだもん

   こういう時くらい、私が拓海のこと支えたい

拓海:……香奈

香奈:ダメ、かな?

拓海:……ダメじゃない。でも……

香奈:うつったら、うつった時に考えよ? 今は何も考えなくてよろしい

拓海:(苦笑して)……あぁ

香奈:(嬉しそうに微笑む)

拓海:香奈?

香奈:なに?

拓海:ありがとう

香奈:どういたしまして!

拓海:でも、一個だけ訂正

香奈:え?

拓海:俺もいつも香奈に支えてもらってる。だから、香奈ばっかりじゃない

香奈:拓海……

拓海:いつも香奈の優しさに甘えさせてもらってるし、頼らせてもらってる

香奈:そんなこと……

拓海:本当だから。今の俺が頑張れるのは香奈のおかげ。香奈がいるから頑張れる

香奈:拓海……

拓海:香奈

香奈:なに?

拓海:……今日はずっと俺の傍にいて

香奈:うん、わかった



―幕―



2020.09.01 ボイコネ投稿

2024.05.30 修正・HP投稿

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