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全国翻訳ミステリー読書会

第3回福井読書会(オンライン開催)レポート(執筆者・藤沢一弘)

2020.07.03 14:00

モン・シェール。


第3回福井読書会はオンラインにて2020年6月13日(土)に開催いたしました。


課題書は先日「第11回翻訳ミステリー大賞」を受賞しました『11月に去りし者』ルー・バーニー著/加賀山卓朗訳(ハーパーBOOKS)。


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本来は4月4日(土)に開催予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期となり、開催時期も未定に。

しかし、『11月に去りし者』が5月に翻訳ミステリー大賞を受賞したこのタイミングでやらずに・・・

「いつやるの?」

「いまでしょ!」

という訳で、急遽オンラインで開催する事になりました!


さて、課題書の『11月に去りし者』は、ケネディ大統領暗殺に関わってしまったギャングの幹部ギドリーと、そのギャングを追う殺し屋バローネ、二人の娘を連れて夫の元から逃れてきた女性シャーロットを中心に描いたクライム・ノヴェル。


課題書の翻訳者である加賀山卓朗先生をゲストにお迎えし、世話人2名を含めて合計8名で開催の運びとなり、参加者の皆さんから自己紹介と共に感想を述べて頂きましたので、その一部をご紹介いたします。


・内容をほぼ知らずに読んで、謎解きのあるミステリーかと思ったら

 違ったけど楽しく読めた。

・普段はミステリーを読まない事もあって、最初は並行して語られる

 部分が分かりづらかったけど、中盤以降は夢中になった。

・ギドリーが格好いい。でも序盤のエロい場面は必要?

・序盤、クライム・ノヴェルとして始まったけどシャーロットが出て

 きてからは、とても甘いラブストーリーになったという印象。同著者の

 『ガットショット・ストレート』の方が、読んでいて楽しく好みだった。

・シャーロットの存在があったから読めた。

・シャーロットの夫のクズっぷりがリアル。

・最初、シャーロットの場面が長いと思ったけど、ギドリーと

 シャーロットが交わってきてからが面白くなった。

・ビターでスイートな話がドストライク。『ガットショット・ストレート』

 よりも本作が好き。

・JFK暗殺がストーリーのきっかけになっているけど、アメリカの人は

 冒頭部分を読むだけでJFKの話だと思い浮かぶものなのか気になった。

・『ガットショット・ストレート』の続編も含め、著者の他の作品が

 読みたくなった。


皆さん、翻訳ミステリー大賞にふさわしい作品だったという思いは一緒でも、読みどころ、注目したポイントが違っているのが面白かったです。


その中でも登場人物の中で誰推しかという点で盛り上がりましたが、二分したのがシャーロットとセラフィーヌ。

正直これは意外な展開。

ギャングの幹部セラフィーヌは、出番そのものは少ないものの男性陣のハートを撃ち抜く魅力を持っていたようです。

一方、シャーロットを強く推していたのが加賀山先生。

普通の人(主婦)が活躍するクライム・ノヴェルというのも新しく、シャーロットがある行動を取る場面で泣けるとも。

果たして加賀山先生の一押しポイントはどこなのか、本書を読まれた方は分かりますでしょうか。

そして未読の方はこれからその場面がどこなのか想像しながら読んでみて下さい。

ちなみに先生の「これはシャーロットの物語!」宣言には、今回唯一の女性参加者となった世話人Nも激しく賛同。

そういえば自分も読み終えた際に、実はシャーロットが主人公だったんじゃないかなと考えた事を思い出しました。

しかし・・・主人公ギドリーの存在感って一体?(笑)


また、タイトルに関しても原題と日本版それぞれについて参加者の中から質問が出ました。

実は、ハーパーBOOKSの担当者様から事前にコメントを頂く事ができ、その中で日本版タイトルの候補となったものが記されておりました。

読書会開催時に配布しましたレジュメには、その日本版タイトルの候補についても記載させて頂きましたが・・・これは参加者だけの特典ですね。


その他、ギドリーを追う殺し屋バローネについて、そのバローネを助け共に行動する事になる少年セオドアについて、ギドリーの組織内での地位や組織を追われなければならなくなった理由についてなど、参加者同士で意見や議論が交わされました。


そんな中で特に印象に残ったのはエピローグについて。

果たしてエピローグは必要だったのか、エピローグが無かったらどう変わるだろうかといった議論が交わされ、それぞれの意見や主張にそれぞれ納得する部分があり、読書会ならではの楽しみを感じました。


今回、皆さんの意見を聞いて、著者がはっきりとは描かなかった部分も多く、読者は色々想像しながら読む事になるため、読んでいて飽きがこないだけでなく読了後も余韻に浸れる作品になっているのではないかと感じました。

この辺りが本国ではハメット賞など数々の賞を受賞するほか、日本でも翻訳ミステリー大賞に選ばれるほどの魅力となっている要因の一つだったのではないでしょうか。


そして昨年、本書を読み終えた時に「これを課題書にしたい!」と思い、昨年末に第2回読書会を開催した際に「次は『11月に去りし者』を課題書に!」と、もう一人の世話人Nに宣言した、自分の先見の明を褒めてやりたいかも(笑)。


ところで今回、普段は海外ミステリーを読まず、読書会に参加するのも初めてだという方が2名参加して下さいました。

話の流れでゲストの加賀山先生が翻訳を手掛けたグレアム・グリーンの『ヒューマン・ファクター』や、ジョン・ル・カレ、ジョン・ディクスン・カーについてなど、少々マニアックな話題もあがり心配だったのですが、後日「楽しかった」「また参加したい」「加賀山先生の訳書を読んでいます」といったメールを頂きました。


新型コロナウイルスの影響で、しばらくはリアルな読書会を開催するのは難しい状況かも知れません。

しかし、読書会初参加だった方も、今回のオンラインによる読書会を楽しんで下さった事が何より嬉しく思えたと同時に、今後どういった形であれ読書会を開催する事について勇気をもらえた気がします。


これも拙い進行を温かく見守って下さった参加者の皆さんと、様々な質問にも優しく微笑みながら快く答えて下さった加賀山先生のお陰です。

あらためてお礼を申し上げたいと思います。


さて、次回の福井読書会ですが、やはり新型コロナウイルスの影響でどうなるかは未定です。

新型コロナウイルスが終息し、リアルな読書会を安心して開催できる日が一日でも早く来て欲しいところですが、それまでは何かしらの形で開催していけたらなと思っています。


それまで皆様もお身体に気を付けて、モン・シェール。


福井読書会世話人

藤沢一弘(@shaolon_wang


福井翻訳ミステリー読書会


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